勝兵塾第20回月例会が1月17日(木)アパグループ東京本社6階会議室にて開催されました。
冒頭のアパグループ代表、元谷外志雄塾長による挨拶では、「先日、加瀬氏から頂いていた『なぜアメリカは、対日戦争を仕掛けたのか』を読んだら、大変素晴らしい本だったので、本日加瀬氏にも講演して頂くことになった。私は毎月エッセイを執筆しているが、今回は安倍総理が金融経済対策を打ち出し、金融、財政、成長戦略の三本の矢と言っているが、もっとわかりやすく、池田勇人内閣の所得倍増計画のように、住まい面積倍増10ヵ年計画を打ち出すべきだ。戦後アメリカの分断政策によって、相続するほど住まいは細分化し、単身赴任やわずかな偏差値の差で地元の大学を避けて大都市の大学へ進学するなど、家族の分散が進んだ。一つの家族が4カ所にも5カ所にもわかれて生活すれば、コストアップで豊かさが感じられない。地元に特徴のある企業や大学を誘致し、大きな家に皆で住めばよい。大家族制の復活である。そのためには相続制度も変える必要がある。統計はないが孤独死は相当沢山いるはずであり、自殺者は3万人いるが、大家族制度の復活によりこの数を減らすことができる。今は小さな住宅に住めば税は軽減され、大きくなれば不動産取得税や固定資産税が高くなる。税の優遇によって大きな家に誘導すべきである。さらに、森内閣で大深度地下の公共利用に関する法律が成立しているのだから、これを大々的に利用すべきである。今は超低金利だから100年の建設国債を発行し、5年以上保有すれば相続制を半減させる。このことで物流コストが下がり、通行料を償還原資に充てる。これまで日本は真実に基づかない非難によって貶められてきた。次の参院選で自民党は過半数を取る可能性が高い。その3年後に衆参同時選挙を行えば、さらに3年間安定政権が続くことになる。ここで3分の2の改憲勢力が集まることを期待したい。6年間で6人総理が変わる国は他にはない。年変わりの総理では何もできない。安倍政権が長期政権となって誇れる国日本の再興を果たして欲しい。」と、安倍政権の経済政策への提言と、長期安定政権となることへの期待を述べられました。
衆議院議員の鷲尾英一郎様は、「初当選したのが2005年の郵政民営化のときであり、当時も相当の逆風の中での選挙だったが、今回はそれを上回る逆風であったものの、比例で当選することができた。今日は党の看板を離れ、日本人として思うところを話したい。総選挙になった途端、円安、株高となり日本にとってプラスになった。今回の補正予算での大盤振る舞いも今は良いだろう。安倍政権は経済重視と言っても、今の経済を重視しているだけで中長期的には問題がある。小渕内閣では大規模な公共事業をやって大きな借金を作り、その時は株価が2万円を超えてバブル後最高値となったが、今はそのときよりGDPが下がっている。したがって、今は良くてもこの先GDPが下がらないとは言えない。小泉内閣では規制緩和と輸出増で好景気となったが、リーマンショック後、外需に期待できず、規制緩和の弊害が現れてきている。民主党政権では内需拡大を図ったが、あまりにも外部環境が悪かった。こうした歴史的事実があることをわかってほしい。経済と外交は相反するものである。尖閣を国有化したら経団連が難癖を付けてきた。矛盾したものが日本人の心にある。経済を重視するなら尖閣問題は、拉致の問題はどうなるか。今日保守バブルの様相を呈しているが、何を保ち、何を守るのか、一人一人が当事者意識を持って考えるべきである。」と安倍政権の積極的な経済政策に対して、警鐘を鳴らされました。また、「尊敬する政治家は岸信介である。岸信介証言録には、『自分は社会党から出たかった』とある。日本は巨大な保守政党があるだけではダメで、2大政党制を目指していた。小選挙区制によって、良い人材が自民党に偏らず野党でも党内における責任ある議論ができるのである。政党間が競争することで日本の政治が良くなる。自民党だけでは消費税増税はできなかった。自民党と考えが近いとよく言われるが、民主党の中で責任ある議論ができるようにしていきたい。」と政治家としての自身の立ち位置を示されました。
外交評論家の加瀬英明様は、「オバマ政権は2期目を迎え、アメリカは財政の壁で政権も議会も悩まされてきたが、深刻なものではない。短、中期的にはアメリカ経済の行方は楽観視されている。2年前と比べて着実に回復している。IEAによれば、シェール革命により、アメリカは2019年までにサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国になり、2035年までにエネルギーの自給自足を達成すると予想されている。アメリカではめずらしく先行き楽観的な雰囲気が戻ってきた。国防省幹部と話をすると、アメリカはこれまで中東やベネズエラから石油を輸入するためにドルを垂れ流してきたが、中東から乳離れすると言っていた。アメリカ派ペルシャ湾の自由航行のために第5艦隊を張り付け、年間80億ドルを費やしている。日本はペルシャ湾のホルムズ海峡が封鎖されることになれば、オイルショックのように国民生活に打撃を受ける。安倍総裁の自民党が衆院選で圧勝し、卒原発、脱原発と言った政党がボロ負けした。アメリカが撤収すれば中東はこれから液状化していくことになる。チュニジアでジャスミン革命が起こり、メディアは独裁政権が悪で民主化が良いことのように報じたが、独裁政権がどんどん倒れていくと状況は悪くなる。こうした中で日本が原発を止めることになれば、国民生活は壊滅的な打撃を受ける。安倍総理は1月には訪米してオバマと会談すると言っていたが、オバマの就任式が1月21日にあり、国務長官、国防長官も決まっていない中での訪米など受け入れられるはずはない。私は安倍総理に対して訪米は2月末か3月の初めに行うとして、まずは東南アジアに行くべきと人を介して伝えた。1月に訪米すれば歓迎されると安倍総理に吹き込んだのはアメリカの日本大使館である。アメリカの知日派は安倍総理の登場を喜んでいるが、左のニーヨークタイムズは社説で安倍総理を右翼・国家主義者と危険視し、河野談話の否定、村山談話の撤回を強く批判している。今のアメリカで河野談話を否定すれば、アメリカ議会で大変な反発を受けることになる。外務省はこれを放置してきた。韓国の朴正煕大統領は、『韓民族はだらしがなかったから日本に併合された』と言っていた。しかし今の韓国は、日本は憎いという妄想に囚われている。南京では日本軍は今で言う平和維持活動をしていたのであり、南京市民は日本軍を大歓迎していた。しかし、日本人は、悪いことをしたという妄想に囚われている。日本人が妄想を晴らして精神的な独立を取り戻さなければならない。安倍政権は大波に立ち向かっていかなければならないが、損得を考えず、国の存亡をかけて取り組んでほしい。」と、今後の日米関係やアメリカの中東政策、さらには正しい歴史観を取り戻すことの必要性について話されました。
「新しい歴史教科書をつくる会」理事で拓殖大学教授の藤岡信勝様より、「手嶋龍一氏は安倍総理が歴史認識を変える動きがあったから1月の訪米ができなかったと解釈しているが、この解釈についてどう思われるか?また、アメリカの石油の中東への依存度が下がれば原油価格が下がって日本にとってプラスではないか?」と、質問が出されました。これに対して加瀬様は、「手嶋氏の見解は全く外れている。1月21日に大統領就任式があり、組閣中だから無理なのである。アメリカは、2年前から中国があまりに無法なことを行うから封じ込めなければならないと対中方針を大転換している。したがって、中国と対決するためには日本を取り込まなければならないと考えている。ただし、日米首脳会談では普天間問題をはじめ、和気藹々という訳にはいかないだろう。また、アメリカの中東、ベネズエラへの原油の依存度が下がっても原油価格は下がらない。なぜなら、中国をはじめ新興国の需要が増えるからである。ペルシャ湾からの石油の輸出がストップするリスクの要因として、イスラエルがイランの核施設に単独で攻撃をすることが考えられる。アラブの春と言ってメディアは浮かれているが、独裁体制を倒した後はイスラム原理主義が出てくる。シリアでアサド政権が倒れたら中東は混乱するだろう。そうなるとアメリカの関与にも拘らず、中東が液状化する。したがって、日本は原発をどんどん造っていくべきである。」と、答えられました。
東京近現代史研究所代表の落合道夫様からは、アメリカ国内で日本の主張を広める方策について質問が出され、加瀬様は、「アメリカでは中国離れがかなり進んでいる。シナ事変の時、蒋介石は巨額のドルをつぎ込んでアメリカの世論を操作した。今の中国も同じである。科学的に正論を広めることは大変な事であり、放置してきた日本政府が悪い。これからは日本のソフトパワーを活かしていくべきである。中国は火薬や紙、磁石、羅針盤などを発明したが、世界に文化的な影響を与えたものはない。日本の浮世絵は印象派の画家に大きな影響を与え、建築ではドイツ人のブルーノ・タウトが伊勢神宮の内宮を参拝して感動し、ヨーロッパの新建築運動に影響を与えた。さらに、日本料理や食器、コミックなど世界に文化的な影響を与えたものは断トツで多い。こうした日本文化を紹介していくことが日本の支持に繋がる。」と答えられました。
「新しい歴史教科書をつくる会」副会長の岡野俊昭様は、「日本のマスコミは記者クラブによる一斉報道で個性がない、日本のマスコミには信念や正義が見られない、と思うが、どのように感じるか?」と質問されました。これに対して加瀬様は、「日本を良くするためにはテレビの放映を1年間止めれば良いと考えている。漢和辞典を引くと、漢字で『目ヘン』の漢字はろくなものはないが、『耳ヘン』の漢字は良いものばかりである。マスコミは大衆を喜ばせることから成り立っているから期待することができない。こうした中で、ネット社会が到来したことは素晴らしい。新聞でも読売、毎日、朝日は1紙買えば他の新聞の内容がわかる。記者クラブは日本特有の制度であるが、税金で場所を提供している。新聞は自由人としての精神を持っていない。産経は読む価値があるが、最近おかしくなってきた。」と答えられました。
「新しい歴史教科書をつくる会」会長の杉原誠四郎様は、「『新しい歴史教科書をつくる会』を貶めた人が政府の教育再生実行会議のメンバーになったので、『つくる会』が窮地に立っている。主張はホームページに掲載しているので、皆様の御支援を頂きたい。」と、発言されました。
第29代航空幕僚長の田母神俊雄様は、「中国が戦争準備を始めたと報道されているが、実際には準備をしている素振りはない。中国が尖閣に船をどんどん入れているのは謀略であり、本気で戦争しようとしているわけではない。準備をしたとしても今の中国は日本に勝てない。軍事情勢はすぐには変わるものではないので、後10年位は必要である。日本は中国の謀略に乗らず国際法に基づいて対応すれば中国も止めるだろう。他の国は国際法に基づいて軍を動かす。領海に入って軍の指示に従わなければ撃沈されても文句は言えない。まずは宮古島や石垣島付近にイージス艦を配備し、潜水艦を沈めておき、下地島には3,000mの滑走路があるので、F15やF2を機動展開すれば中国もあきらめるだろう。中国があきらめたところで尖閣に施設を造れば良い。問題は日本の政治家がわかっていないことであり、皆中国に騙されている。」と、中国を巡る報道の真実について語られました。
藤岡様は、「元谷代表より大家族制度や居住空間を倍にするという話があったが、文科省の全国学力テストを実施した結果、学力日本一は秋田県であり、福井県も上位にある。いずれも日本海側にある豪雪地帯である。家屋の構造が違うため、一世帯当たりの人数が日本海側の方が多いという研究がある。つまり3世代家族の多い県は子供の学力が高い。家族と一緒にいることで精神が安定し、お年寄りから知恵の伝承があり、多くの大人の目が行き届く。アメリカでも同様の研究があり、ベトナム難民の数学の成績が良いのは家族と過ごす時間が多いからである。」と、大家族制度と教育の関係について話されました。
山元学校学長の山元雅信様は、「フランスとの合作で映画『古事記』を製作している。これには元イスラエル大使のエリ・コーヘン氏も参加している。私がエグゼクティブプロデューサーに就任するに当たり条件としたのは、この映画の目的が日本の尊厳を取り戻すものにするということで、サブタイトルを『Japan Pride』とした。教科書問題について、他国を悪く書く教科書は世界中で中国と韓国の2ヶ国だけである。サッチャーがイギリスの首相に就任したときは、英国病が蔓延して社会が停滞していたが、その背景に、英国の植民地支配に対する罪悪感があった。サッチャーは教科書で植民地支配について悪い面だけでなくよい面もあったと両論併記することで、国民が誇りを取り戻すことができた。私は日本、中国、韓国の学生を集めてフォーラムを運営している。若い人達は馬鹿ではない。議論を戦わせることで、結論は出ないかもしれないが、絆が深まる。また、私が主催するインターネットテレビでは、パレスチナ大使とイスラエル大使の対談を実現させた。民間のパワーで中東和平を実現させる。イスラエルとパレスチナのそれぞれに日本の若い人達を連れて行き、将来若い人達に問題を解決してもらおうと考えている。」と、国際交流への取り組みと、若い世代への期待を述べられました。
「日本の核武装のステップについて意見を伺いたい。」という質問に対しては、山元様からは、「サウジアラビアは原発を13、14基造ろうとしている。外国の大使達と話していると、日本は安全のために核武装をするべきだと言われる。弱肉強食の世界は変わっていない。」とコメントがあり、さらに加瀬様からは、「日本が核武装することに対して、これまでアメリカでは絶対反対だったが、最近は賛成する人が増えている。アメリカは核攻撃を受けるリスクを犯してまで、日本を守るために中国を攻撃することはない。日本が1発でも核兵器を保有しアメリカに落とすことができたら、アメリカは広島、長崎に原爆を落とすことはなかった。広島の平和記念公園の『過ちは繰り返しませぬから』という言葉は、核兵器を持たないことで核攻撃を受けるような過ちを繰り返さない、と解釈している。世界で日本が核を持つことに反対する人がいれば、日本は世界で唯一の被爆国だから、世界で最も核を持つ権利があると言ったら黙るはずだ。だから、先ずは日本が核兵器を持つ意思を持つことが大事である。」と日本の意思の重要性を指摘されました。
最後に元谷塾長は、「大変議論が盛り上がり、新年にふさわしい月例会となった。先程日本のソフトパワーを活かすという話があったが、最大のソフトパワーは『誇り』である。本当はどうなのかを追求することで、誇りを取り戻すことができる。中国や韓国を批判する前に、日本の中で真実を追究していくべきである。今は日本人の敵は日本人である。『民族の悠久の歴史』と言える民族は日本人しかいない。意見に違いがあっても良いが、ディベートの中で本当のことを探していきたい。」とディベートを通じた真実の追究という勝兵塾の目的を強調して、会を締め括られました。