勝兵塾第12回月例会が、5月17日(木)にアパホテル〈東京潮見駅前〉にて開催されました。
冒頭のアパグループ代表、元谷外志雄塾長による挨拶では、「産経新聞の記事によれば、中日新聞が河村発言を支持する意見広告の掲載を一度了承したにも拘らず、後から社論に合わないとして掲載を拒否したとあったが、これではメディアは社会の公器としての役割を果たしていない。4年前、第1回懸賞論文での田母神氏に対するバッシングでは、論文の全文を読めば何らおかしくないことが明らかであるのに、論文の端々を捉えて批判していた。私ははじめに日経新聞に論文の全文を掲載しようと広告代理店に話をしてみたが、新聞社の社論に合わないとして拒否され、産経新聞に持ち込んだら定価であれば、として田母神氏の参院招致の日に掲載することができた。そのことで激励の電話やFAXが多数届き、それを田母神氏に伝えたことを思い出す。日経ははじめから社論に合わないとして拒否したのに対して、中日新聞は一度受けてから拒否したのであり、これは信義に悖るものである。」と、中日新聞の対応を批判されました。さらに、「保守の人であっても、断片は知っていても全体を俯瞰して理解している人は少ない。今も昔も国際社会はパワーポリティクスが支配していることを日本人は忘れている。戦後歴史は核を廻る鬩ぎ合いであり、そうした視点から、新たに幻冬舎から『誇れる祖国、日本』という著書を出版することにした。その原稿を自民党の稲田朋美衆議院議員に見せたところ、『大変勉強になった。戦後自虐史観から脱するこのような本を出版されることは素晴らしい』というコメントを頂いた。」と、新しい著書に触れつつ、全体を俯瞰して戦後歴史を読み解くことの大切さについて語られました。
第29代航空幕僚長の田母神俊雄様は、 「日米安保条約があるから、日本はアメリカに守ってもらえると思っている人が多いが、日本が攻撃を受けてもアメリカが自動的に参戦するのではなく、アメリカの決断が必要である。しかもアメリカ大統領の決断が有効なのは2ヶ月間であり、その後は議会の議決が必要となる。反日法案を毎年いくつも通している議会が、日本のためにアメリカが戦争をすることを決議してくれるとは思えない。」と、日米安保条約の不確実性を明らかにされた上で、「アメリカは自分の国益を守るために敵と味方を絶えず入れ替えてきた。第二次世界大戦では日本とドイツを敵としたが、戦後、共産主義が脅威になると、日本とドイツを味方にした。中台関係では、中国が核開発に成功するまではアメリカは台湾を支持していたが、中国が核開発に成功すると、アメリカは台湾を捨てた。」とアメリカを単純に信頼することの危険性を指摘されました。さらに、「多くの日本人は、外交は仲良くすることだと思っているが、国益のために相手を分断しよう作為するのが外交である。北方四島を日本に返還されることをアメリカは支持しない。なぜなら日本とロシアが揉めていることがアメリカの国益に沿うことだからである。そのアメリカもリーマンショックにより相当苦しい状態であり、アメリカの抑止力は今後低下していくと考えられる。日中が尖閣諸島でぶつかったとき、アメリカが日本を助けると言えば、中国はアメリカに対して妨害行為をするだろう。抑止が破綻したとき、アメリカが日本を守る可能性はゼロに近い。だから日本は自分で自分を守る国になるべきなのである。」「アメリカの対日基本戦略は、日本をアメリカから自立させないことである。日本を自立させず、その経済力を利用しようとしている。そのため、アメリカの戦闘機を使わせようとする。他の国では装備品はできるだけ他国から買わず、他国に対して売ろうとするが、日本はその逆のことをしている。」と、日本が独立自衛の国になることの必要性を強く訴えられました。また、「日本には政治家、学者、評論家の中に中国派やアメリカ派はたくさんいるが、日本派がいない。日本は情報戦争で負けており、歴史認識問題がそのはじめにある。中国や韓国と共通の歴史認識を持つことは絶対にできない。日本はこれまで摩擦を避けて相手に歩み寄ってきたが、果たしてそれがよかったのか?」と、相手に迎合することで国益を失ってきたこれまでのあり方に疑問を呈されました。加えて、「F35の導入は非常にまずい選択である。F35は9カ国の国際共同開発になっており、それぞれの製造分担が決まっている。日本は今からこれに加わっても金を出すだけで造るところはない。中国でステレス戦闘機を開発中という情報があったが、これは日本にF35を選択させるために米中が共謀したのではないか。日本ではこうした情報の裏を取れる体制にない。日本はスパイ組織を持っていないが、スパイは国家のために必要である」「アメリカは40年単位で敵を変えてきた。日露戦争後はオレンジ計画で日本を敵として、その40年後に日本を軍事的に消滅させ、その後の冷戦では40年かけてソ連を政治的に崩壊させた。その後は日本とドイツの経済力を敵視し、40年かけて弱体化を図ろうとしている。日本のTPP参加で、アメリカによる日本の経済支配が完成する。日本が今参加しないと困る理由はない。全てアメリカに対する配慮である。TPPの内容はもうほとんど決まっており、今急いで参加しても意味はない。国の自主性を失うことをやって良いのか。推進するのは自分の国が儲かるからである。日本はロシアや中国への恐怖からアメリカに依存しようとしているが、自分の国は自分で守れるようにしなければならない。」と、アメリカに依存することの危険性と、日本が独立自衛の国になることの必要性を重ねて強調されました。最後に、「核武装しない方が安全と考えているのは日本だけである。国際的に見れば軍事力が強い方が安全である。日本には反対の情報が入ってくる。だから北朝鮮が核武装をあきらめることはない。中国やロシアは日米関係を分断しようとする。またアメリカも北朝鮮問題を解決することはない。国際社会は腹黒いものである。」と、日本がいかに国際社会の常識と逆のことが正しいと信じ込まされており、国際社会が腹黒いものであるか、力説されました。
田母神様の講演に対しては多くの質問が出されました。まず、衆議院議員の高邑勉様からの、「若い政治家の間で徴兵制の議論があるが、この問題についてどう思うか?」という質問に対して、「軍という視点から見れば、志願制と徴兵制では志願制の方が戦力として強く、期限があると教える方もやる方も力が入らないため、志願制の方が良い。しかし国を守るという意識を国民に植え付けるための国民教育として考えれば、徴兵制は有効だと言える。急に全国民を対象にするのは難しいが、例えば国政に出る者や学校の教師、官僚などは半年程度の自衛隊での兵役を義務付けたら良いと思う。」と答えられました。また、衆議院議員の馳浩様からの、「次期主力戦闘機を選定するのに何が重要か?」という質問に対して、「自分の国を自分で守れるような選定をすべきである。日本のためには性能では劣るがユーロファイターを採用するのが一番である。今のままでは日本の戦闘機を開発、製造する技術が失われてしまう。性能が最先端でなくても今は我慢して自分で造ることを選択すべきである。日本の技術力があれば10年で可能だと思う。」と答えられました。さらに、前兵庫県加西市長の中川暢三様からの、「尖閣諸島や竹島の問題で日本政府の対応が弱腰であるが、国民が示威行動を起こすべきではないか?」という質問に対して、「尖閣諸島と竹島とは全く異なる問題である。尖閣諸島はまだ日本が実効支配をしており、今の内に実効支配を固めるべきである。一方、竹島は韓国に実効支配されてしまっている。竹島も昭和50年代はまだ実効支配されていなかった。戦いが怖くて相手に迎合すれば支配されてしまうのである。竹島については、韓国が経済的に困ったときが一つのねらい目である。また韓国が経済的に困るように作為していくべきである。」と答えられました。その他にも、「日本が軍事力を完全に放棄し、平和主義を前面に出して無抵抗でいれば、いずれ国際社会の中で日本を支持する動きが出てくるということは考えられないか?」という質問に対して、「国際社会では美しい心が通じるということはほとんどない。国際社会での発言力は軍事力で決まり、日本は核武装国が決めたとおりに金を出すことしかできない。ならばどうして日本は核武装をして国際社会を動かす側に回らないのか。核保有国に囲まれ、日本だけに核保有を認めないのはおかしいと筋を通してアメリカに迫っていくべきである。福島原発の事故で放射能の恐怖を必要以上に煽ることで、電力不足を招き、日本経済の弱体化を図るとともに、日本から原子力技術を奪い、核武装できなくさせる意図がある。」と答えられました。
衆議院議員の下条みつ様は、「北朝鮮のミサイル発射の件では、日本の対応が遅いという批判を受けたが、米軍のシステムでは熱量で30秒後には発射がわかり、1分半後には日本でも把握はしていたが、発射されたミサイルがダミーかもしれない、ミサイルが長距離ではなく短距離かもしれない、途中で落ちたかもしれない、という3つの問題があり、そこをはっきりさせる必要があった。また、日本の従前からのシステムの問題ではあるが、国民に危害を加えない限り、発表を控えるというルールがあった。ただ、日本の情報システムについてはかなり安心してよい。ミサイルを発射するためにはすごく時間がかかり、衛星により上空からのカラーの情報が日々入ってきているので、ミサイルを発射しようとすればすぐにわかる。」と、防衛大臣政務官の立場から、北朝鮮のミサイル発射への日本の対応について、その裏側について語られました。また、「私はサラリーマンを20年間やってきたが、TPPはやるべきではないと考えている。オバマも今はそんなことをやっている場合ではないようである。また、消費税に対しても、財務省の説明では、国は1,000兆円の借金があると言うが、資産も約650兆円ある。すぐに動かせない不動産は約200兆円、年金が121兆円ある一方で、残りのうち155兆円は貸付金、92兆円は有価証券、19兆円が現預金である。増税の前に、まずこうした資産を活用すべきである。また、消費税については制度設計をきちんとしなければならない。」と、TPPや消費税について持論を示されました。
衆議院議員の岸本周平様は、「浪人時代の4年間は毎日7時間立ち続けた。政治家になるためにはお金は必要ない。」と自身の政治姿勢を示された上で、「『無規範社会』日本を正す」というテーマで話されました。「既成政党が何も決められないことに国民は怒っているが、その原因は規範がこの国からなくなったからである。渋沢栄一は農民の出であるが、昔は農民の間にも儒教の教養があった。五常とは『仁・義・礼・智・信』を指す。昔はよく『お天道様が見ているから悪いことをしてはいけない』と言っていたが、これも規範である。日本から規範が失われていることを山本七平氏は30年前から指摘していた。」と、儒教に基づく規範が日本から失われていることを指摘された上で、「『徳』とは江戸時代『いきおい』と読んでいた。天のエネルギーを呼び込む力、すなわち運が強いことを意味している。四書五経はどう生きるべきかについて書かれたマニュアル本であり、この徳を得るためには自己の最善を他者に尽くしきることが必要である。日本では『徳』という言葉は、『朕の不徳の致すところ』というように、天皇陛下が使われる言葉であり、非常に重い言葉である。」と、「徳」の意味について語られました。さらに、「書経の中のリーダーシップ論として、『放勲欽明 文思安安』という言葉がある。すなわち文武両道で人格的にバランスが取れているということである。」「備中松山藩で財政再建に成功した山田方谷は『利は義の和なり』という言葉を残している。失敗する財政改革とは、リーダーが計数に追われ、歳入を増やし歳出を削ることのみに汲々として、その結果社会が乱れるのであり、成功する財政改革は、計数を担当者に任せ、リーダーは教育や国防といった国家の基本を正すものである。今の日本においても、ビジョンを示して教育や国防、経済成長を盛んにすることが必要である。」とリーダーのあり方について語られました。
衆議院議員の西村康稔様は、「日本は本当に素晴らしい国で、世界でこんなに素晴らしい国はない。世界で最も長生きができ、治安が安定していて、衛生面でも素晴らしい。ただ、成熟しきってしまったがゆえに発展性がない。ローリスクローリターンの安定した成熟国と言える。」「『絆』という言葉は素晴らしいが、内向き志向になってしまっては発展性がない。『絆』が外に広がっていかなければならない。日本は島国根性になるのか、海洋国家として外に出ていくのかの境目にある。」と、日本の素晴らしさを強調される一方で、内向き志向で発展性のない国になることへの警鐘を鳴らされました。続けて、「必要なのはほんの少しの勇気であり、それがあればミドルリターンの躍動感のある国になれる。日本で学びたい、投資したいと思われる国になるために、一定以上の技術を持った人をもっと受け入れるべきである。一方、日本の子供達は先祖代々伝わってきた遊びをもっとするべきである。自然の中で遊ぶことで直観力や生きる力が身に付く。そのため、都会の小学生を全員田舎留学させ、中学生は海外ホームステイをさせて外に出て行くべきである。」と日本の可能性とそのために外へ出て行くことの大切さについて語られました。さらに、「ダーウィンの言葉で、『強いものが生き残るわけではない。変化するものが生き残る。』というものがある。そのために外に出て行く大胆さが必要である。あるドイツ人は、『日本人は“改革”はできない、“改善”は得意』と言っていたが、今の日本はそんなことをいっている場合ではない。この1、2年で思い切ったことをしていきたい。そのためには原点に立ち返り、保守で改革できる人が集まって政権を取らなければならない。」と、今の日本には変化が必要であることを強く訴えられました。
馳様から、「デフレ脱却のために必要なことは何か?」という質問に対しては、西村様は「デフレとはどんどん物価が下がり、買い控えが出てくる一方でお金の価値が上がっていくので、借金をしているとその借金が重くなり、どんどん円高にもなっていく。緩やかに物価が上昇すれば、売上が増え、給料が増えていき、借金も軽くなる。日銀は物価目標と言わずに物価の目途といったが、それでも2月14日に物価上昇率1% を目標にして良い流れになった。加えてお金を使ってもらう状況を作ることが必要である。特区は投資をしようとする環境を提供する成長戦略である。また供給と需要のバランスでは、国内での供給を減らすために輸出を増やしていく。さらに業界の再編も必要となる。これらのことをパッケージでやればデフレから脱却できる。」と答えられました。
新しい歴史教科書をつくる会理事で拓殖大学教授の藤岡信勝様は、「2月20日の河村市長の『いわゆる南京事件はなかったのではないか』という発言について、河村市長へのバッシングは相当なものであった。国家の土台にあるものは歴史観であり、自虐史観の最たるものは南京事件である。ここで河村市長が発言を撤回したらもっと悪い状況になるため、『つくる会』が中心となって河村発言を支持する運動を立ち上げた。市長の周りは撤回するよう市長に圧力をかけているため、今後も市長が発言を撤回しないように意見広告を出そうということになった。意見広告は東海地区で圧倒的なシェアを持っている中京新聞に出すことにし、内容も南京事件がなかったことを主張するのではなく議論の呼びかけるものにした。中日新聞は定価での掲載を一度は了承したが、5月2日に社論に合わないので掲載できないと言ってきた。そこで5月15日に掲載を求めて東京地裁に仮処分申請を行ったのがことの経緯である。」と、意見広告に関する中日新聞との経緯について説明されました。さらに、「社論に反するのであれば、なぜ一度は許可したのかという疑問があり、余程の大きな力が働いたのではないか。社論に反するという点については、中日新聞は社説で2回河村発言を撤回せよと書いていたことを根拠にしているが、意見広告では河村発言のうち、討論の必要を提起したことを支持していると書いているのであり、これが社論に反するなら、言論機関として自己否定になる。その点を中日新聞に質したが、論理的に破綻しているため、中日新聞は答えられなかった。」と中日新聞の主張の矛盾を指摘されました。また、「南京事件60周年のときに、『ザ・レイプ・オブ・南京』という本が出版されたが、そのサブタイトルが『忘れられた20世紀のホロコースト』となっている。ホロコーストについては欧米諸国では否定すること自体が犯罪とされており、そこには、南京事件はホロコーストだというイメージを欧米人に刷り込めば、否定できなくなるという意図がある。南京事件否定発言を犯罪とする法律を作ろうとする動きがあったが、人権侵害救済法案がそのために使われる可能性がある。言論の自由を認めることがより根源的で重要なことである。名古屋の共産党市議とディベートをすることになっていたが、急に出られないと言ってきた。それは、日本共産党も南京事件がなかったことを知っているからである。」と、南京事件を巡る謀略について補足されました。
最後に元谷塾長は、「勝兵塾はこの第12回で第1期生の募集を終了するが、これまで22名の国会議員や20カ国の外国大使をはじめ、多くの人達が入塾した。いずれこの塾から総理を出したいと考えているが、本日講師をして頂いた西村康稔議員は最も総理に近いと思われるし、同じく勝兵塾で講師をして頂いた稲田朋美議員も有力だと思われる。互いに切磋琢磨して頑張っていただきたい。現在のねじれが一番良くないので、次の選挙では日本派の政治家が多く当選し、保守大合同で過半数を取ってこの国を良くしてほしい。」と会を締めくくられました。