勝兵塾第六回月例会は十一月十七日(木)にアパグループ東京本社六F会議室にて開催されました。
冒頭の代表による塾長挨拶では、「ユーロは冷戦後のアメリカ一極支配に対抗してできたものであるが、今後ユーロは弱い国が出ていくか、崩壊するか、いずれかの道を辿るだろう。さらに、中国はちょうどバブル期の日本のような状況で、相当な不良債権を抱えている。格差に対する不満を成長によって抑えてきたが、成長が止まると矛盾が表面化する。他国と比較すれば世界で日本が一番健全で、その中でも最も有望なのが東京、その中でも都心三区ということで、アパグループでは現在東京都心で二十八プロジェクトを進めている。」と、日本経済の相対的な健全性について説明され、最後に「世界は今も昔も情報謀略戦であり、力の論理に立脚していかなければならない現実がある。」と締めくくられました。
自民党衆議院議員の中川秀直様からは、野田政権について、「野田さんは前の二人よりはるかに人柄が良く誠実であるが、余計なことを言わない、派手なことをしない、突出しない、では改革をできるはずがない。政権維持のためなら何でも良いというのは、手段と目的が逆転しているのではないか。」「国家の資産を考えれば、日本の財政はG7の中では悪くない。まずは資産を処分した上で増税の議論をするべきだ。民主党は基本政策を財務省に丸投げしている。行き過ぎた円高やデフレの中での増税は悲劇である。」と財務省主導の政権運営を批判されました。さらに、「欧米は紙幣を刷ってGDPギャップを埋めており、日本も日銀が国債を引き受ければデフレは克服できる。さらに、国債の定率繰り入れをやめるだけで復興財源は賄える。特例公債法案に対しては、今年は復興のことを考えて賛成したが、来年は解散・総選挙を約束しなければ通さない。」と、国債に関して持論を展開されるとともに、来年の解散総選挙に向けての意気込みを語られました。
慶応義塾大学講師の竹田恒泰様からは、「十一月二十三日は新嘗祭であり、宮中で行われる祭祀の中でも最も重要なものである。天皇陛下が大神様に五穀豊穣を感謝する日であり、天皇陛下は命を掛けてこの日を迎えられるのである。」と、新嘗祭の意義について語っていただきました。また、TPPを巡る議論に関して、「日本は米の国で、米は日本文化の根底を為すものである。日本の農業はお金に換算できない価値がある。」と米及び農業の価値を強調されたほか、貿易に関して当然と思われていることの中に嘘があるとして、「第一に、日本が保護貿易を行っていると思われているが、日本ほど市場を開いている国は存在しない。農作物の関税は日本が十一・七%、農業収入に占める財政支出の割合も日本は十五・六%といずれも世界最低である。第二に、日本が貿易立国であると言われるが、GDPに占める輸出の依存度は十六%と最も低い水準であり、国内経済だけで賄える。第三に、自由貿易は良いと言われるが、自由貿易においては貿易資本の多い方が勝ち、資源国から貿易国に富が集中して格差が広がる。したがって、大国が世界中の富を集めるために自由貿易を推進するのである」と、モデルや具体例を交えながら解説していただきました。その中で、「アメリカは、例えば乳製品はカナダやメキシコに対しては関税を撤廃しているが、オーストラリアに対しては高関税を保っており、国益のために使い分けている」「相手は詐欺師のようなものであり、国益を守るために粘り強く交渉できるのか否かが重要である。」と、アメリカとの交渉の危険性について警鐘を鳴らしつつ、「TPPは難しい問題であり、国民がしっかり分析しなければならない。」という言葉で締めくくられました。
パレスチナ常駐総代表部大使のワリード・アリ・シアム様は、「イスラエルとパレスチナは平和を保とうとしているが、アメリカがこれを壊そうとしている。パレスチナは国連加盟を申請しているが、アメリカは拒否権を発動しようとしている。」と、パレスチナの和平に関してアメリカが障害となっていることを明らかにされました。また、「一九四〇年から一九九〇年まではパレスチナのアイデンティティの確立が問題だった。今や世界中をパレスチナのパスポートで移動できるが、それまでは避難民の扱いであった。次に一九九〇年から現在まで、国境の確立の問題がある。国境が確立すれば国として認識される。パレスチナは狭いところにキリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒がいる。宗教問題にするとずっと争いが続くため、土地の問題として解決しようとしているが多くの障害がある」と、パレスチナが抱えてきた困難について語っていただきました。さらに、「我々はパレスチナに住んでいる人に対しては宗教にかかわらず平等に扱っている。イスラエルの存在を認めるから自分たちも認めてほしい。イスラエルが国を持って良いなら、自分たちも国を持って良いはずだ。パレスチナは六十三年間、イスラエル軍に支配されており、空も海も町も病院も学校も道も大統領もすべてイスラエルにコントロールされていて、隣町に行くにも許可証が要る。」とパレスチナの承認を切実に訴えかけられました。
ナイジェリア大使館駐日大使のゴドウィン・アボ様からは、「ナイジェリアはアフリカの中でも最もポピュラーな国で、投資機会も多い。石油の産出国で、外貨収入の九十五%、国家予算の八十%を石油に依存している。天然ガスはこれから開発され、石油精製所の修理も必要であり、これらに四百億ドルの投資を計画している。」とナイジェリアについて紹介をされた後、「政府は産業を多様化しようとしており、鉱物の掘削をはじめ、電力、鉄道、電話通信、食品加工などへの投資が有望である。中国や韓国はすでに政府が用意したインセンティブを活用して進出してきているが、日本もナイジェリアに来てそれらの国々と競争してほしい。さらに日本のセキュリティの専門性が安全で安心な社会を作るために必要である。日本は多くの高い技術を持っており、自分たちは豊富な資源を持っているのでこれらを組み合わせればきっとうまくいく。」と、日本からの投資や技術支援に対する期待を示されました。さらに、「ヨーロッパ人はアフリカに来て植民地化して天然資源を奪ったが、日本はアフリカ人を幸せにする義務を負っていないのにODAを通じて貢献していただいてとても感謝している。こうした良い関係を発展させていきたい。」とこれまでの日本の貢献に対して感謝の意を示されました。
兵庫県議会議員の和田有一朗様は、「佐世保の海上自衛隊の基地を視察して、日本は本当に独立国だろうかと感じた。佐世保湾は未だに米軍のものであり、海上自衛隊の基地が米軍基地の中にある。」と日本の独立性に対する疑問や、「日本の政治家のレベルが下がっていることを危惧している。ブームや見栄え、知名度などで簡単に議員になりすぎる。政治家としてのトレーニングを受けていないことが大きな問題である。」と政治家の質の低下について話されました。
日本創新党政策委員長の岡野俊昭様は、「ポピュリズムによって国が壊れていく。正しい歴史を教え、日本に誇りを持つことが必要である。一九五〇年代に共産党の志賀義雄が、『日本における革命に武力闘争は必要ない。教育で共産革命は達成できる。』と言っているように、左翼によって、左傾の教科書が採用されてきた。」と正しい歴史教育の必要性を訴えられました。さらに、なぜ歴史教科書がすぐに変わらないのかという質問に対して、「教科書を作る段階で、検定で文部科学省から非常におかしな指導がある。さらに教科書の採択の段階で、教育長は左翼から攻撃されるのがいやで左傾の教科書を採用する。」と教科書問題の実情について説明していただき、「ドイツのアデナウアーは日本の教育勅語をドイツ語訳したものを執務室に飾っていた。それだけ教育勅語はすばらしいものであった。」と教育勅語のすばらしさにも触れられました。
テイケイ(株)常務取締役の濱口和久様は、「先週金曜日に防衛省で幹部向けに領土問題の講義をしたが、領土、領海は外務省の管轄ということで、自衛隊の研修では領土問題はカリキュラムにないことがわかった。さらに防衛白書にも領土問題はほとんど触れられていない。」と領土問題に対する政府の認識の低さを批判されました。
戦後問題ジャーナリストの佐波優子様は、「八月十五日に武道館で行われている戦没者追悼式への遺族への招待状について、神奈川県ではその差出人が県庁のホームレス課となっていたため、戦争で亡くなった方とホームレスを一緒にされるのは辛いという遺族の声を聞いて論文を書いた。日本を守る精神が一番大切だが、それを受け継ぐところがない。」と、『正論』に掲載された論文の背景について説明されました。
最後に塾長は、「日本は台湾や満州、朝鮮を植民地支配したというより開発を支援したと言える。ヨーロッパ諸国が植民地を失って経済力を低下させたのに対して、日本はむしろ負担が減ったために戦後の急速な経済成長が可能となった。中国や韓国は日本の技術と資金で成長したようなものである。日本人に不足しているのは誇りである。この『勝兵塾』を通じて、しっかりした世界観、国家感、歴史観を養い、いずれはこの中から日本の首相を輩出したい。」という言葉で、月例会を締めくくられました。