第58回 勝兵塾月例会レポート

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

 冒頭のアパグループ代表元谷外志雄塾長によるご挨拶では、「勝兵塾には、これまで延べ10、000人を超える人々が出席し、その間、世の中が大きく変わった。これには第一回懸賞論文で最優秀賞を受賞して大騒動となった田母神俊雄氏の存在も大きかったと言える。その田母神氏から、政治資金の問題で捜査を受けていることで、勝兵塾の特別講師・顧問を辞退される旨の連絡を頂いた。」「渡辺洋一氏の著書『目覚めよ日本』を読むと、現在の世界史はキリスト教徒による歴史であることを実感した。本書には、南米ではカトリックによって、北米ではプロテスタントによって、原住民がいかに残酷な方法で虐殺されたかが描かれている。私はこのことを多くの人々に知らせたいと思い、来月号のエッセイで本書の内容を紹介している。」と、キリスト教によって一方的に創られた世界史に対して問題提起をされ、「アメリカではトランプ大統領誕生の可能性が高まっている。ルビオが最も世界情勢を理解していると期待していたが、予備選における言論戦で弱さを露呈した。トランプは予備選だから極端なことを言っているが、共和党の候補になれば民主党に勝つために真っ当なことを言うようになるだろう。オバマによる8年間の弱いアメリカは、世界中で混乱を巻き起こした。習近平にとって最も望ましくない大統領がトランプだろう。トランプは、『日米安保は片務的で不公平だ』と言っているが、これは日本にとってもチャンスである。ソ連は1917年に成立してから1991年まで、74年間で崩壊した。今年で戦後71年だから、後3年すれば日本も大きく変わるかもしれない。日本史は戦後GHQによって創られ、世界史はキリスト教徒によって創られてきた。今年は衆参同時期選挙が行われると見ているが、安倍政権が勝利し、改憲勢力で三分の二を確保して、少し時間を掛けて世論を醸成しながら憲法改正を目指していくことを期待している。安倍政権が長く続くことで日本は真っ当な国になることができる。」とアメリカ大統領選挙の日本への影響について解析されました。

衆議院議員 亀岡偉民様

衆議院議員 亀岡偉民様

 衆議院議員の亀岡偉民様は、「私は福島県選出の国会議員である。東日本大震災で福島だけが復興が進んでいない。最初の段階で怖いというイメージが植え付けられたために、なかなか自主避難した人々が戻ってこない。原発が爆発したときには、残された人々で力を合わせて救助活動を行った。南相馬市ではある日突然人々が体育館に集められ、避難しろと言われた。家畜のいる人など事情のある人は避難せずに残ったが、どこに誰が残ったのかわからなくなった。30㎞圏内には食糧が届かず苦労したが、そうしたときに頼りになるのが同志の仲間だった。ようやく食料が届いたときには、安倍総裁が自ら10tトラックに乗ってきて、避難所を回って被災者全員と握手をした。当時自民党は野党だったが、多くの肩書きのある人が報道陣を引き連れて福島に来ていた一方で、マスコミが報じないところで一生懸命やってくれた人達がいたのである。今はマスコミをうまく活用した人が選挙で当選する時代であるが、本当に必要なことは何か考えて欲しい。日本は法治国家で優秀な官僚がたくさんいるから復興が遅れている。今ここに田中角栄先生がいれば、復興はすぐに進んでいただろう。原発被害の損害賠償をいつまでもらっているのかと言われるかもしれないが、実際に福島にはお客も取引先もいない。風評被害で福島の物というだけで誰も手を出さない。自主避難をした人達が早く戻ってくれないと風評被害がなくならない。逃げた方が避難先で優遇され、残って頑張っている方が冷遇されている。同情は要らないが支援を継続して頂きたい。」と、福島の復興への強い思いを語られました。

ナイジェリア連邦共和国大使館上席参事官 パトリック・イモロゴメ様

ナイジェリア連邦共和国大使館上席参事官 パトリック・イモロゴメ様

 ナイジェリア連邦共和国大使館上席参事官のパトリック・イモロゴメ様は、「ナイジェリアは西アフリカに位置しており、人口が1億7千万人と世界第7位で、生産人口が半数を超えている。人口増加率は高く、2050年には4億5万人で世界第3位になると言われている。ブハリ大統領は昨年就任したが、この選挙は国内外から自由公正で平和に行われたと評価を受けている。GDPは5、100億ドルとアフリカ最大でインフラやIT、天然ガス、農業など投資機会は多い。日本とナイジェリアは1960年に外交関係を樹立し、これまでハイレベルでの交流が行われてきた。2001年には森元首相がナイジェリアを訪れ、2008年にはヤラドゥア元大統領やジョナサン元大統領が来日している。現在ナイジェリアには30社を超える日本企業が進出している。日本におけるナイジェリアのコミュニティも拡大しており、日本人とナイジェリア人の結婚も増えている。両国の文化が融合し新しい文化が生まれている。ナイジェリアは観光地としても素晴らしい国で、年間を通して様々なお祭りやイベントが行われ、大都市では様々な国の料理を楽しむことができ、とても美しい国でもある。一度来れば何度でも行きたくなる国なので、是非一度来ていただきたい。」と、ナイジェリアのポテンシャルと日本との外交関係について紹介されました。

衆議院議員 辻清人様

衆議院議員 辻清人様

 衆議院議員の辻清人様は、「生まれは浅草で現在36歳だが、うち20年間はカナダやアメリカで過ごした。外から日本をずっと見てきて、日本は素晴らしい国だと感じていた。当時日本は世界第2位の経済大国で、経済では一流だが日本人の顔が見えないとよく言われていたため、日本の素晴らしさを海外にアピールする必要があると感じてきた。今の日本では、憲法改正を話題にすることをタブー視されている。法律は不合理であれば変えるべきであり、世界のどの国も時代に合わせて憲法を改正してきている。現行憲法は、家族や地域の位置付けが規定されていないことや、安全保障や平和貢献について不十分であること、緊急事態条項が欠如していることなどが問題である。安倍総理は憲法改正に意欲的だが、元々自民党は自主憲法制定を党是として掲げてきた。大事なことは日本人が歩んできた歴史や文化を憲法に規定することである。先の大戦で日本は歴史が分断されている状態であり、私は今でも戦後だと感じている。日本の憲法は解釈変更で時代の変化に対応してきた。憲法はGHQによって8日間で作られ、日本の案で唯一通ったのは二院制くらいである。天皇の意思による発議の体裁をとり、明治憲法の全面的否定で終わったが、明治憲法は素晴らしい憲法であった。1868年に明治政府が発足した際に掲げられた五箇条の御誓文はデモクラシーを標榜したもので、各国の賞賛を浴びた。その背景には聖徳太子の十七条憲法がある。伊藤博文は、憲法はヨーロッパに学ぶのではなく、日本の歴史と文化に根ざしたものでなければならないと考えた。皇室についても、日本は天皇家が存在するから日本であり、天皇制についてもっと理解し、議論すべきである。憲法前文には歴史や文化、国の由来、国柄が表現されるべきであり、国際的に通用しないユートピア精神ではなく、国と領土を、誇りを持って自ら守ることを明確に書き込まなければならない。天皇については国家元首と明記すべきである。権威と権力は別の次元のものであり、権力は国民に代表がコントロールすべきであるが、権威は短期間ですぐに変わるものではなりえない。9条改正について、徴兵制になるというのはデマであり、G7には徴兵制を採っている国はない。戦争は起こさないが、自国民を守らなければならない。外交での解決が前提だが、備えを作るのが政治家の責任である。今は景気を回復させ、安定した政権の下で、憲法改正を堂々と議論すべきである。」と、現行憲法の問題点と憲法改正のあり方について持論を披露されました。

慶應義塾大学経済学部教授 塩澤修平様

慶應義塾大学経済学部教授 塩澤修平様

 慶應義塾大学経済学部教授の塩澤修平様は、「現行憲法は日本が主権の無い状態で制定されたものであるが、その正当性についてどのように考えるか」と質問され、辻様は、「その議論は神学論争のようなものであり、現行憲法そのものを否定してしまうと、過去からの蓄積の中で今まで築きあげてきたすべてを失ってしまう。だから現行を認めた上で改正していくべきと考える。」と答えられました。さらに、ハーバード大学Igノーベル賞受賞教授のサー中松義郎博士からも、「現在の日本国憲法は無効であり、無効な憲法が横行している状況を早く止めさせてほしい。」と意見が出されました。

有限会社ジャパンコンサルタンツ社長でフリージャーナリスト 宮田修様

有限会社ジャパンコンサルタンツ社長でフリージャーナリスト 宮田修様

 有限会社ジャパンコンサルタンツ社長でフリージャーナリストの宮田修様は、「私は昭和44年に産経新聞に入社し、6月には新潟に赴任した。田中角栄は強烈な政治家であり、100年に1人の政治家だろう。NHKと共同通信が戦後の日本人の人気ランキングを調べたが、いずれも一位は田中角栄だった。私が初めて会ったのは昭和45年のことである。柏崎市長に誘われて、夜行バスで目白の屋敷への陳情に同行した。市長が私を紹介してくれて、田中角栄から将来やりたいことを聞かれ、私が『政治部で国会を担当したい』と答えると、すぐにその場で産経新聞の政治部長に電話を掛けてくれた。陳情の時間は3分と決められていたが、目の前で相談事を処理する姿が強烈だった。田中角栄は昭和22年に初当選した。そのときは『若き血の叫び』をスローガンとしてポスターに掲げていた。演説の中で『憲法は日本のものであり、その成立には少しの疑義もあってはならない。国家に主権がないときできた憲法は無効である』と、自主憲法の制定を訴えていた。日本海側の厳しい風土があったからこそ東京に出て一番になろうと田中角栄のような人物が出てきたのだと思う。そういう点では、同じ日本海側出身の元谷代表も共通している。」と、田中角栄の人物像について記者時代の体験談を語られました。

衆議院議員 衆議院東日本大震災復興特別委員長 今村雅弘様

衆議院議員 衆議院東日本大震災復興特別委員長 今村雅弘様

 衆議院議員 衆議院東日本大震災復興特別委員長の今村雅弘様からは、「アメリカ大統領選が話題になっているが、アメリカは歴史的に膨張したり内向きになったり大きく振れてきた。日本はアメリカべったりではいけない。歴史を学び、世界の中で外交を考えていかなければならない。保育園の問題も話題になっているが、この背景には東京一極集中の問題がある。こうした問題を解決するためにリーダーシップが求められる時代である。」とコメントを頂きました。

在日ロシア人会会長 ユーリー・ブーラフ様

在日ロシア人会会長 ユーリー・ブーラフ様

 在日ロシア人会会長のユーリー・ブーラフ様は、「私はソ連時代に来日し、大使館で一等書記官として働いていた。父がウクライナ人で母がオランダ人であるが、ソ連崩壊時にモスクワにいたのでロシア国籍になった。日ソ問題は現在日ロの問題になっている。早く領土問題を解決し、平和条約を締結しなければならない。日本人にとってロシアは国民同志の交流の少ない遠い国であるが、世界の中の位置を考えれば、両国が力を合わせる価値はある。日本は世界有数の工業国であり、ロシアは世界有数の資源国である。ゴルバチョフのペレストロイカで皆が世界は良い方向に変わると期待していたが、先月ゴルバチョフは80歳を迎え、彼に対して様々な評価が出てきた。ゴルバチョフ、エリツィンの15年間でGDPは半分になり、男性の平均寿命が8年短くなり、人口が500万人減少した。彼らのやり方は非常に犯罪的なものであった。スローガンだけで経済改革が進まず、共産党支配から民主主義へ、社会主義から市場経済へ計画が無いままに進んだ。プーチンの人気は経済改革に力を入れて国造りをしてきたことにある。民主主義を育てるためには時間が必要である。中間層が育ってこないと民主主義は根付かない。日ロ間には問題を抱えているが、プーチンは安倍総理に対する期待が大きい。日ロ関係が大きく変わっていくことを期待している。」と、ロシアの抱える課題と日ロ関係への期待について語られました。

戦後問題ジャーナリスト 佐波優子様

戦後問題ジャーナリスト 佐波優子様

 戦後問題ジャーナリストの佐波優子様は、「国際女子差別撤廃委員会が慰安婦問題について、被害者の痛みに配慮すべきだと勧告を出した。外務省の杉山審議官が先月『慰安婦の強制連行は無かった』と証言したことに対するものだ。日本は女子差別撤廃条約を1985年に批准したが、慰安婦問題は批准以前のことにも拘らず現在の問題として審議をされている。2014年9月の日本の報告書では、本条約は締結(1985年)以前に生じた問題について遡って適用されないとしつつも、日本は慰安婦問題に取り組むとしている。しかし他の国々の審議内容を調べてみると、本条約が発効した1981年以前に起こった出来事を取り上げることはほとんどない。慰安婦問題は日本の条約批准以前の問題であり、しかも慰安婦の強制連行はなかったことが証明されている。二重の意味で矛盾しているのである。これはNPO団体のロビー活動の成果である。これから巻き返しを図っていかなければ日本の誇りが失われてしまう。」と、国連女子差別撤廃委員会の最終報告書の内容とその背景について紹介されました。さらに、史実を世界に発信する会事務局長の茂木弘道様は、「国連人権委員会に慰安婦問題を提出したのは日本の反日人権主義者である。先日皇室典範についても勧告が出されたが、この問題を国連に提出したのも反日日本人である。2月に女子差別撤廃委員会に出席するためにジュネーブを訪れたが、現地には多くの左翼が押し寄せてきた。不作為ではやられるだけである。」と補足されました。

勝兵塾事務局長 諸橋茂一様

勝兵塾事務局長 諸橋茂一様

 勝兵塾事務局長の諸橋茂一様は、「2012年3月30日にはパラオ共和国の領海に中国漁船が侵入し、パラオは銃撃して漁船は撃沈した。2016年3月14日にはアルゼンチンが排他的経済水域内で違法操業していた中国漁船を撃沈した。国際法では領海侵犯や排他的経済水域内での違法操業している者に対して警告を発し、その警告に従わない場合は撃沈しても文句は言われない。パラオやアルゼンチンができてなぜ日本ができないのかと思う。また、平和愛好者が戦争を作る。ドイツがラインラントに侵攻したとき、イギリスやフランスは見て見ぬ振りをした。さらにスデーデン地方に侵攻したときも見て見ぬ振りをした。その結果第二次世界大戦に繋がった。」と、領土問題には毅然とした態度が必要であると訴えられました。

 

 最後に塾長より、「来月号の『アパ的座右の銘』は、『大手優位の時代は終わった 今は速い者が 遅い者を下す時代』である。2010年4月にスタートした頂上戦略では東京都心で46ヶ所のホテル用地を一気呵成に取得した。いずれも駅から徒歩3分以内の好立地で、ホテル業界でも断トツの収益力となった。過去の財界人はしっかりした考えを発信してきたが、今の財界人は、中国に依存するあまり、中国にとってマイナスの発言ができなくなっている。だから、私が主張しなければ誰も主張しないだろうという気持ちで言論活動に取り組んでいる。25年間に亘る『Apple Town』の発行や懸賞論文制度、勝兵塾を通じて社会へ大きく貢献してきた。その結果、第二次安倍政権が誕生し、憲法改正の議論ができるようになった。トランプが大統領になれば日本が自主独立となるためのチャンスである。日米同盟を双務的な真っ当な同盟とし、ニュークリアシェアリングによって東アジアにおけるパワーバランスを維持していくべきである。そして世界第二位の経済大国へと目標を持って頑張ることが必要である。事業の成功があるから言論活動の信頼性が担保される。『二兎を追うものは二兎ともを得る』という言葉が私の座右の銘にはある。マイナス金利の今頑張らなければ何時やるのか。これからもメリハリをつけながら事業を進めていく。」と、事業と言論活動の両立への強い意志を示して会を締め括られました。