第95回 勝兵塾月例会レポート

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

 勝兵塾第95回月例会が、4月18日(木)にアパホテルプライド〈国会議事堂前〉で開催されました。
 冒頭のアパグループ元谷外志雄代表による塾長挨拶では、「勝兵塾月例会は、東京では第95回を迎え、大阪、金沢を合わせると通算255回目となる。アパグループは5月10日の創業記念日には産経新聞に見開き広告を出す。そこには現在設計・建築中のホテルが55棟12、929室掲載されている。また、5月2日には日経新聞に15段広告を出す。そこには現在設計・建築中の30階以上のホテルが4棟、20階以上のホテルが6棟掲載されている。これらのホテルは後1、2年ですべて完成するので、その時のアパは、現在とはまた違ったものになる。勝兵塾を255回開催してきて世の中が変わってきたと感じるが、それ以上のスピードで日本を取り巻く環境が厳しさを増している。参議院はこの夏に選挙が行われるが、そこでは改憲勢力で三分の二の議席の確保は難しいだろう。憲法改正のために残された時間は少ない。参院選までに改憲の発議をして、その後の6カ月間で、国民投票で過半数の賛成を得られるよう、一大国民運動を展開していく必要がある。日本は今、危機が迫った状況であるにもかかわらず、ほとんどの人は無関心である。」と、日本に迫る危機に警鐘を鳴らしました。

エルサルバドル共和国大使館特命全権大使のマルタ・リディア・セラヤンディア・シスネロス様

エルサルバドル共和国大使館特命全権大使 マルタ・リディア・セラヤンディア・シスネロス様

 
 エルサルバドル共和国大使館特命全権大使のマルタ・リディア・セラヤンディア・シスネロス様は、「エルサルバドルはとても親日的な国である。中央アメリカに位置し、中米の日本と呼ばれることもある。国民性が日本と似ていて、とても勤勉であり、資源は少なく、国土が狭くて人口密度が高い。さらに火山が多いため、地震も多い。エルサルバドルという国名は、『救世主』という意味である。スペインが来る前は、中央アメリカにメソアメリカという一つの文化圏があったが、スペインによる侵略を受けて分裂した。エルサルバドルは火山国で自然災害が多いため、日本との間で5つの柱から成る協力関係がある。『減災』、『防災』などの言葉は、日本語がそのまま浸透している。エルサルバドルでは国旗を大切にしている。どこの学校でも国歌を歌い、一番成績の良い子が国旗を持って行進する。国旗の白は平和、青は藍染めを表し、中央に5つの国旗と5つの火山が描かれている。スペインからの独立時は、5つの国から成る連邦国家だった。吉田茂の『回想十年』の中に、サンフランシスコ講和会議でエルサルバドルとセイロンが日本に対してとても友好的な演説をしたと書かれている。平和条約の原案の中に『連合国は日本人の対外資産を没収することができる』とあり、これがエルサルバドルの憲法に反するため反対したのである。私は2011年から全権大使として日本で仕事をしている。東日本大震災のとき、大部分の大使は日本から出たが、私は友達が困っているときに逃げるのはどうかと考えた。また、震災の1カ月後には郡山市の避難所を訪れ、その数日後には石巻を訪れた。エルサルバドルにも地震が多く、日本との連帯感を示したかった。エルサルバドルの世界遺産として、マヤ文明のホヤ・デ・セレン遺跡がある。また首都のサン・サルバドルは大変美しい都市である。国土は日本の四国くらいであり、短期間でいろいろな場所を見て回ることができる。」と、エルサルバドルの紹介と日本との強い結びつきについて話されました。

 
 塾生からの「トランプ大統領が壁を造って移民を防ごうとしているが、そのことでどのような影響があるか。」という質問に対して、マルタ大使は、「内戦の影響で、特に80年代にはエルサルバドルからアメリカを目指す人々が多かったが、政府も止めようとしてきた。現在はホンジュラス、グアテマラと3カ国で協力している。さらに、アメリカ政府とも協力して移民をなくす方法を模索している。仕事や教育を与え、国民が国を出ざるを得ない状況を生まないようにしようという取り組みが始まっている。」と答えられました。

慶應義塾大学名誉教授・東京国際大学学長の塩澤修平様

慶應義塾大学名誉教授・東京国際大学学長 塩澤修平様

 さらに、慶應義塾大学名誉教授・東京国際大学学長の塩澤修平様は、「サンフランシスコ講和会議でエルサルバドルが日本に友好的な演説をしたという話があったが、その背景にどのようなことがあったのか?」と質問され、マルタ大使は、「平和条約の原案の中に、エルサルバドル憲法に従って認められない点が2つあった。当時の大使が、大国に反対することになるので大統領の許可を求めたところ、大統領はわが国の憲法が大事だということから許可をした。エルサルバドルは小さな国だが、正しいことは堂々と言わなければならない。日本は立派な国なのだから、正しいことはもっと堂々と通すように主張すべきである。」と答えられました。

麗澤大学大学院特任教授の高橋史朗様

麗澤大学大学院特任教授 高橋史朗様

 麗澤大学大学院特任教授の高橋史朗様は、「ユネスコの世界記憶遺産に所謂南京虐殺に関する文書が登録された。南京虐殺登録文書の問題点としては、ラーベ日記の原文にはない文章が偽造されて、証拠資料として提示されていることや、映像資料はマギーフィルムだけで、南京の戦犯法廷で、傍聴人の前で上映された戦線記録映画『南京』が収録されていないこと、南京占領後に日本軍の許可の下で行われた戦争の人的・物的被害の調査報告書であるスマイス報告書の本体が提出されていないことなどがある。歴史認識問題研究会で問題点をまとめて、報告書を日本語と英語で発信していきたい。台湾で調査したときに、『阿マの家 平和と女性人権館』で元慰安婦の貯金通帳を発見した。展示されていた通帳には、1944年12月7日に取引が開始され、まず5、000円が入金され、翌年1月には利息が4円65銭付き、8、400円が入金、同月31日に10、600円が入金され、残高が24、004円65銭と記載されていた。台湾銀行の通帳に入金されたということは、戦地からの送金がきちんと届いていたのである。韓国人元慰安婦の文玉珠さんは26、145円の貯金をしていたことが明らかになっているが、文さんは『1、000円あれば家が一軒買えた』と証言している。慰安婦映画『主戦場』はとんでもない陰謀論で構成されている。監督は日系米国人の出崎幹根氏で、彼は多くの日本人を憤慨させた動画を配信してきたユーチューバーである。その中にある、慶應義塾大学名誉教授で憲法学者の小林節氏に対するインタビューでは、慰安婦問題と全く関係のない日本会議に言及し、その黒幕として、加瀬英明氏を諸悪の根源と非難している。この映画の問題点は、保守と革新の双方を取り上げ、中立性、公平性を装いながら、不公平で偏った欺瞞的な構成になっていることである。例えば、『従軍慰安婦』否定派の意見に対して肯定派の専門家が反駁する形で一方的に構成されており、肯定派の学者の代表格である吉見義明氏と林博史氏が登場する一方で、否定派の代表格である秦郁彦氏や西岡力氏には取材していない。慰安婦『20万人』『強制連行』『性奴隷』説が虚構にすぎないことは、米国マグロウヒル社の高校教科書記述に対する訂正勧告でも明らかになっている。しかし、戸塚悦朗弁護士は、『騙したのも強制のうちだ』と強制性を広義にすり替え、渡辺美奈WAM事務局長は、『1億円もらったとしても、性奴隷は性奴隷だ』などと『奴隷』の定義を拡大解釈している。こうしたものが日本語、英語、韓国語で出されている。これらに対してきちっと反論していかなければならない。」と、所謂南京事件や従軍慰安婦強制連行に関する誤った主張への反論を紹介されました。

東京国際大学教授の福井雄三様

東京国際大学教授 福井雄三様

 東京国際大学教授の福井雄三様は、司馬遼太郎の『故郷忘じがたく候』は、豊臣秀吉の朝鮮出兵で、捕虜として薩摩藩に連れてこられた李氏朝鮮の陶工たちの話である。日本と朝鮮半島の歴史の狭間で翻弄された、名もなき人々の運命に思いを寄せたエッセイとしては最高傑作ではあるが、かなりの部分は司馬遼太郎による創作である。私は『坂の上の雲の隠された歴史の真実』という本で司馬史観を批判したが、この本の中で、『故郷忘じがたく候』を取り上げて論じたところ、ある読者から手紙を頂いた。その手紙は、『『故郷忘じがたく候』に登場する沈寿官という人物は大嘘つきである。さもなければ司馬遼太郎がでたらめなことを書いている。私は沈寿官と同じ旧制鹿児島二中の卒業生だが、我が母校は九州でも屈指の文武両道の進学校であり、嘘をつくな、喧嘩で負けるな、弱いものをいじめるな、をモットーにした学校で、卒業生には社会で名を成した立派な方を数多く輩出している。その我が母校において、毎年入学式で、上級生による朝鮮人に対する集団暴行が、恒例行事として行われることなど前代未聞で聞いたことがない。そんなことが起こっていたら大問題になっていたはずだ。司馬遼太郎がなぜこのようなでたらめなことを書いたのか理解できない。同窓会では司馬遼太郎を名誉棄損で訴えたいという怒りの声が沸き起こっている。ぜひこのことを世間に訴えてほしい。』というものであった。沈寿官は鹿児島二中時代に喧嘩三昧で明け暮れていた番長クラスのボスだったという。よくある子供の喧嘩を、まるで恒例行事のように、しかも日本と朝鮮半島の民族問題にまでテーマを膨らませてしまっている。私の経験に照らしても、こんなあからさまな朝鮮人差別があったとは考えられない。自虐史観教育を受け、日本が朝鮮を侵略して、彼らに地獄の苦しみを味あわせてきたという罪の意識が刷り込まれている読者が、いかにも喜びそうな話である。かつて吉田清治というペテン師のでっち上げた従軍慰安婦の話が一世を風靡して、いとも易々と日本国民の心に入り込んでしまった。自虐史観が日本社会に蔓延しているからである。司馬遼太郎という作家は、こういう話を書けば世間が喜ぶだろうというツボを心得ていて、読者の心を自由自在に操ることができた。一般の読者は注意して彼の本を読まないと、まるで講談を聞いているような心地良さで、いとも易々と誘導される。」と、司馬史観の問題点を指摘されました。

参議院議員の和田政宗様

参議院議員 和田政宗様

 参議院議員の和田政宗様は、「第二回米朝首脳会談の決裂によって、東アジア情勢は緊迫化したと考えている。アメリカは北朝鮮の核ミサイルが自国に届くことは絶対に阻止しようとする。追い込まれた北朝鮮はいずれ日本に対してミサイルを発射するかもしれない。5~6発同時に発射されても、現在の迎撃システムで撃ち落とすことは可能であるが、100発同時だと、一部は日本の国土に着弾するおそれがある。日本人は自衛隊に、相手国がミサイルを発射できないよう相手国の基地を叩いてほしいと思うだろうが、今の憲法のままでは、左派は攻撃に反対し、攻撃の根拠は何かと迫ってくる。私は『日本国憲法「改定」』という本を出版したが、その際に全世界の憲法を調べてみたところ、いざというときに国民を守る術を書いていない国が4カ国だけあった。その国と人口は、ニウエ(1、624人)、クック諸島(17、000人)、モナコ(36、000人)と日本である。つまり人口4万人以上で一定の国土を持つ国は、日本を除いて、全ていざというときには国民を守る術を憲法で規定しているのである。日本国憲法がこうなったのは、先人があまりにも強く戦ったからである。米軍幹部と会食をした際に、どこの国と戦いたくないかと聞くと、日本と答える人が必ず何人かはいる。これは大東亜戦争で日本がいかに強かったかを物語っている。占領当時、GHQは二度と日本に軍備を持たせず、日本の国防は米軍が担うことにした。しかし、朝鮮戦争で一転して、警察予備隊、保安隊、そして自衛隊ができた。できたときに憲法に自衛隊のことを書けば良かったのであるが、過去に衆議院で改憲勢力が三分の二以上を占めたことはあったが、参議院では三分の二以上を占めたことがなかったのでできなかったのである。だから衆参両院で改憲勢力が三分の二以上を占めている今、改憲をやらなければならないのであるが、党内の議論もスローになっている。そうなると、次の参院選で絶対三分の二以上を獲らなければならない。」「最近宮内庁の職員は皇室の歴史を勉強していないのではないかと感じる。例えば、今上天皇の御陵は小さく造られることになるが、これは今上天皇が、『国民の負担もあるから御陵は小さくて良い。』とおっしゃられたことを当時の羽毛田長官がそのまま受け取ったからである。歴史を知っていたら、皇室の歴史と伝統を守って御陵は立派なものを造らなければならないのである。さらに、大嘗祭について秋篠宮殿下が、『身の丈にあった儀式にすることが本来の姿』とおっしゃられたが、これも宮内庁はそのまま聞いてはいけないのである。しかし、一月末に閣議決定された予算で大嘗祭の予算が6億円削減されていた。大嘗祭は宮中祭祀の中でも最も重要なものの一つである。大嘗宮は総木造にして、身を清めて臨むものであるが、これを一部が鉄骨でできたプレハブにしては意味がなくなってしまう。宮内庁から『これを前例としない』というコメントを出させる必要がある。皇室をなくそうとする勢力が、皇室の伝統を部分的に破壊しようとしてくる。この部分についても国会議員としてしっかり戦っていきたい。」と、日本国憲法の問題と皇室の危機について話されました。

環境大臣・衆議院議員の原田義昭様

環境大臣・衆議院議員 原田義昭様

 環境大臣・衆議院議員の原田義昭様は、「和田さんは、自民党の圧倒的多数の議員の思いを代弁してくれた。先日日中閣僚会議が開催され、日本から6名の大臣が参加した。私は環境大臣として、パリ条約や海洋プラスチックごみなどの環境政策について、李幹傑環境部長と意見交換を行い、技術開発などで力を合わせていこうということになった。その中で私は、世界で900万トンあるプラスチックごみのうち、40%が中国から出ている点を指摘して、まず中国が自国の問題を解決すべきだと言ったところ、中国がそのような指摘をされたのは初めてのようであった。言うべきことは言っていかなければならない。」とコメントをされました。

脚本演出家の藤本一朗様

脚本演出家 藤本一朗様

 脚本演出家の藤本一朗様は、「『特攻の母』と呼ばれた鳥濱トメさんを描いた舞台『MOTHER』の脚本・演出をしている。2002年から特攻隊を題材にした舞台を手掛けてきたが、この20年弱の間に現場の感覚が変わってきたのを感じる。平成が終わり、令和が始まるが、ここがターニングポイントである。令和生まれにとって昭和は、昭和生まれの私達にとっての明治のようなものである。つまり、大東亜戦争が歴史になってしまい、あまり興味を持たなくなってしまう。これからあの戦争をどのように残し、伝えていくかを考えていく必要がある。本当は何があったかではなく、どう伝わったのかで歴史はできる。だからこそ正確なことを伝え、やってもいないことは認めてはいけない。17年前に特攻隊の舞台をやったときは、実際に戦った方々がたくさんいて、話を聞くことができたが、その機会がだんだん減り、また日本男児が変わってしまった。平成生まれの若者に兵隊の役をやらせても弱々しく、昭和の空気が伝わらない。最近は女優の方が強くなり、演技のダメ出しをすると泣くのは男ばかりである。昭和のあの時代の空気がもうなくなっているが、舞台を通じて歴史を肌感覚で伝えていきたい。」と、舞台を通じて歴史を伝えていく思いを語られました。

在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥様

在日本ルーマニア商工会議所会頭 酒生文弥様

在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥様は、「3カ月間ルーマニアのトランシルベニアに行っていた。ルーマニアの読み方は、本来は『ローマニア』が正しく、古代ローマに最も近いのがルーマニアである。ルーマニアにはホーエンツォレルン家という王室があり、日本の皇室と深い交流がある。日本ルーマニア議連は当初谷垣禎一先生に会長をお願いしていたが、現在は逢沢一郎先生になって頂いている。」と、ルーマニアを紹介されました。

 

 最後に塾長は、「2002年5月に赤坂見附に本社を移したが、創業の時からいずれ東京へと考えていた。東京の中心が皇居であり、その近くの赤坂に本社を構えた。このホテルの近くにあるアパ赤坂ゲイトウェイビルには、日本で最も大きい『誇』という文字を掲げている。またこのアパホテルプライド〈国会議事堂前〉は、かつて有力政治家が事務所を構えたTBRビルの跡地に建っている。今の日本に最も足りないのが誇りである。このホテルの目の前には議員会館があり、近くに国会議事堂や首相官邸がある。誇りを感じることで民族としての力が発揮できる。憲法を何とかしなければならないが、残された時間は少ない。参院選までに改正の発議ができなければ将来的にも難しいだろう。総力を挙げて発議し、一大国民運動を展開して、国民投票で過半数の賛成を獲らなければならない。安倍総理の言うような自衛隊の明記だけでは独立国家にふさわしい憲法とは言えない。私は二段階改憲論を主張している。つまり一回目の改憲では自衛隊の明記や緊急事態法制の追加などに留め、二回目の改憲で独立国家にふさわしい憲法にしていくのである。そのためには安倍総理の2021年までの任期を、自民党の党則を変更して,総裁任期を四期まで認めて、2024年までとするべきである。トランプ大統領も再選がほぼ確実であり、任期は2024年までとなる。その間に二回の改憲を実現していかなければならない。」と、誇りの必要性と二段階改憲論を説き会を締め括りました。