第107回 勝兵塾月例会レポート

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

 勝兵塾第107回月例会が、5月21日(木)にアパグループ東京本社で開催されました。
冒頭のアパグループ元谷外志雄代表による塾長挨拶では、「本日新潟で東日本最大のホテル&マンションプロジェクトとなるアパホテル&リゾート〈新潟駅前大通〉とザ・プレミア〈新潟駅 万代〉の起工式を開催した。メディアは新型コロナで大騒ぎだが、他と比べてどうなのかを考えるべきだ。新型コロナによる死者は768人だが、毎年インフルエンザで3、000人が亡くなり、肺炎で10万人が亡くなっている。世界では新型コロナが白人国家を直撃したような様相を呈していて、新型コロナによる死亡者数上位5カ国がアメリカ、イギリス、イタリア、フランス、スペインと全て白人国家である。これを見ると、白人国家を直撃するようなウイルスを人工的に作ったのではないかと思いたくなる。緊急事態宣言を延長すればいいという議論については、延長することによる経済へのマイナスの影響の方が大きいのではないかと思う。経済を止めることによって、資金が回らなくなって自殺する人が増えてくるのではないか。統計学的確率計算に基づき、一部ではなく全体を見た対策を採っていく必要がある。新型コロナ一色の報道がずっと続いており、コロナで1人死ねば大ニュースになるが、インフルエンザで死んでもニュースにならない。非常事態宣言の下で麻雀やパチンコをしていたというような些末なことをメディアは糾弾して話題を作っているが、もっと大局観を持ち国益の観点から重大ニュースを報道するべきである。本当のことを知れば皆保守になる。私は本当のことを知ってもらう機会を提供するために勝兵塾を開催している。誰かの話を暗記するのではなく、多くの講師の意見を聴きながら自分で考えてほしい。そのために、勝兵塾では講演時間を1人10分程度で区切り、何人もの講師の方々から、様々な観点からの話をしてもらっている。」と、大局観に立った報道や政策決定の必要性を訴えました。

麗澤大学大学院・モラロジー研究所教授の髙橋史朗様

麗澤大学大学院・モラロジー研究所教授 髙橋史朗様

 麗澤大学大学院・モラロジー研究所教授の髙橋史朗様は、「モラロジー研究所のホームページ『道徳サロン』ページに連載していて、最近4回は教科書問題について書いている。『国語教科書が危ない!』と危機を感じた教師から、新しい小学校5年生国語教科書の新教材として、ハングル表記の韓国語と中国語と日本語の表記が加わり、『千年の釘にいどむ』という日本の和釘と職人さんを扱った教材や日本の伝統工芸や職人をテーマにした本をはじめ、日本の良さを自然と学べるいい教材が、ごっそり削除された、という話があった。韓国語や中国語は多面的、多角的考察という名の下に増えてきた。『自由社の教科書が一発不合格となったこととこのことと関係があるのではないか、邪な力が働いたのではないか。』とこの教師は言っており、私は邪な力とは何かと考えた。つくる会の歴史教科書が一発不合格となったことは広く知られているが、それを大きく扱ったのがお配りした産経新聞の記事である。小林秀雄は『歴史と文学』という一文の中で、『明治維新という歴史は涙なくして読むことができない歴史だ。ところが通史を教えているため、もっと歴史の急所に焦点を定めて、日本の伝統の機微に触れさせて、歴史に対する情操の陶冶というものをしないと歴史への愛情は育たない』と言った。実は今、道徳も国語も社会科も共通した問題が起きている。それは、学習指導要領が改訂されたことで、学力構造が転換されたことによるものである。平成29年に学習指導要領が改訂されたが、平成20年の学習指導要領では、歴史の目標は『我が国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる』とされていたのが、改訂後は、目標一が『諸資料から歴史に関する様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする』とされ、『多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される我が国の歴史に対する愛情、国民としての自覚…』が目標の最後になっている。教育界では全ての科目で『アクティブ・ラーニング』という言葉が取り入れられた。読売新聞の記事によれば、『どの教科の教科書にも、討論や発表を中心としたアクティブ・ラーニングが導入された。そこにはグループワークやディベートが盛り込まれて話し合いのコツといったスキルまで詳しく載っている。』という。かつてゆとり教育では、基礎を3割減らして応用を3割増やして問題になった。これは幹を減らして枝を増やそうというようなものである。これと同じことが今起こっている。ゆとり教育時代と比べて学習量は1・3倍に増えたが、頭でわかるという認知的共感ばかりを育てようとしている。しかし、頭でわかることと心でわかることは違う。今の教育改革では、頭でわかり、考え、議論することを重視しているが、心で感じなければ、考え、議論することはできない。根本が抜けているから、国語教科書も歴史教科書も狂い始めてきている。アメリカの心理学者のジョナサン・ハイトによれば、人間は象であり、象は情動的な直観である。象によって人間は動いているが、象の上に乗っている象使いはとても小さく、これが論理的思考である。教育はその論理的思考にばかり働き掛けているが、人間は情動的直観によって動いている。そこが原動力なのに、ただ頭で考えてわかろうとするという間違った方向に教育界が動いている。脳科学から道徳教育と家庭教育を新しく打ち立てようと、新しい研究会を始める。脳科学によれば、脳には頭でわかるメンタライジングと、心でわかるミラーニューロンの2つの機能があるが、教育はメンタライジングに傾いてきた。これを根本的に変えなければ教育は再生できない。歴史がわかるということは、単なる事実を学ぶだけでなく、歴史に対する愛情や共感、先人たちの思い、国柱の精神、伝統の機微、感動する心が必要であるが、これらが歴史教育から削除されている。かつて教科書検定では修正意見と改善意見があったが、今は細かいことまで検定官の言う通りにしないと一発不合格になる。自由社の意見に対する文科省の反論書を見ても全く対話がない。そのどこに、『考え、議論する』ものがあるのか。文科省は言っていることとやっていることが全く違う。教科書検定は今の通説に基づいて実施されているが、その通説を作っているのが『高大連携歴史教育研究会』で、その会長の油井大三郎氏が最近出した本が『未完の占領改革』であり、副会長の君島和彦氏は『竹島は韓国の領土だ』と言った人物である。」と、現在の教育問題の根底にある学習指導要領の問題を明らかにされました。
在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥様は、「私の子供の頃には戦争を扱った漫画や映画がたくさんあったが、そうしたものを教育に活用すればよいのではないか。」と質問され、髙橋様は、「鎌倉で澤さんという方が膨大な文書を保管されている。また私がいたメリーランド大学にはプランゲ・コレクションという、また膨大な史料が保管されているが、それを十分に分析評価した人がまだいない。これらを整理、分析するために史料を共同研究しなければならないと思っている。」と答えられました。

史実を世界に発信する会会長代行の茂木弘道様

史実を世界に発信する会会長代行 茂木弘道様

 史実を世界に発信する会会長代行の茂木弘道様は、「髙橋史朗先生の著書『WGIPと歴史戦』の英訳を進めており、順次Webサイトやニュースレターに掲載している。髙橋先生はプランゲ文書をはじめ、アメリカの主要な大学やナショナルアーカイブで資料を集めて研究してこられたその成果が表れている。」と、髙橋様の著作について補足されました。

国際歴史論戦研究所(iRICH)所長で大阪市立大学名誉教授・経済学博士の山下英次様

国際歴史論戦研究所(iRICH)所長で大阪市立大学名誉教授・経済学博士 山下英次様

 国際歴史論戦研究所(iRICH)所長で大阪市立大学名誉教授・経済学博士の山下英次様は、「昨年10月に韓国の極左系弁護士団体の『民弁』がいわゆる『徴用工』問題について、国連の特別手続を利用して陳情(申請)を行った。国連の特別報告者などがこの陳情を取り上げると、2016年に言論の自由に関する国連特別報告者のデービッド・ケイのように、資格保有者が日本に訪問調査にやってきて、事実に反する内容でかつ日本を貶めるような報告書が作成される可能性が高い。韓国側の動きに対抗するため、iRICHは昨年7月に国連内で徴用工に関するサイド・イベントを開催した。しかし、民弁は7組ある資格保有者に対して陳情を行っており、7組の資格保有者の誰かが興味を持てば、対日審査が開始される。これに対抗するためには、ユネスコでの経験が参考になる。2016年5月に『慰安婦=性奴隷』説を唱える中韓を中心とする八カ国十四団体による『慰安婦の声』の登録申請に対して、『慰安婦=公娼』説を唱える日米四団体が『慰安婦と日本軍の規律に関する文書』をカウンター申請した。その結果、ユネスコは登録判断を保留し、二つの申請団体の対話を促すことに決定した。したがって、日本政府と、新日本製鐵住金と三菱重工業の二社は、韓国政府と韓国司法を加害者とし、日本の二企業を被害者として、国連の特別手続を利用してカウンター申請をするべきである。しかし、民間企業はなかなか動こうとせず、外務省に働きかけても外務省も動かない。そこで政治家に訴えかけていきたい。」と、歴史戦において反論の必要性を訴えられました。

東京国際大学学長・慶応義塾大学名誉教授の塩澤修平様

東京国際大学学長・慶応義塾大学名誉教授 塩澤修平様

朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊様

朝鮮近現代史研究所所長 松木國俊様

 東京国際大学学長・慶応義塾大学名誉教授の塩澤修平様は山下様に、「日本の立場を世界に向けてどのように伝えていけばよいか?」と質問され、山下様は、「韓国による日本統治不法論は言語道断であり、これが罷り通るのであれば、世界秩序は根底から崩壊する。そもそも韓国は『日本が植民地支配をした。』と言っているが、ヨーロッパの植民地とは全く別物である。ヨーロッパは植民地から徹底的に搾取するだけで教育をしなかったが、日本は朝鮮に帝国大学を創って高等教育まで施した。朝鮮は日本の植民地ではなく、国家連合、合邦あるいはコンフェデレーションと呼ぶのが適切な表現である。したがって、日本は即座に否定すべきである。さらに、植民地支配が違法だとすると、第一次世界大戦の直前には世界の84%が欧米諸国による植民地が占めていたのであり、世界秩序が根底から崩壊することになる。GHQによる6年8カ月の占領で歴史をひっくり返された。終戦直後の日本人はひどい敗戦をしたとは思っても、悪いことをしたとは思っていなかった。だから鳩山一郎は、米国の原爆使用は国際法違反だと批判したのである。また、アメリカは日本人だけでなく、世界を騙したのであり、iRICHではこうしたことを世界に向けて発信している。」と答えられました。さらに朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊様は、「今韓国では慰安婦支援団体をめぐって内紛が起こっている。これまで挺対協を率いてきた尹美香(ユン・ミヒャン)が実は寄附金をすべて着服したのではないかと社会問題になり、捜査も入っている。そのことを山下先生と一緒に国連に訴えようとしている。詐欺団体に騙された国連の判断によって日本が貶められたのだから、国連に対しても反省を求めていく。」と補足されました。

ニュース証券株式会社取締役の長友哲郎様

ニュース証券株式会社取締役 長友哲郎様

 ニュース証券株式会社取締役の長友哲郎様は「2月3日にダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に到着した時は、新型コロナウイルスが世界を脅かす疫病になるとは思っていなかった。自分の命も顧みず、必死に戦っている医療従事者や、軽症者を受け入れているアパホテルのスタッフの姿こそが真のおもてなしだと思う。コロナの影響で、飲食や建設業の下請けをはじめ、広範囲の人々が先の見えない中で、厳しい環境に置かれている。私は証券マンで、私ができることは、資産を守ることである。相場には上り坂、下り坂のほかに、『まさか』があるが、下り坂や『まさか』の場面でいかに資産を守るかが重要で、自粛で働けなくても資産に働いてもらうことが大切である。コロナはいつまでも続くわけではない。極論すれば、一度罹れば抗体ができ、人間には自然治癒力がある。病は気からと言うように、強い覚悟と意志があれば、克服することが出来る。ファーストペンギンという言葉がある。ペンギンの集団の中から、魚を求めて最初に飛び込む1羽のペンギンのことから、リスクを恐れず挑戦するベンチャーのことをそう呼ぶ。投資の世界も同じである。リモートワークや在宅勤務は一時的なものではなく、新しいスタイルになるかもしれない。これまで働き方改革は時間の改革であったが、改革の対象は時間から空間に変わっていき、生活も大きく変わるだろう。しかし、人との出会いや絆、日本人の和の心や情は不変であり、後世に残していきたいものである。私は10年前に事業に失敗したが、6年前に今の証券会社の会長に声を掛けてもらったお陰で救われた。事業に失敗して、人の温かさや仕事の喜びを感じるようになった。挫折を味わうと違った景色が見えてくる。社会に復帰した初日、行くところがある、仕事があることの喜びを強く感じた。コロナで仕事を失った方も多くいると思うが、あなたたちを待っている人がいると言うことを伝えたい。仕事とは人間形成である。」と、過去の経験からコロナ禍で苦しんでいる人々へエールを送られました。

 勝兵塾事務局長の諸橋茂一様は、「安倍総理は、憲法は何としても改正しなければならないと言っているが、維新の会の議員によれば、第96条に基づく改正をするのに、憲法審査会では与野党とも真剣味が足りないという。憲法は何のためにあるのか? 国家の最大責務は、領海、領空、領土を守り、天皇を中心とした国家体制を守り、併せて、国民の生命、安全、財産を守ることであり、憲法もそのためになければならない。憲法を守るために国があるわけではない。現憲法第96条では、憲法改正のために、衆参両院のそれぞれ三分の二以上の賛同を得て発議し、国民投票で過半数の賛同を得る必要がある。このままでは発議すらできずに安倍総理の任期が終わってしまう。そこで衆参両院の過半数の賛同で現憲法無効決議をして、同様に新憲法(案)を承認するという形をとれば、現憲法を改正できる可能性が高いと考える。現憲法は大日本帝国憲法を改正したという体裁を取っているが、現憲法は3つの点で大日本帝国憲法第73条の改正条項に違反している。第73条には、改正には天皇陛下の勅語が必要としているが、GHQが英文で作成した現憲法案を突き付けたのが昭和21年2月13日で、憲法改正の勅語が発表されたのはその翌月の3月6日と順序が前後している。さらに、第73条の改正条項は全文を入れ替えることも、改正案が英文で作成されることも全く想定されていなかったことは明らかである。また、ハーグ陸戦法規第43条において、『戦勝国が敗戦国を統治する際には、特別の支障がない限り、その国の法律に従って統治しなくてはならない。』となっていた。さらに大日本帝国憲法第75条には、『憲法及び皇室典範は摂政を置くの間、これを変更することを得ず』とも規定されていた。これは摂政を立てている間は天皇の主体性が十分保持できない可能性があり、そのような状況下では憲法を改正することはできないとされていたのである。GHQによって占領統治されていた間は、天皇の主体性がないと言わざるを得ない状況だったのであり、そのような状況下では、第75条の法の精神を満たしていなかったと言える。このような様々な事由を以って、民主主義の原則に則り、衆参両院の過半数の賛同で現行憲法の無効決議をするべきである。国を守るためには守るための力が必要である。しかし現憲法第9条には守るべき力を持ってはいけない、つまり国を守ってはいけないと書いてある。真の独立国家にふさわしい憲法にしていくべきである。」と、憲法改正に関して持論を披露されました。

国際文化人のラトナ・サリ・デヴィ・スカルノ様

国際文化人 ラトナ・サリ・デヴィ・スカルノ様

 国際文化人のラトナ・サリ・デヴィ・スカルノ様は、「新型コロナのことで、各国の元首や国民がそれぞれ違ったことをしていて、大変興味深く見ている。また、中国とアメリカがまるで第三次世界大戦が起こるかのような状況であり、エチオピア出身のWHOの事務局長を代えようという動きがある。日本については、政府を非難することは簡単だが、初めてのことなので政府も戸惑いがあったのだろう。ただ、コロナによる死者はインフルエンザより少なく、また他の国と比べても少ないので、早く経済活動を再開させるべきである。緊急事態宣言を解除して早く日常を取り戻さないと、大変なことになる。第二波を恐れる声もあるが、まだ来るのかもわからないし、コロナより世界大恐慌の方が恐ろしい。」と、コロナを巡る世界の動きについてコメントをされました。

 

 最後に塾長は、「報道では感染者数や死者がどんどん増えているという話ばかりであるが、昨日の日経新聞の夕刊に、韓国の保健福祉省によれば新型コロナウイルス感染症から回復して陰性と診断された後、再び陽性となった患者について、周囲への感染力が認められなかった、という記事があった。これが本当であれば、そんなに心配する必要はないのではないかと思う。本日も素晴らしい話ばかりで大変良かった。」と挨拶し、会を締め括りました。