第45回 勝兵塾月例会レポート

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

勝兵塾第45回月例会が、2月19日(木)アパグループ東京本社会議室にて開催されました。
冒頭のアパグループ代表元谷外志雄塾長による開会のご挨拶では、「アメリカの原爆投下の呪縛を解くことで真の日米関係を構築できる。先の戦争は日本がアメリカに挑んだのではなく、『ヨーロッパの戦争に参加しない』と公約して三選したルーズベルトが、チャーチルからの要請に応えるために、日独伊三国軍事同盟締結を機にヨーロッパ戦線に参戦する口実を作るために日本を追い込み暴発させて起こった。終戦間際日本は、ソ連や国府軍、バチカン等を通じて終戦工作を行ったが、アメリカは天皇制の存続をあいまいにして戦争を引き伸ばし、原爆を開発し完成させた。アメリカの軍事援助によりドイツに勝利したソ連が進める世界赤化での戦いで第三次世界大戦が起こると1、000万人を超える戦死傷者が出ることから、アメリカは二種類の原爆投下により、圧倒的な軍事力を見せ付けて熱戦を冷戦に変えた。戦後の世界覇権を握る上で、アメリカが酷い国だと思われることを避けるため、原爆が通常兵器と変わらないと思わせるために、陸軍記念日である3月10日に東京大空襲を行い、通常兵器でも一晩で10万人を殺すことができることを示し、すでに制空権、制海権を持ち、戦略的に意味のない硫黄島に上陸して日本軍と戦い、日本軍を上回る28、000人もの戦死傷者を出した。本土決戦になれば100万人もの戦死傷者が出るから原爆を投下したと国内を納得させるためだったのだろう。世界の国々は国益の為には嘘もつけば人も殺し、虐殺もする。日本の言論は戦後プレスコードによって縛られてきたが、今はITの時代であり、大手メディアだけを縛っても言論統制はできない。」と、戦後の問題の根底にアメリカによる原爆投下があることを示されました。


スタンフォード大学フーバー研究所教授の西鋭夫様

スタンフォード大学フーバー研究所教授の西鋭夫様は、「日本人ジャーナリスト2名が殺害され、動画がYouTubeにアップされた。このことに世界中が動転したが、ISISは日本人を殺すと世界中が騒ぎ、日本政府は動けなくなることを学んだ。日本とアメリカは軍事的運命共同体である。オバマはこれから中東に行き戦争をする。この日本人殺害によって、オバマから集団的自衛権を発動しろと言われれば、日本は断れなくなるだろう。自衛隊を中東に派遣すると、日本にいるイスラム系テロリストがテロをやる。しかし日本はテロに対して完璧に無防備である。さらに、中東には日本人のインターナショナルスクールが30校あるが、1つでもISISに占拠され、子供達が殺害されたら私達は正気でいられるか? 日本政府はISISと交渉するためにどこと交渉すれば良いかわからなかった。中東地域には3人の神様がいて、歴史が始まって以来ずっと戦争が行われてきた。日本はそれに巻き込まれたのである。日本人2人が殺されて新しい歴史が始まった。集団的自衛権が怖いのは、アメリカが中東に突っ込んで行ったら、日本も中東に行かなければならなくなるからだ。」と、ISISによるテロと集団的自衛権の危険性を指摘されました。

衆議院議員の鷲尾英一郎様

衆議院議員の鷲尾英一郎様は、「二大政党制では、政争は水際までで外交問題は一致協力して当たるべきだ。しかし戦後の平和ボケで野党は無責任な発言をしてきた。元々二大政党制を望んでいたのは岸信介である。野党の不甲斐なさを感じていた岸は、小選挙区制度の導入を考えた。小選挙区制度になれば、地元のしっかりした人間が野党にも入るようになり、野党のレベルが上がると考えたのである。当時は社会党の反対で実現しなかったが、その後自民党が派閥政治を止めようということで1996年に導入された。私は野党がしっかりした議論をしていかなければならないと考えている。最高裁が夫婦別姓について判断すると言われているが、こうした議論はいつも出てくるものである。そのときには変な動きを止めなければならない。」と、二大政党制と責任野党の役割について語られました。

衆議院議員で自民党広報本部長の馳浩様

衆議院議員で自民党広報本部長の馳浩様は、「憲法改正の国民投票が18歳からできるようになったが、それを前提とした初等、中等教育のあり方を考える議論が今日スタートした。また、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まり、日本の精神文化を世界に知らしめるための取り組みとして、『日本遺産』という制度ができた。『日本遺産』は建造物や食文化、風習、地域風土などを文化遺産に認定し、守っていく。この4月からスタートするが、観光の目玉にしたいという地元の思惑とともに、ふるさと教育の教材にして、子供達がふるさとに誇りを持ち自慢できるようになって欲しいと願っている。」と、教育のあり方やふるさと教育について語られました。

衆議院議員の原田義昭様

衆議院議員の原田義昭様は、「尖閣問題について、ほぼ毎日中国の公船が接続水域や時には領海を侵犯しているが、慣れてくることは極めて怖いことだ。歴史的には、1895年1月に尖閣は日本のものだと宣言したが、その後80年近くの間は全く問題なかった。しかし、国連の機関であるECAFEが海底リサーチを行い、海底資源が豊富だと報告したことから、1971年6月と12月に台湾と中国がそれぞれ自分達の領土だと主張し出した。1953年の人民日報の記事や1960年に中国で発行された地図では尖閣を日本の領土と認めている。さらに1969年に出版された中国の国土地理院発行の地図でも尖閣は日本の領土だと書かれている。それだけの証拠があるのだから日本はしっかり主張するべきである。それも中国を糾弾するだけではなく、国際社会に対してもしっかり訴えていくべきだ。私はこの事実を外交記者クラブでも訴えていく。『正義なき力は暴力である、力なき正義は無力である』という言葉があるが、日本の外交が正しいことを主張しても力がなければ軽く往なされるだけだ。安保法制を安倍内閣はかなり抑制して閣議決定したが、憲法の認めるギリギリまでやるべきである。」と、尖閣問題への取り組みについて語られました。

参議院議員の浜田和幸様

参議院議員の浜田和幸様は、「日米間で議論されているTPPは24の分野に亘って協議が進んでいるが、そのうち貿易、通商に関するものは5分野であり、その他は教育や放送、法律など社会の基盤となるもので、アメリカのルールをアジアの共通のルールにしようとするものだ。安倍総理は『攻めるべきは攻め、守るべきは守る』と言っているが、具体的なことは明らかにしない。TPPは秘密交渉となっており、協議の過程は公にしないことになっている。TPPに主体的に動いているのがアメリカ政府であり、オバマはTPP推進を公約にしている。業界団体も巧妙なロビー活動をしている。今のチャンスを逃すとTPPは纏まらないため、急ピッチで交渉が進んでいる。しかしその中身が国会にも全く知らされていない。一方、オバマ政権を支えてきた600の企業はTPPの1、000ページを超えるテキストにアクセスできるパスワードを与えられている。合意してから国会で議論しても何もできない。そこにはアメリカのルールを張り巡らせる深慮遠謀がある。しかしTPPはうまく利用すればアメリカオンリーではない日本が世界に誇れるスタンダードを作るチャンスでもある。」と、TPP協議の問題点を指摘されました。

 

TPPについて、慶應義塾大学教授の塩澤修平様が、「貿易通商以外の法律や教育の分野とはどのようなものか。」と質問されると、浜田様は、「TPPは社会のルールの共通化を目指しており、アメリカ的価値観を大前提にしている。教育でも社会制度でも英語を広めようとしており、さらに法律分野では、例えばアメリカ企業が日本で規制があって商売がうまくいかないと日本の法律を超えて日本政府に賠償を求めることができるようになる。アメリカと新興国との間の価値観のぶつかり合いであり、そこで日本がどのような立場に立つかが問われている。」と答えられました。さらに、第29代航空幕僚長の田母神俊雄様は、「TPPが成立しないと何が困るのか。本質的に困ることはないのではないか。なぜアメリカのためにしかならないことをやっているのか。」と指摘されました。これに対して浜田様は、「日米同盟関係の中で、アメリカは安全保障とTPPをセットで日本を攻めてきている。TPP交渉に参加したときから、合意後4年間は交渉過程を公表しないことが決まっていた。情報がない中で国会では攻めあぐねているのが現状である。経済界にはアメリカに対する期待があり、アメリカと一緒にアジアの市場を取り込んでいきたいという思惑がある。このままでは実態が隠されたまま押し切られるので、皆さん、声を上げていただきたい。アメリカは日本人の富を狙っている。米通商代表のフロマンはアメリカ金融界の代弁者である。」と答えられました。さらに原田様は、「確かに秘密交渉についてはおかしいと思う。TPPはアメリカが一生懸命なのは事実だが、日本も損ばかりではない。むしろ乗り遅れることのマイナスも考えなければならない。一昨年前に安倍内閣がTPP交渉への参加を決めた。これまでも自由化の議論は何度もあり、その度毎に日本はそれを乗り越えて大きくなってきた。日本はこれを乗り越えて大きなマーケットを手に入れ、ルールメークしていくべきではないか。」と政権与党の立場から答えられました。西様からは、「日本はTPPをなぜ乗り越えなければならないのか。これだけ重要なことであるにもかかわらず国民は何も知らされず、国会議員にすら知らされないのは異常ではないか。」との問いかけがあり、原田様は、「日本は民主主義国家であり、すべては選挙で決められる。昨年12月の衆院選はTPPを国益に結びつけるかたちで纏めると主張して戦った。民主主義は、最後は代表者に任せるしかない。国民の不利益にならないようにやってくれると安倍内閣に付託された。」と、総理の決断への期待を示されました。

駐日エルサルバドル共和国大使館特命全権大使のマルタ・セラヤンディア様

駐日エルサルバドル共和国大使館特命全権大使のマルタ・セラヤンディア様は、「先日NHKのインタビューで聞かれたことだが、私が日本に関心を持ったのは小学校6年生の頃に遡る。社会科で世界の歴史について学んだが、子供ながらに衝撃を受けたのは広島と長崎の原爆投下のキノコ雲の写真やその破壊力についての記述である。自動車やラジオなど周りに日本製品があるのを見て、日本は原爆を落とされたのに、どうしてこれだけ早く経済が成長して世界中で製品を売れるのか、子供ながらに興味を持った。」と、日本に興味を持ったきっかけについて、流暢な日本語で語られました。

アメリカ在住の主婦で月刊WiLL誌への寄稿者であるケネディ日砂恵様

アメリカ在住の主婦で月刊WiLL誌への寄稿者であるケネディ日砂恵様は、「よく聞かれるが、アメリカで生活をしていて慰安婦問題で肩身の狭い思いをすることはない。グレンデール市へ慰安婦像を見に行ったことがあるが、近くを歩いているアメリカ人に慰安婦像の場所を聞いても、そもそも『慰安婦』という言葉を知らず、『戦時売春婦』だと説明すると、『なぜそんな像があるのか』という反応を示した。ほとんどのアメリカ人は慰安婦問題で日本人を責める気持ちはない。日本政府がマグロウヒルの教科書に対して誤りを指摘したことについて、19人のアメリカ人歴史学者が学問の自由を奪うものだという声明を出したが、その中にアジアの歴史の専門家は一人もいなかった。歴史学者は、慰安婦問題は人権問題だとして関わろうとせず、政治家もリスクを負ってまで取り上げようとしない。ほとんどのアメリカ人は日本人のことが大好きで、そうしたアメリカ人は愛国者でもあるから、アメリカも酷いことをしたと責めると逆効果になる。アメリカは多様な民族が集まっているため、祖国の問題をアメリカに持ち込まないという伝統がある。慰安婦問題が女性の人権問題にされているため、男性が『彼女達は売春婦で金を貰っていた。』と言っても反感を買うだけである。どんなに正しいことを言っても、正しく受け止められなければ意味がない。」と、アメリカ人の日本人観と慰安婦問題へのアプローチ方法について語られました。

株式会社イワイ代表取締役の岩井健次様

株式会社イワイ代表取締役の岩井健次様は、「私達はおむすび屋でアメリカに米を輸出している。なぜ輸出できるかというと、日本で一番美味しい米は世界で一番美味しいからだ。日本の農業を再生し、自給率を上げるという理念の下に起業した。だから日本一高い価格で米を買い入れている。それは休耕地を再生して自給率を上げていくためである。新規需要米として減反カウントに入らない米をアメリカに輸出し、ニューヨークでは飛ぶように売れている。私の父は陸軍士官学校を出た軍人であったので、食料と燃料、平和と安全は国家が守るべきものだと思っている。そのうち私達は食料の分野を担っている。」と、事業を通して自給率向上への思いを語られました。

 

最後に元谷塾長より、「戦後70年の全ての原点はアメリカによる原爆投下にある。原爆を投下したアメリカが良い国であるためには日本は悪い国でなければならない。しかしアメリカには原爆を投下した理由があった。レームダック化したオバマとはTPPの合意を条件に真の日米関係を築くチャンスであり、8月には安倍総理の思う通りの談話を出してもらいたい。日本の孤立化は良くない。TPPにはプラスもあればマイナスもある。しかしここで一番大事なことは安倍政権が長期政権となることだ。リーダーに託したからにはしっかりやっているかを監視するだけだ。アメリカに対しては、原爆投下はやむをえなかったことを認めるからいつまでも日本を悪者にするのをやめるよう言っていくべきだ。『慰安婦問題』も『南京大虐殺』も背後にアメリカがいるからいつまでも日本が謂われなき批判を受ける。世界81カ国を訪れ各国の要人達とディベートを行ってきたが、皆が日本人は素晴らしいと讃える。日米の真の友好のためにもオバマが弱っているときに安倍総理は思いの全てを談話に盛り込み、それと引き換えにTPPを前向きに進めていくべきだ。次のアメリカ大統領は共和党になるだろう。オバマの時代に日米関係が一時的にギクシャクしたとしても、歴史的に見れば共和党の大統領の下で修復できる。そこで真の日米関係を築き、憲法改正をし、独自の軍を持つべきだ。日英同盟があったときが日本は一番安定していた。日米関係を、本当のことを言い合える関係にしていくべきである。」と、TPP協議を戦略的に活用していくべきとの見解を披露されて会を締め括られました。