第55回 勝兵塾月例会レポート

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

 第55回勝兵塾月例会が、12月17日(木)にアパグループ東京本社会議室で開催されました。
 冒頭のアパグループ代表元谷外志雄塾長による開会のご挨拶では、「第8回となる懸賞論文の表彰式が12月8日に行われた。パーティーには24名の国会議員と27カ国34名の大使館関係者を含む1,300名の方々に参加して頂き、会場はもう入りきれないくらいであった。」と先日行われた第8回「真の近現代史観」懸賞論文の表彰式とパーティーの模様を紹介され、その動画を視聴しました。パーティーの冒頭のご挨拶で塾長は、受賞論文集の出版のタイミングにあわせて書き下ろした新著『逆境こそ光輝ある機会なり』の紹介をされた後、この一年を振り返り、年初の日本最大2、400室のホテルとなる横浜ベイタワーの用地取得や、11月12日にマンハッタンで行った海外展開に関する記者発表と、その翌日に海外第一号ホテルとして開業したAPA HOTEL WOODBRIDGE、パーティー当日に落札が正式に通知された200億円プロジェクトとなる都心一等地取得について触れられ、「これまでのどの一年よりこの一年は頑張った。ACCや勝兵塾をはじめ、同志とも言える方々のお陰で素晴らしい一年を過ごせた。来年は私がゼロから創り上げた最強のホテルモデルを引っ提げて世界へ打って出る。」と、来年への抱負を語られました。さらに、最優秀藤誠志賞を受賞されたケント・ギルバート氏による特別講演や外交評論家の加瀬英明様によるご祝辞を始め、素晴らしいご来賓の方々にご挨拶を頂き、これまで以上に盛大なパーティーとなりました。

外交評論家 加瀬英明様

外交評論家 加瀬英明様

 外交評論家の加瀬英明様は、「自衛隊は戦争の際には全く役に立たない。世界で軍隊の精強度を測る尺度は平均年齢であるが、自衛隊員の平均年齢が35歳であるのに対して、韓国、台湾は23歳、中国は22歳である。自衛隊の幹部は平均42歳、中隊長には48歳くらいでなれる。つまり自衛隊は中年がほとんどであり、これではとても戦闘に耐えることができない。集団的自衛権を巡って国会は紛糾した。何とかしてアメリカを繋ぎ留めなければならなかったが、安保法制は複雑怪奇でよくわからなかった。なぜなら、普通の国では軍隊がしてはいけないことが定められるが、日本では自衛隊がして良いこととその条件が定められているからである。これでは刻々と状況が変わる中で、何をして良いのかわからないため、拡大解釈して戦わざるを得ない。しかも集団的自衛権の議論はされたが、個別的自衛権は全く変わっていない。現在は、海上保安庁の巡視船が中国から攻撃を受けても、北朝鮮が日本に上陸してきても、自衛隊は防衛出動命令が発せられなければ何もできない。防衛出動命令を発するためには、まず閣議を開き、衆参両院の決議が必要である。日本では軍に対する国民の関心があまりにも低い。戦時中は小学生でも軍の階級を知っていたが、今の日本人はほとんど知らないだろう。安保法制だけでなく、個別的自衛権をどうするのか、自衛隊は本当に役に立つのか、関心を持ってもらいたい。」と、自衛隊の現状の問題点を指摘され、国民がもっと関心を持つよう呼びかけられました。

第29代航空幕僚長 田母神俊雄様

第29代航空幕僚長 田母神俊雄様

 加瀬様の話を受けて、第29代航空幕僚長の田母神俊雄様は、「自衛隊は他国と比べれば高齢だが、腕力はそこそこあると思う。問題はその腕力を使ってよいと判断する脳がダメであることだ。政治家は不測の事態が起きてはいけないと言うが、そう言った時点で抑止力は低下する。本来は命を懸けて守ると言わなければならない。竹島が韓国に支配されたのは、政府が自衛隊に竹島に行くなと言ったからである。私が自衛隊に入隊した当時は、竹島での自衛隊の活動に何の支障もなかった。政府が行くなと言ったのは、韓国と不測の事態を起こすなという理由であったが、拉致と同じで、この事実を隠されている。国が戦うという意志を固めなければ自衛隊は動けない。日本が戦える体制になれば、どこの国も戦いたいとは思わない。尖閣も今のままなら、いずれ盗られてしまうだろう。」と、自衛隊が動くためには政府の国を守る強い意思が必要であることを訴えられました。

衆議院議員・自由民主党大阪府支部連合会会長 中山泰秀様

衆議院議員・自由民主党大阪府支部連合会会長 中山泰秀様

 衆議院議員・自由民主党大阪府支部連合会会長の中山泰秀様は、「1月20日から25日間、ヨルダンの現地対策本部でISILの対応に当たっていた。現在は宇宙空間やサイバー空間などへ戦場領域がどんどん広がっている。もし隣の国と戦争になれば、日本の反撃を阻止するためにサイバー攻撃を仕掛けてくるだろう。今年は戦後70年の節目の年である。70年前の戦争は国家対国家の軍事力による戦争であったが、今はたった一人のテロリストが技術を持って国と対峙することができる時代である。ISILはテロリズムがハイテクと出会ったものであり、インターネット技術を使って残酷な映像を流し、恐怖をお茶の間に送り届けた。防衛省にも警察にもサイバーテロ対策の部隊はあるが、全体として日本国民を守る組織になっていない。また政府の会合では重要施設を守ることばかり強調するが、重要施設よりもむしろセキュリティの弱いところが攻撃される。さらに、ウイルスはコンピューターを刺激するだけでなく、人間の脳をも刺激する。テロのフランチャイズ化が進んでいる。テロの起こる3、4日前にはISILがラジオ放送で洗脳を行い、それを聞いた者がテロ行為を起こしている。いろんな領域を超えて戦いが起こっており、平和安全法制がなぜ必要か、今何が足りないのか、考えていただきたい。」と、戦争の質の変化とテロの広がりについて警鐘を鳴らされました。

衆議院議員・予算委員会常任理事 原田義昭様

衆議院議員・予算委員会常任理事 原田義昭様

 塾生よりISILの背景について質問が出され、衆議院議員・予算委員会常任理事の原田義昭様より、「ISILの正体は誰にもわからないのではないか。ただ、先進国の若者をも惹きつけている点について考えなければならない。貧富の格差、世代間の格差をなくしていくことが必要である。ISILが石油だけであれだけの体制ができるとは考えにくい。武力だけでは収められないので政治的解決も必要であろう。」と、先進国におけるISILの問題の背景について見解を示されました。

シリア・アラブ共和国大使館臨時代理大使 ワリフ・ハラビ様

シリア・アラブ共和国大使館臨時代理大使 ワリフ・ハラビ様

 シリア・アラブ共和国大使館臨時代理大使のワリフ・ハラビ様は、「シリアは5年以上国際テロの被害にあっており、内戦が続いている。なぜ内戦が拡大しているか考えて欲しい。それは欧米諸国のダブルスタンダードにある。欧米諸国はテロを撲滅すると言いながら、テロリストを支援していることで問題を長引かせているのである。また、シリアでは毎日多くの人々がテロで死んでいるが全く報道されず、パリのテロについては大きく報道されて世界の注目を集めた。もっと常に起きていることに目を向けて欲しい。また、間違った政策も問題である。テロとの戦いを地上戦なしに、現地の政府との協力なしにできるのだろうか? ロシア政府はシリア政府に協力しているが、アメリカはテロとの戦いを表明しているがシリア政府には協力せず、『穏健派』と呼ばれる反政府派に協力している。しかし武装している集団を『穏健派』と呼べるのか? テロリスト集団はサウジアラビアやカタール、トルコから政治的、金銭的支援を受けている。さらに、イスラエルの存在も忘れてはならない。シリアはイスラエルにゴランを支配されている。イスラエルは新たな国境を作りかえる政策を進めており、ユダヤ教徒の国を創りたいと考えている。そのためパレスチナ人を迫害している。シリア国内のテロリストは、負傷するとイスラエルで手当てを受けて、またシリアに戻ってくる。西側諸国からの経済制裁によって、例えば病院がテロリストに襲撃されても必要物資がなくて再建できず、一般の国民が大きな被害を被っている。シリア政府としてはテロとの戦いに対して政治的解決を常に探っている。シリア国民同士の話合いで解決すべきであると考えている。アメリカはテロを許さないと表明しているが、やり方を誤ると逆効果である。アメリカによる空爆は何の効果もなく、ISILはテリトリーを拡大した。一方、ロシアとの共同作戦によってISILから領土を取り戻している。日本は2016年から国連安保理で非常任理事国になることが決まっており、日本的手法で国際社会に平和をもたらすことを期待している。」と、シリアの置かれている厳しい状況と現在行われているテロとの戦いの問題点について、シリアの立場から訴えられました。

武道教育研究家 全日本武心道連合会道主 風間建様

武道教育研究家 全日本武心道連合会道主 風間建様

 武道教育研究家で全日本武心道連合会道主の風間建様は、「私は17歳から武道を志してきた。若者の人間教育が仕事であり、これが一番大事だと思っている。評論家はたくさんいるが、命を懸けて実行する人が少ない。『理論はもう良い、まず実行せよ』と言いたい。また、多くの若者が病んでいる。喧嘩をしても平和は来ない。まず許すこと、そしてなぜ喧嘩をしたのか理論的に明らかにすることが必要である。」「『士農工商』は人間の格を表している。『士』たる者は覚悟を持って腹を切らなければならない。したがって、人間として人を騙してはいけない。信頼するから人々は税金を預けるのである。『農』は泥だらけになって国民の生命を保持するのために働き、人を責めず神を敬い、常に自己反省をする人々である。『工』は職人であり、頑固で融通は利かないが、しっかり物を作ってきた。『商』が一番下なのは二言があるからである。」「言うべきことを言ったらやるべきことをやる。そのためにまず個の自己確立が必要である。すなわち自分が責任の取れる人間になることである。『武道』のうち、『武』とは戦いながら自分を磨くことであり、『道』とは『人道』という意味である。社会のためにどう生きるか、何のために生きるのか考えて欲しい。」と、武道を通じた人間教育と生き方について語られました。

参議院議員 井原巧様

参議院議員 井原巧様

 参議院議員の井原巧様は、「国会議員になる前には四国中央市の市長をやっていた。四国中央市は紙の生産量では日本一であり、レイテ沖海戦で神風特攻隊の敷島隊の隊長であった関行男の墓があって、毎年10月25日には慰霊祭が行われている。合併して初めの市長であり、当時は『三位一体の改革』が行われていて大変苦しいときだったので、代表の『逆境こそ光輝ある機会なり』という言葉に大変共感を覚える。ただ、どうにもならない時だったからこそ、皆が力を合わせて改革ができた。さらに『勝兵塾』の由来でもある孫子の兵法『勝兵は先ず勝ちて、而る後に戦を求む』という言葉も、私が昔から好きな言葉である。改革においてモチベーションが大切であったが、モチベーションを上げるために、まず誇りを持てるような取り組みをした。4つの目標を掲げ、皆はまずは新しい施設を求めようとするが、ハードの質感だけでなく、その中のソフトの質感を求めた。さらに自治の質感を求めるため、政策形成の過程を明らかにして、住民や職員が納得できるようにした。そして心の質感を求め、それが故郷への愛情や熱意に繋がったのである。その結果、行政改革ランキングでは全国一位になった。国防についても、いかに国民に誇りを持たせるようにするかが重要である。敗れたときにこそ学ぶべきものが多いのであり、日本は大東亜戦争に負けてそこから学ぶべきものがたくさんあったはずであったが、GHQが入ってきて学ぶことができなかった。インドを訪れた際、チェンナイで水害に遭った。そのときインド人から、『中国車は止まるがトヨタは止まらない』と言われた。ベトナムでは、『ホンダは止まらない』と言われた。これが日本に対する信頼感である。日本人が国に誇りを持てる教育をしていかなればならない。」と、市長としての経験から、誇りを持つことの大切さを訴えられました。

米国太平洋戦争博物館日本事務局 岸田芳郎様

米国太平洋戦争博物館日本事務局 岸田芳郎様

 米国太平洋戦争博物館日本事務局の岸田芳郎様は、「アメリカにはナショナルアーカイブ、すなわち国立公文書館という歴史を記録する施設があり、その中にIWGという組織がある。このIWGは各省庁を跨いで調査をすることができる権限を持っている。サンフランシスコに抗日博物館がある。そこでは中国や韓国にとって都合の良い資料を集めて保存しようとしている。クリントン元大統領が在任中に、こうした運動をしているグループが大統領に接して、『日本はけしからん』ということになった。そこで2000年に制定されたのが“The Japanese Imperial Government Disclosure Act of 2000”である。これは大日本帝国の戦争犯罪を暴けという内容のもので、太平洋戦争博物館の館長は、この法律があるからアメリカ国内は日本の主張するようには動けないと言っていた。深刻なのは、IWGが調査をした結果、報告書では、ナチスほどは日本の戦争犯罪の証拠は出てこないとなっていたが、それを受けて、もっと調べろということになったことだ。IWGのメンバーには館長と親しいコロンビア大学の歴史学者がいるので、館長からは、彼に直訴して証言すれば公文書として記録に残ると言われた。アメリカ国内で日本人子女が受けているイジメも深刻である。アメリカの歴史教育では、IWGの報告書に基づいた教科書が使われている。学校ではそういう歴史観で教えられ、『慰安婦問題』は”sex slave”とされている。日本人学校が土日に開かれているが、そこでは日本の間違った内容の教科書が使われており、子供達は正しい歴史を学ぶ場がない。親が教えるしかないが、親から正しい歴史について聞いても、日本政府が『慰安婦問題』や『南京大虐殺』を公に否定していない。だから日本人学校の中には、孤立感を深めて苦しんでいる子供たちがたくさんいる。私は彼らに対して、『一人じゃない。同じ正しい歴史観を持っている日本人がたくさんいる』ということを伝えたい。」と、アメリカで日本の正しい歴史を伝えるための活動とアメリカでいじめを受けている日本人子女の苦悩について語られ、支援を呼び掛けられました。

 

 最後に塾長より、「この先、かつてのような国家と国家の熱戦が起こるというよりは、情報謀略戦が繰り広げられるだろう。情報戦においては、嘘か本当かではなく、たくさん主張した方が勝つ。日本がGDP600兆円を目指すのであれば、その1%を防衛予算と考えれば、情報戦にもっと予算をつぎ込んで情報戦に勝たなければならない。私は情報省を創って3,000億円の予算と、000人の人員で、情報戦に対して即座に反撃できる体制を整えるべきだと主張してきた。3,000億円の予算などは大した金額ではない。個人で戦うのではなく、国を挙げて戦い、打ち勝たなければならない。中国も日本が目覚め始めてきたことで、あらゆる情報戦を仕掛けてきている。もし懸賞論文制度を創り、田母神論文が最優秀賞となって騒動にならなかったら、今頃日本は中国に飲み込まれていただろう。しかし、日本人も何が本当かに気付き始めた。その結果、安倍総理が再登板することができ、支持率が上がってきたため、中国は焦りから歴史戦を仕掛けてきている。GDPが増える分を情報戦に予算をつぎ込み、歴史戦に勝たなければならない。」と、国を挙げての歴史戦を呼び掛けて会を締め括られました。