第57回 勝兵塾月例会レポート

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

 第57回勝兵塾月例会が、2月18日(木)にアパグループ東京本社会議室で開催されました。
 冒頭のアパグループ代表元谷外志雄塾長によるご挨拶では、「茂木弘道氏らの『日米戦争を起こしたのは誰か』を一気に読んで素晴らしいと思い、来月号のエッセイではこの著書について書いている。本書はフーバー回顧録を論じたもので、先の大戦についてこれまでは日米関係ばかりが議論されてきたが、ヨーロッパにおけるチャーチルの誤りやルーズベルトの参戦の背景にニューディール政策の失敗や軍産複合体の存在があったことなどを指摘している。こうした戦略の誤りは後になってわかる。本当はどうなのかをわかってもらうために私は勝兵塾を開催している。」と、勝兵塾の講師特待生でもある茂木弘道氏らの新著を紹介され、「安倍政権を支え、憲法改正を実現させたい。今年はおそらく衆参同時期選挙になり、改憲勢力で三分の二を確保することができるだろう。国会議員の三分の二の賛成で改憲を発議し、国民投票になるが、全国には九条の会が多数あり、国民投票で過半数を取るのは難しい。世論を高めて真っ当な国に向かって進めるよう働き掛けをしていきたい。」と、憲法改正への意気込みを示されました。

バングラディシュ大使館代理大使 ジバン・マジュムダ様

バングラディシュ大使館代理大使 ジバン・マジュムダ様

 バングラディシュ大使館代理大使のジバン・マジュムダ様は、バングラディシュの豊かな自然や世界遺産を紹介した映像視聴の後、「バングラディシュは東南アジアの中心にあり、インドや中国など巨大な国に囲まれている。元々インドの一部として190年間イギリスの植民地下にあり、その後パキスタンの一部となり、1971年3月26日に9ヶ月の戦闘で300万人の犠牲者を出して独立することができた。日本は世界で初めてバングラディシュを承認してくれたので、大変感謝している。世界で最も人口密度の高い国で、日本の4割程度の国土に1億6千万人の人口を有している。独立時の一人当たりの所得は500ドル以下で、産業は農業だけだったが、過去7年間で6%の経済成長を遂げ、一人当たりの所得は1、316ドルにまで増えた。輸出は繊維産業に依存しており、RMG(既製服)が輸出の80%を占め、世界第2位である。日本とバングラディシュとの関係は、7世紀に仏教を日本に紹介したことで始まり、736年にはボティセーナ(Bodhisena)が日本に来て仏教を広め、752年には東大寺で大仏の開眼式を行った。タケダさんという日本人が1912年にベンガルの女性と結婚して、両国の友好ムードが盛り上がった。第二次世界大戦では日本に味方した。ベンガルの英雄チャンドラ・ボースは、日本陸軍に入って一緒にシンガポールやマレーシアでイギリス軍と戦った。東京裁判では11名の判事が選ばれたが、唯一ベンガル出身のパール判事が日本人を全員無罪とする文書を提出した。1973年にはシェイク・ムジブル初代大統領が日本を訪問し、1975年には日本の皇太子殿下、皇太子妃がバングラディシュを訪れるなど緊密な関係ができ、2014年には安倍総理がバングラディシュを訪問している。JICAからこれまで派遣された1、200名のボランティアの活躍で発展の基礎を作ることができた。日系企業が200社進出しており、車の80%はトヨタ、ドラマ「おしん」は大変人気がある。国旗も日本の国旗を参考に作られた。これから益々両国の関係が深まっていく。」と、政治的文化的に深い繋がりを持つ日本とバングラディシュの関係を紹介されました。

ハーバード大学Igノーベル賞受賞教授 サー中松義郎博士

ハーバード大学Igノーベル賞受賞教授 サー中松義郎博士

ハーバード大学Igノーベル賞受賞教授のサー中松義郎博士から、バングラディシュの経済発展と日の丸に似た国旗についての質問があり、マジュムダ様は、「次の産業のターゲットとして、日本をモデルに政府がインフラ整備を進めている。そのため、海外からの投資を求めている。国旗については、初代大統領が独立後、『バングラディシュの一番の友人は日本だ』として、日本の国旗を参考にした。緑は豊かな大地を表し、赤は独立のために犠牲になった300万人の血を表している。」と答えられました。

衆議院議員・自由民主党一億総活躍推進本部長 逢沢一郎様

衆議院議員・自由民主党一億総活躍推進本部長 逢沢一郎様

 衆議院議員・自由民主党一億総活躍推進本部長の逢沢一郎様は、「TPPに注目が集まっているのは、太平洋に面している国々は経済規模が大きく、成長しており、世界を牽引しているからだ。しかしこの地域もいずれ成熟し、伸びは鈍化する。次の主役はインドやバングラディシュ、アフリカを含めた環インド洋の国々だろう。アフリカは貧困や感染症、テロ、気候変動などの問題はあるが、将来の可能性が見えてきており、希望の大陸になりうる。インドは人口で中国を抜くのは近い将来確実であり、国内の問題もモディ首相を中心に対処を進めている。日本は地球規模で国益を考えていかなければならない。日本の下水道やメガソーラー、蓄電器などの技術を、戦略性を持ちながら移していく。さらに一億総活躍社会の実現に向けてしっかり取り組んでいく。人口が減少し、特に働いて納税する人が相対的に少なくなっていくなかで、GDPを500兆円から600兆円へ増やしていく。特許庁長官によれば、日本の特許出願はボリュームも質も堅調に推移しているという。エレクトロニクス関連では苦戦しているが、素材や化学の分野で強さを発揮している。GDPそのものよりも一人当たりの所得をどう高めていくかが重要である。また、私は硫黄島問題懇話会会長を務めている。当時の世界情勢を理解し、正しい歴史に向き合っていかなければならない。選挙制度の見直しについて、衆議院の定数を10削減、一票の格差を2倍以内にする。憲法改正について、自民党が野党時代に草案を作った。第96条の憲法改正のための発議要件は厳しいので現行の三分の二以上から過半数にする。その上で緊急事態対応や二院制、選挙制度から手を付けるのが良いと考えている。」と、様々な政策課題に対する取り組みについて語られました。

インドセンター代表 ヴィバウ・カント・ウパデアーエ様

インドセンター代表 ヴィバウ・カント・ウパデアーエ様

 インドセンター代表のヴィバウ・カント・ウパデアーエ様は、「これからはインドの時代だとよく言われる。日印関係は400年前から始まっている。これまで先進国が使ってきた富を創る発展モデルは、人の規模と資源の量のバランスが取れていたから可能だった。今までのモデルは世界の5%の人々が世界中の資源を使って創ったものである。しかし、現在は資源が有限で人の規模が無限である。こうした古い発展モデルから新しいモデルに切り換えなければならない。これからインドのように人口の多い国がアメリカと同じモデルで発展しようとすれば資源が足りなくなる。日印関係の基には代替モデルを世界に提供しようという試みがある。インドの発展スケールは10段階のうちまだ1段階目である。新しい発展モデルとはEES、すなわちエネルギー効率(Energy Efficiency)、環境に対する責任(Environmental Responsibility)、持続性(Sustainability)である。世界で最も点数が高いのが日本である。スマートシティーや交通システムを作るうえでエネルギーを無駄にしないという考え方を日本から学ばなければならない。日本は資源がないから国造りからEESの考え方に依っていた。日本が世界で一番学ぶべきモデルであると考えたので、私は1996年にインドセンターを設立し、日印で一緒に何ができるかを考え、新しい発展モデルを世界に提供しようと取り組んできた。日本の国造りと同様に、日本の会社もエネルギー効率を考えている。アパホテルはエネルギーコストを考え、様々な工夫をして、CO2排出量を三分の一にしている。世界のホテルが学ぶべきモデルである。世界の戦争はエネルギー問題から生まれている。インドはエネルギーのほとんどを輸入している。原子力では日本やアメリカと協定を結んでいる。現在ではソーラーにも力を入れている。日印グローバルパートナーシップはバングラディシュやパキスタン、ネパール、アセアン、中近東などを含めた社会経済を考えなければならない。現在デリーとムンバイを結ぶ大動脈の建設が進められているが、産業を創るときは生産量だけでなくエネルギー効率を考えなければならない。この大動脈ができれば、三分の一のエネルギーで同じ量の生産ができる。日印が2国間の関係だけでなく人類のための関係となり、世界に新しいモデルを発信していく。11月には両国の官民が集まり、日印、そしてアジアのロードマップを作ろうとしている。」と、日本の発展モデルの素晴らしさを指摘され、日印関係発展のための取り組みと世界規模での貢献について語られました。

衆議院議員 田畑裕明様

衆議院議員 田畑裕明様

 衆議院議員の田畑裕明様は、「2月は外交分野で様々なことが起こった。7日には北朝鮮がミサイルを発射し、日本も経済制裁を打ち出した。一方で拉致の解決に向けてストックホルム合意の履行を求め、対話と圧力の双方を使い分けていく。16日にはジュネーブで開かれた国連欧州本部の女子差別撤廃委員会で、昨年末の日韓外相会談での合意を前提に、従軍慰安婦の強制連行を否定する政府見解を示した。これは小さな一歩である。また、22日は竹島の日であるが、これも新しいステージに入るのではないかと期待している。外国人の雇用について昨年は91万人で急増している。政府は高度人材を積極的に受け入れようとしている。国別では中国が32万人、ベトナムが11万人、フィリピンが10万人と急増している。東京や大阪など大都市が中心だが、地方でも増えている。海外に親日派、知日派を増やしていくために国民目線の交流も重要である。技能実習制度は対象を72業種から拡大し、就労期間を延ばしていく。更にビザを緩和し、スムーズな交流を図っていく。」と、外交分野における課題と政府の取り組みを紹介されました。

新しい歴史教科書をつくる会理事 杉原誠四郎様

新しい歴史教科書をつくる会理事 杉原誠四郎様

 新しい歴史教科書をつくる会理事の杉原誠四郎様は、「『日本人の原爆投下論はこのままでよいのか』を先日出版した。2月16日に行われた女子差別撤廃委員会で外務省が慰安婦強制連行説は吉田清治の嘘に基づいた朝日新聞の捏造記事がきっかけだったと発言した。本来であれば捏造記事がわかったときに政府見解を出すべきであった。慰安婦問題の主犯は朝日新聞であるが、外務省の責任も重い。それでも政府見解を示したことは画期的なことであり、『つくる会』がきっかけをつくり、自民党が外務省の背中を押したことで実現した。その他にも外務省の問題は看過できない。敗戦により外務省は潰されそうになったが、アメリカの番犬になって生き残った。自虐史観について、本来国民が70年間も騙され続ける訳がないのだが、外務省がその維持装置になってきたのである。昨年7月の女子差別撤廃委員会で『慰安婦の真実』国民運動の杉田水脈氏らが『慰安婦の強制連行はなく、性奴隷ではなかった』と発言したことで、今回日本政府の見解を聞こうということになった。原爆投下について、『日本は本土決戦をしたら東西で分断され、もっと犠牲者を出すことになったのがなぜわからないのか』と言われるが、すでに勝敗が決まっていたにも拘らずアメリカが無条件降伏にこだわったことで戦争を最後まで続けざるを得なくなったのである。真珠湾の騙まし討ちは外務省のミスであったが、ルーズベルトはこれを最大限に利用した。結果として、無条件降伏にこだわったルーズベルトを国民が支持した。このミスを犯した外務省の責任者は、二人とも後に外務次官にまで出世した。原爆50周年まで外務省は調査資料を公表せず、謝罪もしなかった。32年間間違った情報が日本を苦しめてきたが、外務省は何も言わなかった。教育と同じように内閣の下に外交審議会を設けて外務省の改革に取り組むべきである。」と、歴史問題における外務省の責任を厳しく指摘されました。

衆衆議院議員・予算委員会常任理事 原田義昭様

衆議院議員・予算委員会常任理事 原田義昭様

 衆議院議員・予算委員会常任理事の原田義昭様は、「毎月この勝兵塾で学ぶことを楽しみにしている。憲法改正は参院選でも大きなテーマになる予定である。憲法第九条第二項で戦力の保持を禁止しているが、どう見ても自衛隊は戦力じゃないかという意見がある。自衛隊は文理解釈ではどう見ても憲法違反だと言えるが、最近論調は変わり、自衛隊は憲法違反だという人はほとんどいない。むしろ、第二項自体が問題で、あまりにも時代に合わないと考える人が増えている。第二項の書き方が大きな議論になるだろう。」と、憲法改正と自衛隊の問題について語られました。

在日本ルーマニア商工会議所会頭 酒生文弥様

在日本ルーマニア商工会議所会頭 酒生文弥様

 在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥様は、「私は松下政経塾の一期生で同期には本日講師をされた逢沢代議士や野田元総理らがいる。私は政治の道には進まず、人類の平和のためにルーマニアと関わっている。ルーマニアはとても親日的な国である。第二次世界大戦ではドイツの前線基地となり、ソ連と戦って国民の約1割が殺されたが、王室を追放して社会主義国家になった。チャウシェスクはソ連とは一線を画し、中国や北朝鮮との関係を強めた。今でも北朝鮮に大使館を置いている。現大統領のクラウス・ヨハニスは人口の1%にも満たないドイツ系ルーマニア人で若者の支持が強い。ヨハニス大統領は腐敗を撲滅し、ドイツのメルケル首相と連携を強めてルーマニアを発展させている。ルーマニアには日本語を学ぶ人も多く、ルーマニアを東欧から中東にかけての親日の要として、交流を強めていきたい。」と、日本とルーマニアの架け橋としての活動を紹介されました。

 

 最後に塾長より、「イギリスとフランスがポーランドとルーマニアの独立を保証したことで先の大戦が始まった。イギリス、フランスがドイツに宣戦布告をしたのはルーズベルトが参戦する裏付けがあったからである。ルーズベルトはアメリカがヨーロッパの戦争に参戦したいという理由だけでなく、ニューディール政策の失敗に対して戦争特需で挽回しようと軍産複合体と結託していたという背景もあった。そこで日本を経済封鎖で追い込み、徴兵制やレンドリース法を定めて戦争準備を進めたのである。軍産複合体はその後も朝鮮戦争やベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争など、公共事業のように戦争を行ってきた。日本が降伏の意思を示していたのに原爆の開発まで戦争を引き伸ばし、原爆を投下したのは、単に戦後世界覇権を握るためだけでなく、アメリカの支援により軍事モンスターとなったソ連との第三次世界大戦を冷戦に押し込めた。真珠湾攻撃の通告の遅れはあったが、アメリカは暗号を解読してすでにわかっており、新鋭艦や空母を事前に離脱させ、アリゾナを囮にして定員を超える兵を押し込め、日本の攻撃の6分後に誘爆し、真珠湾の犠牲者の半数がアリゾナの乗員となる不自然な状況であった。これは『メイン号』を思い出させる。当時アメリカ国民の85%は戦争に反対していた。チャーチルやルーズベルトが高い評価を受けてきたのは、勝者が歴史を創るからである。最近ではケント・ギルバート氏やロバート・エルドリッヂ氏、トニー・マラーノ氏など多くの外国人が歴史の真実を明らかにしている。アメリカが原爆投下を正当化するため日本を悪い国にしておかなければならないという原爆投下の呪縛を解き、捏造された歴史観を正していかなければならない。この勝兵塾を、様々な方々の話を聞くことで真実を知る場としていきたい。」と、第二次世界大戦の真実を紹介され、今後の取り組みへの意気込みを示されて会を締め括られました。