第25回 勝兵塾月例会レポート

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

勝兵塾第25回月例会が6月20日(木)アパグループ東京本社6階会議室にて開催されました。

アパグループ代表、元谷塾長の挨拶では、「衆参同時選挙は無くなった。5月23日に私が携帯で直接安倍首相に『衆参同時選挙をすべし』と伝えたときはまだ逡巡していたようだった。しかし、5月27日に橋下氏が外国人記者クラブで慰安婦発言の釈明をしたところ、批判は一層強まり、維新の会の支持率はピーク時の16.5%からその四分の一に低下。公明党を切り捨て、維新と連立して改憲勢力で衆参両院の三分の二以上を確保する目論見が外れたことから、5月29日に自民と公明は再び手を組み、参院選のみの実施を決定した。この背景には、『アメリカの壁』の存在を感じる。アメリカは中国に対しては、尖閣で日本を挑発すると日本の保守化が強まるから止めるよう諌め、これが6月2日の戚建国副総参謀長による尖閣問題棚上げ発言に繋がった。同時に、日本が強くなると困るのは、アメリカと中国と共通の利害であり、アメリカは憲法改正を阻止したのである。まさに伝統的米中同盟である。日本の一野党の党首の発言であれだけ大騒ぎするのは、歴史に修正を一切許さないアメリカなど戦勝国の姿勢の現れである。さらに円安株高で安倍政権の支持率が上がっていることに危機感を持ったアメリカは、ヘッジファンドを使って株価や為替相場を乱高下させ、アベノミクスに対する不信感を煽っている。このように『アメリカの壁』が日本をコントロールしている。」と、衆参同時選挙断念の背景を洞察されました。また、6月15日号の東洋経済に掲載されていたリチャード・カッツ氏のコラムを取り上げ、「『安倍政権を擁護するメディアの不可思議』と題して、安倍政権に対する日本のメディアのスタンスを批判した。村山談話を巡る安倍首相の発言や高市早苗政調会長の発言を非難し、日本のメディアに対しても、安倍発言や高市発言を批判することを求めた。さらに、2012年の下村博文文科相との『Big Talk』を取り上げ、『日本のメディアは、なぜ多くの首相側近たちが極端な修正主義者的見解を持つかを調査してこなかった。』と、非難している。その結果、高市早苗議員は今、叩かれているが、下村大臣のことも心配である。」と、「アメリカの壁」への警鐘を鳴らされました。


 

駐日バングラデシュ大使館特名全権大使 マスード・ビン・モメン

駐日バングラデシュ大使館特名全権大使のマスード・ビン・モメン様は、「バングラデシュの国民は皆日本のことを尊敬している。また、チャンドラ・ボースやパール判事は日本ととてもゆかりのある人物である。1971年の独立後、翌年に日本はいち早く承認してくれた。日本は国家開発に欠かせないパートナーであり、過去40年間最大の援助国であった。経済成長率は現在6%で、2021年には中所得国となることを目指している。世界の国、市場へアクセスしやすい位置にあり、ビジネスをする上で、法的保護や免税インセンティブも受けられる。」とスライドを交えて自国の紹介をされ、「日本の大学でもっと授業を英語でやってほしい。そうすれば世界中から良い人材が日本に集まってくる。バングラデシュからも大学院生だけでなく、学部生が来られるようになる。」と日本の大学への希望を述べられました。

 

総務大臣政務官兼内閣府大臣政務官 衆議院議員 北村 茂男

総務大臣政務官兼内閣府大臣政務官で衆議院議員の北村茂男様は、「元谷代表とは同郷で、毎月エッセイを読ませていただいてきた。」とご挨拶された後、「アベノミクスは日本の再興を担っている。6月14日に閣議決定された日本再興戦略は成長戦略であり、その中の『国家戦略特区』については、世界中から関心を持たれている。これまで日本経済が低迷を続け、日本の都市の魅力が低下してきた。そこで世界で一番ビジネスのしやすい環境を作るため、大胆な規制改革や税制措置を行い、イノベーションを促すというビジョンの下、総理自ら先頭に立って推進していくことにした。すでにワーキンググループを立ち上げ、国家戦略として取り組むべきテーマの選定を行っている。決定したテーマから順次特区プランの提案募集を行っていく。さらに地域活性化の取り組みとして、5つのテーマ毎に取り組んできた組織から、一つの組織で、ワンストップで地方からの相談・提案に応えていく体制になった。」と、安倍内閣の取り組む成長戦略の一つである地域活性化策について解説されました。

 

スタンフォード大学フーヴァー研究所教授 西 鋭夫

スタンフォード大学フーヴァー研究所教授の西鋭夫様は、「日本はこれだけ金持ちになった。それで強くなりましたか?これだけ豊かになった日本が、よその国からやられっぱなし。いつまでやられるのか?そろそろ時間切れになる。どこの国も日本を助けてくれない。」と、今の日本に対する強い危機感を示されました。

 

元産経新聞論説委員 コラムニスト 高山 正之

元産経新聞論説委員でコラムニストの高山正之様は、橋下市長の慰安婦発言について、「橋下市長は慰安婦について、『戦場に慰安婦は必要』、『世界中でやっていた』、『日本だけを論(あげつら)うのはアンフェアだ』の3つのことを言った。その中で『慰安婦は必要』という発言に世界中が噛み付き、事実を歪曲して伝えた。その背景には文化の違いがある。旧約聖書の民数記では、ユダヤ人が異教徒を皆殺しにし、あるいは処女を陵辱して純血を絶やしたと記されている。征服をするということはその民族を抹殺にすることである。日本軍が支那大陸に行った際に、支那人は日本人捕虜を残虐な方法で殺し、通州事件では女子供を陵辱し虐殺した。ベトナム戦争でベトナムに行った韓国人は現地にライタイハンと呼ばれる混血児を多く残してきた。アメリカは、イラク戦争でバグダッドを攻略した際に国立博物館を略奪したが、盗品はアメリカの空港で見つかった。バールバックは『アメラジアン』という言葉を作ったが、フィリピンやベトナム、タイ、韓国でアメリカ人と現地のアジアン人との混血児を数多く残してきた。そこで、アメリカは1982年法で、各地で産み捨てきた混血児を米国移民の枠に入れることを決めた。このように日本以外の国は皆同じで、戦争では略奪や強姦を行い、純血を汚す。日本人は戦争では、略奪はしない、強姦はしない、という美学を持っていた。先の大戦でも日本人兵士だけがモラルが高かった。しかし性の需要があるのは間違いない。だから『慰安婦』が出てくる。アメリカの戦争では、全て現地調達が常識であるが、日本には現地調達という意識はない。橋下氏は日本人であるから、戦争と強姦がセットだという意識はなかった。だからこそ日本の新聞は、こうした事実を訴えなければならなかったにも拘らず、米国のサキ報道官に対して朝日新聞の大島隆が『橋下氏の発言をどう思うか、なぜ性奴隷と呼ばないのか?』と質問していた。日本は300万人もの兵士を出したが、どこに日本の混血児がいるのか。アメリカ人はあちこちで混血児を生み捨ててきた。なぜ当たり前のことを言わないのか。」と、日本人の他の民族との文化の違い、戦争に対する考え方の違いから、慰安婦問題の本質について語られました。

 

一般財団法人防災検定協会常務理事・事務局長 濱口 和久

一般財団法人防災検定協会常務理事・事務局長の濱口和久様は、「近年防災問題に取り組んでいるが、現在65,000人の防災士資格保有者がいる。この資格は社会人や大学生を対象としたものであったが、今年の11月には小中学生を対象に、ジュニア防災検定がスタートする。検定というと暗記、記憶力を問うものというイメージがあるが、ジュニア防災検定は『事前課題』として、家族と防災について話し合い、レポートを提出させ、試験はオール記述式で判断力を問うものとし、さらに『事後課題』として地域の防災に関する自由研究を課し、この3つを総合して合否を判定する。生きる為の術をいかに子供の頃から身に付けるかという観点から推進していきたい。」と、新たに設けられたジュニア防災検定について語られました。

 

元航空自衛隊空将補 石井 義哲

元航空自衛隊空将補の石井義(よし)哲(あき)様は、「私は田母神閣下の直属の部下で、田母神閣下が更迭されたときは教育課長として、懸賞論文の応募を隊員に勧めていた。その後は忸怩たるものがあったので、退官時には防衛省の斡旋した職を蹴って、次の参院選への出馬を決意した。」とご挨拶された後、「3.11では自衛隊は大変評価されたが、その後首都圏で訓練をしようとすると反対する自治体があった。おかしいのは憲法である。フランスでは7月14日に凱旋門で軍事パレードが行われるが、沿道は国民で埋め尽くされる。憲法を変え、自衛隊を明記する必要がある。村山談話、河野談話から脱却し、中国や韓国にいつまでも経済的対価を払わされないようにならなければならない。安倍政権でやらなければもうできない。ただし、自民党だけではなく、自民党がきちんと取り組むよう外から叱咤激励をする保守も必要である。」と、自衛隊での経験から、憲法改正の必要性を訴えられました。

 

第29代航空幕僚長 田母神 俊雄

第29代航空幕僚長の田母神俊雄様は、「日本は国家として自立していない。アメリカに守ってもらっている。自立するということは、軍事的に自立することである。自衛隊の現状は、米軍が協力してくれないと戦力を発揮できない。この状況から抜け出すのに10年はかかる。武器を買うときは同じだけ輸出して初めて対等の関係になる。自立するためには武器輸出を解禁すべきである。解禁すればやがて多くの武器等が国産に置き換わっていく。」「国民の自衛隊に対する意識も国が変えていかなければならない。自衛隊を国の財産として有効に使うべきである。自衛隊では緊急時に48時間の行動計画ができている。非常時対応も企画の段階から自衛隊を活用すべきだ。また、自衛隊を他の国と同じように正当に位置付ける必要がある。自衛隊が自ら動けるようになるための第一歩が武器輸出解禁である。」と自立した国になるための武器輸出解禁の必要性と、非常時の自衛隊の有効な活用について語られました。

 

衆議院議員 原田 義昭

衆議院議員の原田義昭様は、「本日は本当に長い間会いたいと思っていた人に会えた。それは高山正之先生である。週刊新潮に毎週大変な論文を書かれていて、どこからあれだけの情報を収集し、書き続けられるのか不思議で仕方なかった。」とご挨拶された後、「アメリカは日本を小さく収めておくことが利益だと考えているという側面はあるが、アメリカが日本にとって大事なのは間違いない。しかし、アメリカは260年間もの間、奴隷制度を続け、1億人の黒人をアフリカから連れてきて使った。このことについてアメリカ人は一つとして反省していない。」と、アメリカの負の面を強調され、「政治の側からすると民度を計りながら物事を訴えていかなければならない。進みすぎたことを言って政権がひっくり返ったら元も子もない。国民を納得させながら進めていくことが大事である。」と改革に時間を掛けていく必要性を訴えられました。

 

最後に元谷塾長より、「リチャード・カッツ氏の記事を読んで、改めて『アメリカの壁』を感じた。物事の背景にはアメリカの存在がある。このことを理解しないと、物事の本質がわかりにくくなる。アメリカは日本が真っ当な国になろうとしていることに焦っている。しかし、アメリカも一枚岩ではない。民主党と共和党とでは違う。民主党がより反日である。アメリカでは聖書に手を置いて宣誓して大統領に就任する。黒人であるオバマが大統領になれたのは彼がプロテスタントだからである。歴代大統領でプロテスタントでないのはケネディだけだが、彼は暗殺された。安倍政権と維新の会で支持率が上がり、衆参で三分の二を確保し、憲法改正の国民投票になりそうだという焦りがあったから、大阪市長の発言が大きな話題とされたのだろう。カッツ氏は英文で『Big Talk』を読み、安倍首相や高市早苗氏、下村博文氏を『極端な修正主義者』という言葉で非難し、日本のメディアに対してなぜ批判しないのかと、焚き付けている。アメリカはまさにプロテスタント原理主義国家である。一方で、アメリカにも、アジアのパワーバランスのために日本に期待する考え方もある。今は村山談話を踏襲するのはやむを得ないが、安倍首相は迂回戦略を採り、話題になるところを避けながら巧妙に保守化を進めている。3年後に向けて真っ当な世論を醸成していく。そのためには本当のことを知ってもらう必要があり、私は懸賞論文制度や勝兵塾を立ち上げ、20年以上にも亘ってエッセイを書いてきた。田母神論文問題の頃に比べると世の中が相当変わってきた。3年後に自民党が衆参で三分の二をとり、国民の半数以上が憲法改正に賛成することを願っている。」と、改めて「アメリカの壁」の存在を強調されるとともに、安倍政権へのエールを送って会を締め括られました。