勝兵塾第97回月例会が、6月20日(木)にアパグループ東京本社で開催されました。
冒頭のアパグループ元谷外志雄代表による塾長挨拶では、「6月3日に明治記念館で開催した『出版記念並びにバースデーの会』には、これまで以上に多くの、しかも錚々たる顔触れの方々にお越し頂いた。これも、これまで勝兵塾を開催してきて多くの方々に講演して頂いたことによるものだろう。また、事業の方も絶好調である。創業から考えれば、これまでバブルの崩壊など経済的な大変動をチャンスに変えてきた。先日掲載した産経新聞の見開き広告では、設計・建築中のホテルが55棟と書いたが、その後2ケ所オープンしたので現在は53棟であり、このうち30階建以上が4棟、20階建て以上が6棟となっている。同時にこれだけのホテルを設計・建築しているホテル会社は他にはないだろう。この低金利時代に、全力で事業資産を拡大している。そのため、多くの方々にパーティーにお越しいただいた。この後、その時の模様の動画を視聴していただく。」と、先日盛大に行われた「本当の日本の歴史『理論近現代史学Ⅴ』出版記念並びに代表バースデーの会」について触れられました。その後、パーティーの模様と、当時行われた小川榮太郎様による特別講演を視聴しました。
第1回アパ日本再興大賞受賞者で評論家の江崎道朗様は、「少子化の問題に対しては、政府自民党は平成に入ってから一貫して取り組んできた。政府は予算を投じて取り組んできたが、少子化を止めることができなかった。第二次安倍政権の誕生前に一部の議員の方々と話したときに出てきたのは、『行政がいくら子育て支援をしても、そもそもデフレで若者がまともに就職できず、給料が上がらない状況では、結婚に踏み切れない。』ということである。一方、結婚した人達の出生率は全く変わっていない。つまり、少子化になったのは結婚する人が減ったからである。今や男性の5人に1人、女性の10人に1人は結婚しない。しかも、結婚しない理由のほとんどは経済的理由である。だから第二次安倍政権は、アベノミクスを掲げ、デフレから脱却して給料が上がり、皆が就職して、ちゃんと暮らせるよう経済を立て直し、そこから少子化を改善しようというコンセプトを打ち立てて、経済再生に取り組んできた。そのお蔭で、関東を中心に出生率が劇的に上がってきた。ただし、これは関東など大都市だけのことである。このように経済成長こそが、最大の少子化対策である。」「本日配布された、『米中対立は「エンドレス」に続く』と題した元谷代表のエッセイに関して、自由主義対全体主義という構図は正しいと思うが、この戦いを続けることができるかどうかは、自由主義陣営が経済発展を遂げられるかどうかにかかっている。なぜ米中貿易戦争をアメリカが有利に運んでいるか? それは、アメリカは毎年中国から52兆円分の物を買っているのに対して、中国はアメリカから12兆円しか買っていないからである。つまり、アメリカの購買力の方が圧倒的に大きいから、アメリカに物を買ってもらいたい他の国々もアメリカに従うのである。もし、アメリカ経済が落ち込み、中国経済が強くなっていけば、他の国々は、中国に物を買ってもらいたいので、中国に尻尾を振るようになる。だからトランプ政権は経済対策を徹底的に行い、所得税や法人税を下げ、アメリカの企業を立て直して、アメリカの購買力を高めてきた。今はアメリカのマーケットの方が圧倒的に強いので、皆がトランプ政権の全体主義との戦いを支持している。香港の問題も同じである。香港の民主化運動が勝ったのは、デモを弾圧した結果、香港のマーケット関係者が香港から脱出し始めたからである。あのままいけば香港は金融センターとしての機能が麻痺し、そうなると中国の金融はガタガタになるため、香港市民のデモを受け入れざるを得なかったのである。つまり国際政治を動かす一番の力は経済である。トランプ政権の幕僚たちと話していると、DIMEということをいつも言う。つまり外交(Diplomacy)、インテリジェンス(Intelligence)、軍事(Military)、経済(Economy)の4つを組み合わせながら国際社会の中でどうやって勝ち抜くのかを考えている。安倍政権は、外交においては、『インド太平洋戦略』と称して、アジア、インド、太平洋諸国に対して、一緒になって自由と繁栄のアジアを創ろうと呼び掛けている。経済においても、一帯一路に対抗して、インド太平洋で様々な経済支援をしながら、中国に屈しないようにしようと呼び掛けている。インテリジェンスについて、トランプ政権はCIAや軍の情報部が中心になってやっているが、日本も連携して、国家安全保障局を創った。外務省だけでなく、経済産業省、防衛省、自衛隊等の総力を挙げて、外交、インテリジェンスで世界と渡り合える体制を作り、強かな外交をしている。足りないのが経済である。第二次安倍政権になって、ようやく経済が上向きになってきたにも拘わらず、今回増税に踏み切れば、日本経済はまた落ち込むだろう。そうなると、また若者の就職率が悪化し、少子化が進む。経済と外交、軍事、インテリジェンスの4つを見据えながら強かに勝ち抜いていくためにも、歴史を学ぶ必要がある。我が国が、幕末に欧米列強の植民地になろうとしていた危機の中で明治維新が起こり、その中で明治政府は『富国強兵』を掲げた。国を豊かにしてその上で兵を強くするという、富国強兵策に基づいて日本は独立を守ってきたのである。インテリジェンスの問題に関しても、以前議員会館で行った勉強会で、そこに出席していたCIAの元幹部に対して、『日本が今後対外情報機関を作るためにどうすればよいか?』と質問したところ、『アメリカが参考にしている事例は戦前の日本のF機関だ。アメリカもこの事例を学んでいるので、日本もまず自国の歴史を学ぶことをお勧めしたい。』と言われた。不幸なことに、F機関の話をされたときに反応した日本人がほとんどいなかった。先の大戦において、藤原岩市少佐が率いるF機関が、マレーシアとシンガポールでインド兵を集めてインド独立義勇軍を作り、日本軍と一緒になってインパール作戦を戦い、その戦いがのちのインド独立のきっかけになった。そういう歴史を欧米は死に物狂いで学んでいるが、日本だけが、過去は全て悪かったと葬り去っている。日本は本当に底力のある国で、過去の歴史において成功例をたくさん作ってきたのである。今、世界中が歴史の見直しを始めている。ソ連が崩壊した後、ヨーロッパやアジアで、社会主義体制がいかに恐ろしいかということを振り返り、その歴史の見直しと自由主義に向けた議論をしている。昨年、アパ日本再興大賞という素晴らしい賞を頂いたので、その賞金で世界各地を訪れ、歴史の見直しの動きを現地で調べながら、根幹が歪んでいる日本の議論を正していきたいと考えている。」と、安倍政権での少子化への取り組みと、国際社会を読み解く4つの視点から、現在のわが国の置かれている状況を解説されました。
元文部科学大臣・衆議院議員の馳浩様は、「今日、習近平が国家主席として14年振りに北朝鮮を訪れたことの政治的な意味をどう考えればよいか?」と質問され、江崎様は、「今の習近平政権は非常に困っている。いまアジア太平洋エリアで最も危険なのは台湾である。習近平政権が台湾に対して何らかの諜報工作を仕掛けてくる可能性がある。ここで北朝鮮に暴発されると北朝鮮の対応をせざるを得なくなる。中国軍としては北朝鮮と台湾の両方に対応することができない。だから北朝鮮を抑えようとしている。北朝鮮を抑えることで、この後台湾や南シナ海に対して何かアクションを起こすのではないかと心配している。朝鮮半島と台湾有事は連動しているので、習近平政権が北朝鮮に近付けば近付くほど、台湾は危なくなると思っている。香港のデモとの関係で言えば、習近平は経済のことはわかっていないのではないかと感じる。今回のデモで、香港の多くの金融関係者が香港から逃げた。香港の国際金融センターとしての機能を麻痺させて一番損をするのは習近平政権である。それなのに、なぜ香港であのようなことをやったのか。別の見方をすれば、今回のデモは習近平潰しではないかという説もある。いろんな見方があるが、軍事の面から見ると、台湾のことを最も心配している。」と答えられました。
東京国際大学学長・慶應義塾大学名誉教授の塩澤修平様は、「外交と比べて経済が弱いという話があったが、経済をいかに強くするかという点について、税制以外でどこに着目したらよいか?」と質問され、江崎様は、「私は足立康史先生と動画番組をやっているが、足立先生は、まず、『インフレターゲット2%で絶対にデフレ脱却をするぞ』と内外に明示することだろうと言っている。そして日本の景気を良くするために、今後減税も財政支出も規制緩和もあらゆる政策を動員して、全力で取り組む姿勢を示すことで、マーケットの人たちに投資をするインセンティブを与えることをするべきである。トランプ政権はそのために法人税、所得税の減税、児童手当を含めた税額控除をやって、子供2人の4人家庭で、可処分所得が40万円~50万円増えた。消費者に直接お金を渡すことをさらにやっていく。増税の見送りがだめでも、秋に大規模な補正予算を組んでもらいたい。アベノミクスで所得が上がってきたにも拘わらず、働き方改革で残業ができなくなり、可処分所得が減っている。そのため、消費税増税前の駆け込み需要が全く出てこない。それだけ個人消費が弱くなっているので、梃入れする必要がある。安倍政権はすでに考えていると思うが、それを大きく打ち出してもらいたい。」と答えられました。
環境大臣衆議院議員の原田義昭様は、「先日軽井沢でG20環境大臣会議が行われ、議長役を務めた。環境政策に関して先進国と途上国の立場は違う。先進国は十分発展したのでそろそろ環境問題を考えようとしても、途上国はこれから発展しようとしているため、環境で規制を受けることに反発する。両グループを一つの共通の認識の下でまとめていかなければいけない。地球温暖化について、問題点には皆気付いているが、CO2の排出を抑制しようとすると一致しない。トランプ大統領はパリ協定離脱を決定したが、EUはこれを推進しようとして両者の調整は難航したが、環境政策についてようやく世界で共通の認識を持つことができた。」と、環境政策における国際的枠組み作りへの取り組みについて話されました。
山元学校学長の山元雅信様は、「最近ではプラスチックを分解する技術もあるが、そのよう技術の採用についてどのように考えているか?」と質問され、原田様は、「プラスチックは人間が発明した素晴らしい素材であり、使い方の問題である。ごみを減らすために3R、すなわち再利用(Reuse)、削減(Reduce)、リサイクル(Recycle)に取り組んでいく。さらに海中で分解する生分解性プラスチックなどの採用も進めていく。」と答えられました。
東京近代史研究所所長の落合道夫様は、「令和新時代が到来し、危機感はあるが、憲法改正方式での再軍備は難しい。そこで発想を転換して、再軍備の新たな提案をしたい。まず日本国防の歴史を振り返ると、戦前は独立自衛正規軍体制で軍事的抑止力を持っていた。しかし1945年8月に敗戦し、武装解除が行われ、その後憲法九条で国防が禁止された。その後冷戦が始まり、1950年に朝鮮戦争が勃発すると、アメリカのダレス長官が吉田茂に再軍備を要請したが、吉田茂はこれを拒否した。そこで警察予備隊が設置されたが、あくまで警察なので、武器は持っていても軍事抑止力はない。1952年に日本が独立すると、講和をしても日本は軍備を持っていなかったため、日米安保条約を締結した。しかし抑止力はない。現在の状況は、国民が誘拐され、領土が侵犯されているが、日米安保には限界があり、国民は国旗を掲揚しようともしない。危機が到来し、再軍備を要望する声はあるが、憲法改正の議論では迅速性がないばかりか、憲法に自衛隊を明記しても軍事抑止力はない。1945年8月、ソ連が日ソ中立条約を破って侵犯してきた奉天は地獄であった。邦人婦女子の死者24万人、男子70万人は奴隷となった。ソ連の軍律では、占領後3日間は強盗、強姦、殺人は黙認されていた。国防は憲法に優先するものである。憲法第九条の前提は世界も九条を採用することである。それが実現するまでの間九条を棚上げにして特例法で自衛すればよい。これには国民投票は不要で、次の議会の過半数で可決すればよい。その特例法で、軍法、軍法会議、憲兵隊、愛国心を自衛隊に付加すれば、世界の正規軍と同じになり、軍事抑止力が発生する。そうすれば、拉致や領土問題が解決する。民族の生存を妨害する占領憲法に、国防再建で穴を開け、国民の意識変革で憲法全体の改正に進める。米国は日本の再軍備を歓迎するだろう。『瓶の蓋論』は、米国の中共に対する詭弁である。先日安倍総理とトランプ大統領は横須賀で演説を行ったが、その日は海軍記念日である。日本は満州の悲劇を忘れてはいけない。『憲法棚上げなんてできる訳ないだろう』とよく言われるが、マキャベリは『政治は結果で評価される。結果が良ければ方法は正当化されてきた』と言っている。」と、憲法棚上げ論に基づく再軍備という新たな視点を披露されました。
最後に塾長は、「今一番追い込まれているのは習近平である。これまでアメリカがこれほど本腰を入れて中国と対決したことはなかった。トランプ大統領が厳しく対応していることで、中国国内での習近平の立場が危うくなってきたのではないか。二期十年の国家主席の任期を撤廃したことで、国内の反発を招いている。私の知人の話では、これまで9度の暗殺未遂事件があったそうである。天安門事件から30周年を迎えて中国政府は大変な警戒態勢を敷いた中、香港で大規模なデモが起こった。その事を一番心配しているのが習近平で、北朝鮮を訪問しているのも、彼なりの方策だろう。中国が追い込まれているときこそ、さらに追い込んでいくべく、日本はもっと力をつけなければならないが、このチャンスにも拘わらず、このところ憲法改正の機運が薄れてきているように感じる。メディアの無視戦略に騙されているのではないか。これまで、現憲法の改正条項に基づく改正ができるだけの議席を確保できたことがあっただろうか。今そのチャンスがあるにもかかわらず、それを逃そうとしている。これを逃せば、この先いつ改憲できるときが来るのか。参院選で相当勝利しないと、三分の二以上を維持できないが、確保できる確信があってやっているのか不安がある。このままいけば、日本が下手をすれば中国日本自治区に成り下がる恐れがある。先ほど話に出た満州での悲惨な話も、多くの人々にほとんど知られていない。この日本を取り巻く状況を判断すれば、三発目の原爆を落とされる可能性が最も高いのが日本ではないか。なぜなら、日本に落としてもどこからも反撃されないからである。中国もロシアも北朝鮮も核を持っており、危機感を持っている。」と、警鐘を鳴らして会を締め括られました。