第14回 勝兵塾月例会レポート

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

 勝兵塾第14回月例会が7月19日(木)にアパグループ東京本社にて開催されました。
 冒頭のアパグループ代表、元谷外志雄塾長による挨拶では、「先日出版した『誇れる祖国「日本」』は、戦後歴史の捏造は原爆投下から始まった、という視点から、真実を解き明かしている。世界75ヵ国を訪問し、各国の要人たちとディベートする中で確信したことを毎月のエッセイや書籍で書いてきたが、真実を知れば知るほど、日本について、こんな素晴らしい国は他にはないことがわかってきた。自虐史観の最大の要因は、あまりにも酷い兵器である原爆を投下されたことと、中立条約を破ってソ連が一方的に攻撃してきたことに対するショックが相当大きかったことだろう。」と日本の自虐史観の要因について指摘されました。さらに、「日本の敗戦が明らかであったにも拘わらず、どうしてアメリカは原爆を落とす必要があったのか?ドイツの降伏後、ソ連はドイツが占領していた東欧地域をどんどん征服していき、世界赤化の脅威があった。ポスト大戦の世界覇権を握るため、アメリカは日本との戦争を長引かせ、日本に原爆を落としたのである。原爆だけが酷い兵器ではないことを示すため、東京大空襲では一晩で十万人もの人を殺し、本土決戦になると米兵が100万人死ぬという主張を正当化するために、硫黄島で激戦を行い、アメリカも多くの犠牲を払った。原爆投下のキーとなる人物が、当時の国務長官のジェームズ・F・バーンズである。アメリカでも原爆投下に反対し、国体護持を受け入れて講和をしようとする意見もあったが、バーンズはこれらを全て拒否し、日本に対して無条件降伏をちらつかせて終戦を遅らせ、原爆投下を大統領に進言した。トルーマンもバーンズも南部出身であり、人種差別主義者であった。原爆は日本人が有色人種であったから落とされたのであって、果たして白人国家に落としただろうか。全て戦後歴史は核を廻る鬩ぎ合いであり、どの国も国益のためなら人も殺すし、嘘もつく。アメリカによる原爆投下は日本にとっては不幸な事であったが、見方を変えれば、バーンズの豪胆な腹があったから世界赤化を防げたとも言える。武士道精神は日本が恵まれた島国だからこそ育まれたものであり、世界では通用しない。」と、原爆投下の背景について話されました。

ブルキナファソ特命全権大使 フランソワ・ウビダ閣下

 ブルキナファソ特命全権大使のフランソワ・ウビダ閣下からは、「ブルキナファソは旧国名をオートボルタといっていたが、1984年に現在の国名になった。ブルキナファソは『尊厳の国』を意味する。海外から投資したら絶対に損をさせない国である。投資を促進するため、国際法を遵守するとともに、二国間の協定交渉している。4億円を投資し、100人雇用すれば、法人税は永久にゼロになるという優遇税制がある。国名のような国づくりをしているところであり、日本でもブルキナファソ議員連盟を作って、日本の経験を教えてほしい。経済的には西アフリカ諸国経済共同体に属しており、金やマンガンをはじめ鉱業が盛んである。また農業国でもあり、綿を中国や他のアフリカ諸国へ輸出している。政治的には安定しており、電力を100%自給している。さらに犯罪率は日本とほぼ同じであり、治安も良い。日本との関係では、日本から商品が入ってくるばかりなので、豊富な資源を是非日本人に持って行ってもらいたいと思っている。JICAの若者がブルキナファソに来ると、気に入って日本に帰らないという話もある。」と、ブルキナファソについて紹介して頂きました。

 

工学博士 社会防災研究 田中哮義

 京都大学名誉教授の田中哮義様は、京都大学防災研究所の教授をされていた経験から、「東日本大震災からの復興と将来の津波対策」と題して、「震災直後はマスコミでも復興について話題が出ていたが、今はマスコミにはほとんど出てこない。被災地で復興が進んでいるのか、全く聞こえてこない。千年に一度の大地震と言われているが、歴史的に見ると、日本は100年に1回くらいの頻度で大きな津波に襲われている。わが国で、太平洋沿岸に人口や産業が集中したのはこの50年の間であり、前回の津波と今回の津波の合間のことである。そのため、津波常襲が宿命であることが十分に認識されていない。日本の沿岸は津波常襲地域であるという前提に立ち、人命だけでなく、産業の保護が重要であるという視点から対策を講じる必要がある。産業が破壊されれば、人々は仕事を失い、生活の場を失うことになり、地域の復興も不可能となってしまう。具体的な対策として、避難対策としての高架道路、津波対策としての防潮堤と高地居住、産業施設の保護には浮体構造の利用を挙げられ、既存の分野の枠を超えた連携による防災技術開発が必要である。」と、津波に対する意識と新しい津波対策について話されました。

 

南出喜久治法律事務所所長・弁護士 南出喜久治

 南出喜久治法律事務所所長・弁護士の南出喜久治様は、「今年の1月に石原都知事が憲法無効宣言を行った。占領憲法は帝国憲法第73条及び第75条に違反している。第73条は改正発議大権を定めているが、憲法改正を発議できるのは天皇のみであり、議会に発議権はない。このことを指摘したのは共産党の野坂参三である。また、第75条は摂政が置かれている間は憲法及び皇室典範を改正できないと定めているが、これを類推適用して天皇の御叡意により判断されることが困難な状態、すなわち占領下においても憲法及び皇室典範の改正ができないのである。このことは、昭和31年に清瀬一郎が国会で指摘している。都知事はこの2つのことを発言している。6月8日に東京都議会に対して占領憲法、占領典範の無効を、5,000人の署名を提出して請願した。これを受けて、6月13日に都議会で土井敬之都議が質問し、石原都知事はこれに賛意を表している。これまでの記者会見や産経新聞のコラムでは発言があったが、都議会で知事が正式に憲法無効の発言をした意味は重い。昨年11月には参議院にも同じ請願を出しており、西田昌司議員が紹介議員となって受理された。また今年の11月には衆議院でも請願を出そうとしている。石原都知事がワシントンで尖閣諸島の買い取りと同時に憲法無効の発言をしたが、マスコミは尖閣諸島のみを取り上げ、こちらを無視した。しかし、ワシントンで占領憲法の無効を宣言したことは非常に大きな意味がある。すなわち、占領憲法は講和条約の限度で認められるとされており、その講和条約の破棄を宣言しているのである。占領憲法の第9条では尖閣を守ることはできない。もし尖閣が竹島のようになったらどうするのか考えている政治家がほとんどいない。占領憲法では交戦権は認められていない。いくら自衛権があると言っても自衛戦争はできない。自衛隊の武力行使は正当防衛のみ認められており、領土の奪還行為はできないのである。ダッカ事件では福田赳夫が超法規的措置により犯人を解放したが、これは立憲主義を破壊する行為である。さらに、占領憲法では国家の緊急対応ができず、即応性がない。東日本大震災の5日後に今上陛下のビデオメッセージが放送されたが、これは帝国憲法第8条の緊急勅令である。その中で、真っ先に自衛隊員に対する慰労のお言葉を掛けられたが、これは当然に自衛隊を容認されているからであり、これは明らかに政治的発言に踏み込まれたことになるが、どこからも異議が出なかった。このことからも帝国憲法は現存していると言える。」と、占領憲法である現行憲法無効の理論的解説と、大日本帝国憲法復元のための取り組みについて話されました。

 

東京近代史研究所代表 落合道夫

 東京近代史研究所代表の落合道夫様は、「日本人の民族としての固有性の認識について、2つの理論がある。一つは文化人類学であり、もう一つは国体論である。文化人類学の定義では、民族は神話と言語によって区別するとされており、日本の周辺には同じ神話、言語を持つ民族はいないから簡単に固有とわかる。国体とは天皇を頂く固有の国家のあり方であり、さらには、天皇崇拝を含む日本民族の生存システムの総体である。国体成立のプロセスを見ると理解できる。人間の活動は生存であり、それは子孫を残すことと連帯の活動である。飢饉、疫病、戦争、災害などを越えて我々は存在している。その生存システムは固有のものである。国体を成文化したものが明治憲法であり、これはかけがえのないものである。戦前はこれを大事に守って国家は大発展した。コアとなるものは、天皇崇拝、先祖崇拝、国民国防、家制度、教育勅語、国史である。戦前は貧しかったが人々が信頼し合える良い国だった。今の福祉は金ばかりであるが、社会福祉とは本来安心して死ねるシステムである。こうした国体は敗戦で壊された。今再建しなければならない。東日本大震災では国体が健在であることが示された。今回の日本人の災害対応を見て、米国占領軍勤務経験者が、『我々が破壊したと思ったものがまだ残っていた』と悔しそうにコメントしていた。日本によいものがあれば潰そうとするのが外国である。」と日本人の民族の固有性としての国体の大切さについて話されました。

 

セントルイス大学教授 サー中松義郎博士

 セントルイス大学教授のサー中松義郎博士は、「緑会を対象に東大キャンパスで創造学の講義をしてきた。その中では発明に関してだけではなく、憲法についても話してきた。現行憲法は護憲か改憲しかないと思われているが、そもそも現行憲法は無効である。現行憲法は制定に瑕疵があり、護憲改憲の対象にならないのである。その理由は、1、国体護持を条件に終戦した。これは大日本帝国憲法を変えないことを意味している。2.明治40年のハーグ陸戦法規違反である。日本は昭和27年のサンフランシスコ講和条約まで戦争状態であった。3.帝国憲法第75条違反、4.その他にもたくさんの根拠がある。」と、長年親交のある南出喜久治様が講師をされるということで、急遽駆けつけて頂き、憲法無効論について話されました。

 

在日米陸軍消防本部消防次長 熊丸由布次

 在日米陸軍消防本部消防次長の熊丸由布次様は、「在日米陸軍消防署で30年災害対応に携わってきた経験を日本のために役立てたい。3.11からの学びとしては、標準化された指揮命令管理制度が必要だったということである。アメリカでも日本でも災害が同じように発生しているが、その対処の仕方が違う。メキシコ大地震と阪神淡路大震災を見ると、いずれも近隣住民による救出活動により、多くの人が助かる一方で、警察・消防などの公助がすぐに現場に来るのが困難であることから、アメリカではCERT(市民救助隊)の必要性が提唱され、CERTの本格的な訓練が行われている。その中でICS(現場指揮システム)があらゆる災害現場で標準化され採用されている。ICSの中に、スパンオブコントロール(管理統制限界数)というものがある。そこでは、1人の司令官が正確にコントロールできる人数は3~7人とされている。福島第一原発の緊急対策本部は本部長の下に数多くの班が並列しており、スパンオブコントロールを無視しているため機能しなかったと考えられる。ICSを導入していれば、もっと効果的に機能したはずである。」と、アメリカの災害対応に対する取り組みを紹介されながら、福島第一原発の緊急対策本部について、ICSに基づく具体的な組織体制を提案されました。さらに、統合訓練プログラムについて、「アメリカでは緊急対応要員の能力適正基準がその役割毎に定められている。日本では危機対応に当たる人達が専門教育を受けていない。FEMA(危機管理庁)では教育普及啓蒙活動を行っている。また、米国では教育訓練施設も国防総省の他、民間の施設もある。こうした米国のノウハウを活かして、日本にも教育訓練施設を作りたい。さらにハードだけではなく、ソフト面でも教育訓練プログラムや組織体制など、標準化された訓練と制度を整備することで、一般市民から専門家まで災害対応能力を向上させていきたい。そうした活動のため、一般社団法人災害対応訓練研究所を設立した。市民救助隊を日本でも組織化していきたい。」とアメリカにおける災害対応の教育訓練の取り組みについて説明するとともに、熊丸様の今後の日本での取り組みについて語られました。

 衆議院議員の馳浩様からの「災害時の首都機能移転」と「日本の消防団や自衛団」に関する質問に対して、熊丸様からは、「ICSは国政レベルから市民まで共通して使えるものである。命令系統を一元化する必要がある。首都機能移転については、省庁が一体となってバックアップして機能させる必要があるため、あらかじめ省庁間で取り決めを行っておく必要がある。日本ではこれまで、危機の種類毎に対応策を考えてきたが、全ての危機に対応できるようにしておく必要がある。また、日本の消防団や自衛団は優れていると思うが、アメリカのプログラムの優れているところは、標準化することでより多くの人に伝わるということである。特に災害時の心理状況に対する学びは有効であり、より積極的な防災ができるだろう。」と答えられました。

 

戦後問題ジャーナリスト 佐波優子

 戦後問題ジャーナリストの佐波優子様は、「学校教育の中で憲法がどのように教えられているか調べた。静岡県の小学校6年生の授業では、大日本帝国憲法下での徴兵制度について、児童を立たせて徴兵免除の条件に該当する児童を座らせていき、最後に残った児童達に教師が『おめでとう、これで立派な兵隊になれます』と言ったところ、児童達からは『兵隊になりたくない』という声が相次いだ。これが戦後、平和や人権を守ってきた結果である。昔の若者が無理やり、嫌々兵士になったと言われるが、実際に兵役に就いた人達に話を聞いたが、皆、『男として生まれた以上、国を守るのは当然』と考えていた。戦前は、大日本帝国憲法第20条に兵役の義務が定められていたが、そんな義務に関係なく、国を守るのが当然と考えていたのに対して、戦後は学校教育で憲法9条を教えることで、逆に国を守る意識が失われている。」と、教育における憲法9条の問題点を指摘されました。さらに、「『凶器と武器の違いについて、凶器は普段別の用途の物を人を殺すために使うことであるのに対して、武器は元々人殺しのための物であり、だから武器を持つ自衛隊は人殺しの組織である』と言われ、反論できず悔しい思いをした。このことを自衛隊の方に話したところ、『凶器で人を守ることができないが、武器で人を守ることができる』と言われた。国を守っていくためには、今の日本国憲法を見直すべきである。」と武器に対する自衛官の思いについてのエピソードを披露されました。

 

(株)防災士研修センター常務取締役 濱口和久

 (株)防災士研修センター常務取締役の濱口和久様は、「石原都知事が4月に尖閣諸島の購入を発表したら13億円の寄付が集まった。この2、3年、何となく領土問題に関心を持つ人が増え、政治家の中でも昔から領土問題に取り組んでいるようなことを言う人が増えた。しかし、拉致問題に関しても、小泉首相の時代には多くの国会議員がブルーリボンをつけていたが、最近はほとんど話題にしなくなった。しばらくすると領土問題についても話題にしなくなるのではないかと心配している。西村真悟議員が平成9年に国会議員で初めて尖閣に上陸したが、当時の橋本首相は地主の意思に反すると発言し、梶山静六は中国を刺激するなと言い、鳩山由紀夫は日本人の一部の右翼がやったことだと発言した。私が竹島に本籍を移した時も、右翼だと言われた。国会議員がムードで領土問題について発言、行動をしなくなったときは、日本の政治は終わりだと思う。消費税では国を守れない。人の命と領土を守るのが国の基本である。」と、政治家が領土問題に対してムードで発言・行動することに対する懸念を示されました。

 

勝兵塾 事務局長 諸橋茂一

 勝兵塾事務局長の諸橋茂一様は、安岡正篤著「運命を創る」の一節を紹介され、「アメリカの対日占領政策である3R、5D、3Sと呼ばれる政策について、3Rは対日占領行政の基本原則であり、復讐(Revenge)、改組(Reform)、復活(Revive)を意味し、5Dは重点的施策であり、武装解除(Disarmament)、軍国主義の排除(Demilitarization)、工業生産力の破壊(Disindustrialization)、中心勢力の解体(Decentralizaiton)、民主化(Democratization)である。3Sは補助政策でセックスの解放、映画・テレビの活用、スポーツの奨励である。安岡正篤は『日本を全く骨抜きにするこの3R・5D・3S政策を日本人は喜んで、これに迎合した』と指摘している。」と話されました。

 

 最後に代表塾長は、「7月17日の産経新聞で、『明の上奏文で尖閣は琉球と明記されていた』という記事を目にしたが、他の新聞では全く取り上げていない。あれだけ尖閣問題で大騒ぎしながら、日本にとって大切なことを報じないのがメディアの実態である。日本のマインドコントロールも冷戦終結まではやむを得なかったかもしれないが、冷戦終結から二十数年も経って、未だに抜け出せないのはいかがなものか。どの国も国益のためにやっているのであり、日本だけがお人好しになっている。アメリカは日露戦争での日本の勝利から『オレンジ計画』で日本を仮想敵国とし、日本が国際連盟で提案した人種差別撤廃条項を多数決ではなく全会一致にして否決に持ち込んでいる。物事を世界的な視点で見ていかなければ、本当のことがわからない。原爆を落とされなかったら日本はもっとひどいことになっていたかもしれない。東西冷戦を見越してソ連に対する牽制のために原爆の使用が必要であり、日本人が有色人種だから日本に落とせばよいと考えたのである。こうしたことを理解しておかなければならない。」とメディアの問題と世界的な視点で物事を見ることの大切さを語られ、会を締め括られました。

 本日は、他にも山元学校学長の山元先生や新しい歴史教科書をつくる会副会長の岡野俊昭様、兵庫県議会議員の和田有一朗様からも意見や質問が出された他、衆議院議員の岸本周平様にもご参加頂きました。