勝兵塾第85回月例会が、6月20日(水)にアパグループ東京本社で開催されました。
冒頭のアパグループ元谷外志雄代表による塾長挨拶では、「今月号のエッセイは、『北朝鮮危機は米中新冷戦構造のはじまり』というタイトルである。先日の米朝首脳会談について、アメリカが譲歩したという論評がなされているが、そうではない。トランプ大統領が『これ以上の経済制裁をしない』と言ったのは、現在の経済制裁が非常に効いているからであり、完全な非核化が実現するまで経済制裁を解除しなければ、自然と熟柿が落ちるように金正恩が妥協してくるものと考えているからだろう。アメリカ大統領が最も関心があるのは再選であり、まずは中間選挙で勝利するために、その時期に一つの成果を上げようと計算しているのだろう。日本のメディアは、共和党の中でもトランプを支持するのは一部であるかのように報じているが、実際は、共和党はトランプ党と言っても良いくらいトランプの支持は広がっている。トランプのやっていることは、アメリカ第一主義である。世界は各国が自国第一主義を掲げる新帝国主義時代にある中、日本が現行憲法を堅持している中で、北が核を保有したままで韓国を併合し、中国の傘下に入って、人口8千万人の反日国家となって日本を脅すようになることが良いはずはない。現在行われているのは、北朝鮮を中国が取るか、アメリカが取るかの鬩ぎ合いである。北に対して厳しくするとクーデターや内乱が起こりかねない。トランプは事業家であり、ディールをしているのであるから、一つ一つの言葉ではなく全体を見て判断すべきだ。北は、本当は日本のようになりたいと思っており、日本の天皇制に憧れている。さらに、最も仲良くしたいのはアメリカである。新聞やテレビの報道を見ると判断を誤ってしまう。私のエッセイはメディアの報道とは違った観点で書いているので、是非読んで頂きたい。最近気になるのが、北朝鮮に対して賠償として相当な経済援助が必要ではないかと言われていることである。それは本来全く必要ないことであり、戦前、戦中に日本が朝鮮の特に北側に、どれだけ莫大なインフラ投資をして、不毛の土地をあれだけの工業地帯にしてきたかを考えるべきである。賠償の話をするなら、日本が残した資産を返せという気持ちで臨むべきだ。人質事件が起こって身代金を払って解決するのではなく、力で奪還しなければならない。」と、米朝首脳会談の本質を解析し、メディアの報道の誤りを指摘しました。続けて、6月4日に開催された『本当の日本の歴史「理論 近現代史学Ⅳ」』出版記念並びに代表バースデーの会の動画を視聴しました。
衆議院議員の務台俊介様は、「近現代史には大変興味を持っており、自民党でも近現代史の勉強会をしている。そこに出席すると、様々なことが、一般の人々に間違った形で教えられていることを改めて感じる。馳先生らのご努力により、近現代史を学校でしっかり教える動きが出てくるようであり、大変期待している。戦後70年以上が経ち、外交機密が公開されていくと、日本人が真実だと信じ込んでいたことが、実は違っていたというようなことがこれからどんどん出てくるだろう。戦前、各国にコミンテルンが入り込み、どういう工作を行っていたのか。それが尾崎秀実やゾルゲを通じて、どのように日本を誤った方向に進ませたのか。私の地元に山口富永さんという、90代の在野の歴史家がいらっしゃるが、過日山口さんから呼ばれ、政治家ならそういったことを勉強するように言われた。日本人が知らないことが多すぎる。一般の人にも理解してもらえるような活動をしていかなければならない。」「過去を総括する作業と並行して、これからの若者世代が日本を愛して、日本のことを理解していくための活動も必要である。今の若者、特に小中学生が自然に親しむ機会が著しく不足している。今はEスポーツという、ゲームの中でスポーツをする方が楽しくて良いという時代になっている。私は、若い人々が農業体験や自然に親しむことを、学校教育の課程にしっかり位置付けるべきだと思う。地元の長野県では、小中高で学校登山の伝統がまだ残っているが、それでもだんだん登る山のグレードを下げてきている。山に登るということは非常に達成感が大きく、卒業時に一番の思い出を聞くと、山登りと答える子供が多いという。そうした体験を全国の子供達にもしてもらいたいと思い、『青少年自然体験活動等の推進に関する法律』を議員立法で準備している。学校教育の現場の理解を得るのがなかなか大変であるが、しっかり取り組んでいきたい。過去の歴史を総括し、日本の誇りを取り戻すような、しっかりとした歴史教育をした上で、将来のよりよい日本人を育む教育が必要だと考えている。」と、歴史と自然体験教育の重要性を訴えられました。
勝兵塾関西支部長で衆議院議員の長尾敬様は、「米朝首脳会談を終えて、北朝鮮が米国側に付くのか中国寄りになるのか強い関心を持っている。共同声明には『安全を保証する』と書かれており、『体制を保証する』とは書かれていないが、これをどう読み込むか。北が核を手放すのはなかなか難しいのではないかと思っている。場合によっては38度線が対馬列島にまで下りてくる可能性も排除できない。平和安全法制を一昨年前に成立させたが、こういったことも想定に入っていたのだろう。また、拉致問題については、いずれ現実を突き付けられる時が来る。北から何人という具体的な数字を突き付けられたとき、それを日本はどう飲み込むのか、きちんと向き合っていかなければならない。」と北朝鮮問題に触れられた後、「外国人の土地取得問題と健保の悪用問題に取り組んでいる。外国人の土地取引は、外国人の財産取得に関する政令(政令51号)によって制限されていたが、昭和54年に外為法に吸収される形で廃止された。当時は経済至上主義のために、譲ってはならないものを譲ってしまった。1995年にGATSで最恵国待遇と内国民待遇を与えることを約束した。そのため、外国人による土地取引の制限はできないこととなった。これは当時の外務省の大チョンボだと思う。法律で再び外国人の土地取引に制限をかけようとしても、法律より条約が上位概念にあるため、簡単にはいかない。また、在留外国人は240万人いて、うち120万人が労働者である。健康保険は3カ月以上日本に住所を有していれば加入できるため、これを悪用する外国人が多い。例えば、自国で癌になった外国人が日本に来て健康保険に加入することで安くて質の高い治療を受けるのである。入管は外国人の健康状態をチェックしない。移民大国のオーストラリアでさえも、留学生が入国する際には健康診断を受けているか、特に結核に罹患していないかチェックしている。昭和60年までは外国人は原則健康保険に加入できなかったが、昭和61年から加入できるようになった。これは難民条約を批准したからである。難民に対しては加入を認めるにしても、一般の留学生や就労ビザで滞在する外国人に対しては適用除外とすることは技術的には可能である。入管法上移民政策を採らない建前になっているが、実態は世界第四位の移民大国である。今この瞬間も多くの外国人が我々の利便性のために24時間働いている。こうした現実に向き合わなければならない。」と、外国人による土地取引と健康保険の問題を指摘されました。
慶應義塾大学経済学部教授の塩澤修平様は、「外国人の健康保険の悪用問題についてどこから手を付けていくべきか。」と質問され、長尾様は、「まずは感染症を予防するため、入国管理局が日本に中長期的に滞在する外国人は健康診断をすると言うだけでも、抑止効果が期待できる。ただそれだけでは体制は十分ではない。入管では偽装在留防止を推進していく必要がある。入管は入国の管理だけでなく、在留の管理まで行う入国在留管理局にならなければならない。」と答えられました。
最後に塾長は、「移民問題の原因は少子高齢化にあるが、その背景には、アメリカによる占領政策が、日本の分断政策であったことにある。日本は天皇を中心とした大家族国家であり、国民は大家族制に基づく家父長制をとり、安心して子供をたくさん産み、お爺さん、お婆さんが孫の面倒を見て、知恵の伝承もなされた。かつては長男が全て継ぐ家督相続制であったが、相続税がだんだん重くなり、地域のコミュニティが分断された。今では4人家族が4カ所に分かれて住んでいるようなこともある。そのために、収入があっても豊かな生活ができなくなっている。大家族制が復活するような政策が必要だ。アメリカの戦略家のルトワック氏は『国防の観点からは、子供を増やし、人口を増やすことが一番だ。』と彼は言っている。日本の今の問題は、戦後の占領政策によって、少子高齢化に進まざるを得ない状況となり、一人一人が豊かな生活ができないような重い相続税で、大家族制度が成り立たなくなったことから起こっている。財産は分割できても親の面倒をどうするか。兄弟が平等に相続することが一見良いことのように見えるが、その結果、財産は細分化し、かつて大きな家に住んでいたのがどんどん小さくなっていく。そうした根本的なところを改め、日本が再び人口が増えて豊かな国になるため、戦後の占領政策を改めなければならない。構造的に少子高齢化が進んでいるのである。」と、少子高齢化の構造的な背景を指摘して会を締め括りました。