勝兵塾第118回月例会が4月15日にアパグループ東京本社で開催されました。
冒頭のアパグループ元谷外志雄代表による塾長挨拶では、「5月10日でアパグループは創業50周年を迎え、日が経つのは速いと感じる。勝兵塾もあと2回で120回、丸10年になる。『本当のことを知れば、皆保守になる。』という思いで勝兵塾を立ち上げ、東京から始めて、金沢、大阪の3カ所で毎月開催してきた。段々と講師のレベルが上がり、参加者が増えているのを感じている。勝兵塾は日本の保守化に貢献してきた。本当のことをもっと教科書に書いたり、メディアが報道したりするようになれば、日本はもっと誇りを持てる国になる。日本を貶める反日日本人が多いのが残念であるが、少しでもそのような人々を減らしていくためにも、勝兵塾の果たす役割は大きい。素晴らしい講師の方々にお越し頂き、その話を聞いて丸暗記するのではなく、本当はどうなのかを自分なりに考える機会となれば幸いである。」と、勝兵塾の意義について語りました。続いて、4月5日に開催されたアパグループ春季祝賀会の模様を動画で視聴しました。
麗澤大学大学院客員教授・モラロジー道徳教育財団道徳科学研究所教授の高橋史朗様は、「歴史教科書問題が全く新しい段階に突入した。新しい高校の教科書に『アクティブ・ラーニング』が登場し、『アクティブ・ラーニングで学ぶジェンダー』や『歴史を読み替える ジェンダーから見た世界史』、『歴史を読み替える ジェンダーから見た日本史』という本が高校の教科書のサブテキストとして作られた。これらを作ったのが日本学術会議のジェンダー分科会の学者達である。同学術会議には4つのジェンダー分科会があるが、これらをリードしているのが上野千鶴子や大沢真理である。この二人は内閣府の男女共同参画会議をリードしてきたが、このジェンダーという視点が歴史教科書の改革に大きな影響を与えている。歴史総合教科書12点のうち9点に慰安婦の記述が入った。民主党政権下で、男女共同参画基本計画に『高等教育機関において、ジェンダー研究を含む男女共同参画社会の形成に資する調査・研究の一層の充実を促す。また、研究成果を、学校教育及び社会教育における教育・学習に広く活用』『日本学術会議においては、ジェンダー研究を含む男女共同参画社会の形成に資する学術研究…多角的な調査、審議を一層推進する』と盛り込まれた。その結果、現在全国の大学の半数以上でジェンダー学の科目が開講されている。そこでは徹底した左派のジェンダー研究による授業が行われている。『歴史学とジェンダーに関する分科会』は、高校の新科目『歴史総合』にジェンダー史を導入し、『ジェンダーで鍛える歴史的思考力』『ジェンダーで実践するアクティブ・ラーニング』重視の歴史教育を提言した。これで時代の基本的特徴を説明する基軸的な概念用語を中心に教科書を書き換えることになった。この背景には、高校生の世界史未履修問題があり、世界史は用語が多すぎて暗記科目となっているため、歴史用語を精選すべきだという議論が起こってきた。そこで高大連携歴史教育研究会が用語の精選を行い、歴史を動かしたのは偉人ではなく、時代を象徴する概念用語を学ぶことが重要で、近現代史重視、戦争記述重視ということになった。そして、ジェンダーと歴史教育がドッキングして、『ジェンダーで読み替える歴史教科書』の作成という新たな段階に突入した。歴史教育分科会が提言した『基軸的な概念用語』の代表例が『ジェンダー』であり、さらに『天皇制』『アジア・太平洋戦争』『ジェンダー主流化』等の『時代の基本的特徴を説明する概念用語』を重視して『歴史的思考力』を育成するということである。私は孤立無援の中で男女共同参画会議の議員を4期8年務めたが、その中で一度も反論されなかった視点が二つあった。一つは、子供の最善の利益という視点からものを考えるべきだという点である。例えば、選択的夫婦別性も子供の最善の利益という視点から考えるべきである。もう一つは、男と女の違いを活かしながら補い合って新しい秩序を創っていくことが男女共同参画だという視点である。『歴史を読み替える ジェンダーから見た世界史』では、ジェンダー史で歴史を読み替える目的が書かれているが、第一に挙がっているのがエンゲルスの『家族、私有財産、国家の起源』という有名な著書である。そこには、歴史に現れる最初の階級闘争は男性による女性の抑圧であり、家族とは男が女を支配する奴隷制だと書かれている。子ども庁ができ、これから子どもの権利とは何かという議論が本格的に始まるが、このとき女性の自己決定権が関わってくる。また国語教育では、現代文が論理国語と文学国語に分けられた。論理国語は実用的な文章を学ぶもので、かつてGHQがやったことである。論理国語の教科書に文学作品が出てくれば全て削除される。これは日本の文化の断絶である。慰安婦問題の背景に学習指導要領の問題があり、その背景には文部科学省の問題があり、問題は深刻である。新しい教科書の議員連盟を立ち上げて、学習指導用要領の見直しや教科書検定制度の見直しをしていかなければならない。」と、ジェンダーによる歴史教育の問題点を指摘されました。
在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥様は、「日本人の精神に神道、仏教、儒教が大きく働いていると考えてよいか? 島国根性と村意識という排他的な面があるのではないか?」と質問され、原様は、「日本は島国で、江戸時代は非常に豊かな文化が栄えたが、それは結局井の中の蛙的な豊かさであった。神道的なアニミズムが司馬遼太郎の言う『大きな皿』となって、日本人の宗教心になっている。そこに大きな影響を与えたのが仏教で、非常に論理的なもので、そこに陰陽道のような道教的な要素が加わり、さらに日本人の倫理観を形作ったのが儒教である。そうしたものが神道の皿の上で一体化していると言える。」と答えられました。
東京国際大学学長の塩澤修平様は、「価値観の違う人達に日本の価値観を発信する際に、どのような点に気を付けるべきか?」と質問され、「相手の考えがよくわからない時でも気持ちの上では相手を尊敬しつつ、相手がどのあたりだと納得してくれそうかを感知、察知しながら話していく。ただ、日本人と同じような考え方を持っている民族はそう多くない。自己主張の強い相手と接する場合、私はよく”I respectfully disagree with you”と言ってきた。敬意を持ちつつ自分の意見をはっきり言う。同意しない場合も必ずその理屈を伝えるべきだが、日本人は理屈を言うところが弱い。」と答えられました。
「新しい歴史教科書をつくる会」副会長の藤岡信勝様は、「私は自由社から出版されている『新しい歴史教科書』の筆頭執筆者を務めている。令和元年度に文部科学省の教科書検定に申請したところ、検定意見がたくさんついて欠陥箇所が多いという理由で一発不合格になった。1頁当たり1・2個以上検定意見が付くと一発で不合格になり、その年は申請できなくなる。私どもは検定意見を詳細に分析した結果、絶対に承服できない検定意見が無数にあった。例えば、江戸時代の長屋の一角を再現した博物館の展示物の写真を掲載したところ、それに対して『生徒が誤解するおそれのある表現である。復元されたものであることがわからない。』という検定意見が付いた。この指摘自体がナンセンスであるが、仮に復元と書いていないからおかしいとしたとしても、学び舎の教科書も全く同じ博物館の同じ場所の写真を掲載して復元と書いていないが、何の検定意見も付いていない。なぜ文科省はこのようなことをしたか。それは自由社の教科書を不合格にしたいという目的が先にあったからである。また、福岡にある元寇防塁の写真を教科書に載せたが、これも復元であることがわからないという検定意見が付いた。教育出版の教科書にも山川出版の教科書にも復元と書かれていないが、どちらもお咎めなしである。しかも、教育出版と山川出版の教科書は、検定のための白表紙本から、採択のための見本本にする間にこっそり復元と書いていたのである。教科書会社が検定意見もないのに自ら訂正することはあり得ず、文部科学省が『復元』を付け加えるよう耳打ちをしたに違いない。次に、サンピエトロ寺院の写真には世界遺産のマークが付いているが、エルサレムの写真に世界遺産のマークが付いていないので表記の不統一だという検定意見が付いた。しかし、これもナンセンスである。エルサレムにある遺跡群は世界遺産であるが、エルサレムという都市そのものは世界遺産ではない。検定意見が論理的に間違っている。しかも教育出版も同じエルサレムの写真を掲載して、何の検定意見も付いていない。また、1930年のロンドン海軍軍縮会議で補助艦の比率が米英日で10:10:7と決まったと記載したら、不正確であるという検定意見が付いた。『7』は不正確で正しくは『6・975』でなければならないという意見であるが、中学生の学習ではそこまで必要ないと考えてあえて『7』と表記しており、他社も同じように書いていたが、他社には何のお咎めもなかった。文部科学省ははじめから自由社の教科書を落とすと決めて、理屈にならないような検定意見を付けてその数を水増しして不合格にしたのである。同じ表記で他社が良くて自由社がダメとされたところが31箇所ある。自由社が狙われた理由は二つあると考えている。一つは自由社の教科書は他の教科書と比べて日本の文化の素晴らしさについて書いていることである。もう一つは、二十世紀における共産主義の悪について書いたことである。二十世紀には二つの大きな戦争があったが、それらの戦争の死者の合計が約五千万人であるのに対して、共産主義革命や共産主義体制下のイデオロギーによる政治的死者は1億人を超えた。共産主義の悪を知り、警戒心を持たないと日本人は生き抜いていけない。だから初歩的なことだけでも教えなければいけないと考えたが、これが赤い官庁である文部科学省の逆鱗に触れた。教科書問題でもう一つ重要なのは、『従軍慰安婦』と言う言葉が15年振りに復活したことである。山川出版社が中学歴史教科書で『従軍慰安婦』という言葉を復活させた。私達から見れば、その箇所の本文に3つ、注に3つ誤りがあったが、何の検定意見も付かなかったばかりか、その前後30頁に亘って検定意見が付かなかった。私が不思議に思うのは、こうした不正がなぜバレないと思ったかである。すでに調査によってバレているが、日本のメディアでは産経新聞以外はこのことを報じない。言論封殺はアメリカでもすでに起こっているが、世界的に全体主義的風潮が広がっていると思う。文部科学省を語るには前川喜平氏について語る必要がある。前川氏は、座右の銘を聞かれて『面従腹背』と答えた人物である。安倍政権の下でどうしてこんなことが起こったか不思議に思うと思うが、面従腹背の官僚が文科省を占拠していたのである。昨年の2月22日に私達が一発不合格は不当だと記者会見を開いたが、その前日のネットニュースに反応して、前川氏はTwitterで『Good Job』とつぶやいた。自由社の教科書を落とすことが彼の念願だったのだろう。こういう人がいて、さらに教科書調査官の中には毛沢東を研究し崇拝している人がいる。そういう赤い官庁である文科省と正面から戦っていかないと日本に未来はないと思っている。」と、歴史教科書検定の不当性を訴えられました。
最後に塾長は、「本日も素晴らしい講師の方々のお話を聴くことができた。いろんな観点からの話を10分ずつ聴く方が、話が凝縮されて分かりやすく効果的である。」と述べて会を締め括りました。