第84回 勝兵塾月例会レポート

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

塾長・最高顧問 元谷 外志雄

 勝兵塾第84回月例会が、5月17日(木)にアパホテル〈東京潮見駅前〉で開催されました。
 冒頭のアパグループ元谷外志雄代表による塾長挨拶では、「今月号のエッセイを、『核抜きの金正恩体制が日本の国益だ』というタイトルで書いている。エッセイ中の、『北朝鮮の核兵器は中国の侵略を防ぐ兵器である』という章では、『金正恩氏は「関係各国が北朝鮮への敵視政策をやめて安全への脅威を取り除きさえすれば、われわれは核を持つ必要がなく、非核化は実現できる」と強調した』と指摘した。金正恩の言う『関係各国が北朝鮮への敵視政策をやめて安全への脅威を取り除きさえすれば』とは、アメリカだけでなく中国も含むという意味である。そもそも北朝鮮は中国からの侵略に備えて核兵器を開発してきた。江沢民は金正日に核開発をやめさせようとしたが、それを拒んだため、金正日は訪中の帰りに、龍川駅で爆殺されそうになったのである。また、『核廃棄方法で米朝対立 交渉での問題解決は不可能』という章では、『米朝会談で「真のCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)や核廃棄を基調とする合意」を見出すことは不可能と言える。』と指摘した。北は小出しに廃棄していくというが、廃棄したように見せかけて、完成済みの核弾頭や弾道ミサイルを隠匿するものと思われる。それでは北を潜在的核保有国として認めたことになってしまう。日本にとっては、中国に対抗するため、北朝鮮が緩衝国として、核抜きの金正恩政権が存続することは必要なことである。日本にとって最悪のシナリオは、金正恩亡き後の北朝鮮が中国の傀儡国家となって韓国を併合し、日本に突き付けられた刃となることである。そういう意味では金正恩にも頑張ってもらいたいという気持ちもある。こうした観点は、新聞などの報道とは違うものである。近日中にエッセイの最終稿を配信できると思うので、是非読んで頂きたい。」と、北朝鮮問題の本質を解析されました。また、塾長が出演され、4月29日に放映された「がっちりマンデー!!」の録画を視聴しました。

駐日モルドバ共和国大使館特命全権大使のヴァシレ・ブマコフ様

駐日モルドバ共和国大使館特命全権大使 ヴァシレ・ブマコフ様

 駐日モルドバ共和国大使館特命全権大使のヴァシレ・ブマコフ様は、「前回の勝兵塾での講演では政治と外交について話したが、今回は現在日本と手掛けているプロジェクトについて話したい。私の国は東ヨーロッパ、ルーマニアの東側に位置している。ソ連が崩壊した時、ロシア人は技術も機械も持ち帰ったので、全て自分達でやらなければならなくなり、大変な状況に陥った。しかもソ連の技術は古かったため、西側から新しい技術を学んだ。モルドバは農業国でブドウとワインの生産が盛んである。私は元々農業技術者で、農業大臣もやっていた。農業の専門用語については詳しかったため、日本に来て日本の農業の専門家達と話が弾んだ。私は2000年に来日し、JICAや外務省、商社の人々と対話を重ねた。ソ連崩壊後、日本政府は食料を援助してくれたが、そのうち食料ではなく、機械や技術を提供してくれるようになった。食べ物があると人々は働かないので、食料を作るためのノウハウを援助してくれたのである。さらに支援に際して、トラクターなどの機械は必ず対価を払わせたことで、農家の意識を変えていき、農作物を生産して稼いだ外貨でまた日本から機械を買った。また、ソ連が崩壊してロシア人が残したものは賄賂の習慣だった。それが経済を非効率なものにしている。モルドバのどんな村でも日本人のビジネスのやり方を知らない人はいない。どこの国でも賄賂が横行しているが、日本ではほとんどないことがすごい。日本とのプロジェクトで、バイオマスを暖房に利用するプロジェクトを手掛けている。さらに、洪水などで流された土壌を再生する技術も導入している。国を代表して日本の皆様にお礼を申し上げたい。」と、日本からの農業支援と現在の取り組みを紹介されました。

慶應義塾大学経済学部教授の塩澤修平様

慶應義塾大学経済学部教授 塩澤修平様

慶應義塾大学経済学部教授の塩澤修平様は、「モルドバでの土地所有の主体はどのようになっているか。」と質問されました。ブマコフ大使は、「現在は土地の90%が民営化されており、個人や企業が所有している。土地の売買について、近代的な市場が出来上がっている。」と答えられました。

衆議院議員の櫻田義孝様

衆議院議員 櫻田義孝様

 衆議院議員の櫻田義孝様は、「安倍内閣で一番やりたいことは憲法改正だろうと思う。憲法改正が戦後70数年経ってまだできないのは不思議なことである。『沖縄返還なくして戦後は終わらない』と言った総理がいたが、私は『憲法改正なくして戦後は終わらない』と思っている。フランスでは、国土の一部または全部が外国の占領下にあるときは憲法を改正してはいけないことになっている。ハーグ陸戦法規でも、戦争で占領した国の憲法を変えてはいけないことになっている。それにも拘らず、あくまで強制的に改正させられたのではなく、日本が指導を受けて自主的に改正したことになっているが、現行憲法は、明らかに占領下において占領軍によって作られた憲法であり、『マッカーサー憲法』であるのが真実だと思っている。しかも悪いことに、この憲法を『平和憲法』と言った人がいてそれが広まったため、この憲法を変えようとする人は平和に反する人だというイメージが戦後の日教組教育と一緒に広まってしまったのではないかと思う。戦後の総決算として、憲法を何が何でも改正しなければならない。安倍総理は憲法に自衛隊を明記すると言っているが、それを『戦争の準備をする』などと言う人がいる。昔は進歩的文化人と呼ばれる人たちがいて、憲法を改正してはいけないという風潮を作ってしまった。今の安倍総理ほど憲法改正に熱心な総理はいなかったのではないか。まず憲法の前文が良くない。『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。』とあるが、日本の近隣の国でそんなに信頼できる国があるだろうか。また、首都直下型地震が起こった場合、今の憲法では、建物が倒れて道路を塞いだ瓦礫を自衛隊が勝手に片付けることができない。緊急事態においては一時的に人の財産であっても勝手に片付けることが必要である。そういうこともできないのが今の憲法である。9条の改正だけでなく、災害救助のための非常事態法制をしっかり作っていかなければならない。さらに、一般に私学助成が行われているが、公の支配に属さない教育にお金を出すことは、明らかに憲法(第89条)違反である。実態に合わせて憲法を直していかなければならない。」と、憲法改正の必要性を訴えられました。

元衆議院議員の田沼隆志様

元衆議院議員 田沼隆志様

 元衆議院議員の田沼隆志様は、「『愛児への便り』という特攻隊の遺書をお配りしたが、私は知覧を訪れ、この遺書を見て、政治の道に入ろうと決意した。日本の誇りを取り戻し、教育を通じて特攻隊の思いを伝えていきたいと考えている。私は国連人権理事会に参加するため、ジュネーブに行ってきたが、国連がいかに酷いところであるかを実感した。在加日本人のシャロン・アイザック氏は、『連中は平気で嘘をつく』『少し検証すればすぐばれるようお粗末なウソでも一向に構わないのは、あきれたことにUN(国連)への登録手続きに『証拠』という欄項目が抜けているかららしい。UNはまさに捏造天国なのである。』と指摘しているが、まさにそのとおりである。私は世界に慰安婦問題の真実を広めるために活動しているが、クマラスワミ報告書は酷い内容である。内容は何の検証もされていないが、特別報告書が一旦出るとこれを修正することはできない。言論は自由だが、その内容が検証されずそのままというのは問題だ。そしてこうした国連の捏造天国を利用している人達がいるのである。従軍慰安婦の強制連行などなかったことは、日本ではほとんど証明済みであるが、国際社会では左翼が活発に活動しており、左翼の発言が検証されず言いっぱなしになって広まっているのである。だから国連を信じてはいけない。情報源が偏っているから、ディビット・ケイ氏が国連人権委員会で『日本政府はメディアに圧力をかけて報道の自由を侵害している』と、全く事実と違う報告をするのである。国連の勧告は左翼が言ったことをそのまま纏めて日本政府に対して出しているだけであり、何の検証もされていないところに構造的な問題がある。そもそも『国連』という訳もおかしく、実際は『連合国』であり、だから旧敵国条項が未だに残っているのである。また『勧告』と言われているが、英語では“Recommendation(推奨)”であり、何の強制力もないものなので、これも訳がおかしい。クマラスワミ報告書が残っている限り慰安婦問題に関する誤解は解けないが、保守の活動量が少ない。今後も誤ったことに対しては反論を続け、戦っていかなければならない。」と、国連の構造的な問題を指摘されました。

衆議院議員の原田義昭様

衆議院議員 原田義昭様

衆議院議員の原田義昭様は、「私も田沼さんとは同じ思いを持っている。我々は『リベラル』という言葉を当然のように使っているが、『左翼』と呼ばないから理解を間違ってしまう。先日、アメリカで慰安婦像撤去を求めて目良さんが訴訟で負けたが、彼の努力は日本人を刺激し、日本政府を動かした。」とコメントされました。

米国籍弁護士・株式会社ワールドウィズアウトボーダーズCEOのジェームス・ニコラス・パパトネス様

米国籍弁護士・株式会社ワールドウィズアウトボーダーズCEO ジェームス・ニコラス・パパトネス様

 米国籍弁護士・株式会社ワールドウィズアウトボーダーズCEOのジェームス・ニコラス・パパトネス様は、「日本の将来について、特に経済に強い影響を与える問題について踏み込んで話したい。日本は移民を受け入れていかなければ危機に対応できなくなるだろう。2060年までの人口推移を見ると、アジア諸国における人口が劇的に増加していくのに対して、日本の人口は大きく減少していく。特に在宅医療や高齢者介護、製造業においても労働力不足で危機的状況に陥る。在宅医療や高齢者介護に関して、母国で認定を受けスキルを持つ外国人労働者が日本人高齢者のニーズに応えられるようにしていくべきである。」と述べられましたが、勝兵塾事務局長の諸橋茂一様は、「パパトネス様の話には疑問を感じる。移民で成り立ってきた米国と単一民族に近い状態で長い歴史、伝統、文化を積み重ねてきた日本とは全く国情が違うので、そのまま日本に当てはめることはできないのではないか。」とコメントをされました。

勝兵塾事務局長の諸橋茂一様

勝兵塾事務局長 諸橋茂一様

 勝兵塾事務局長の諸橋茂一様は、「5月8日に台湾で、八田與一技師夫妻の墓前祭に参列した。八田與一技師は金沢市出身の土木技師で、人間的にも素晴らしい人物だったため、今でも台湾で多くの人々から尊敬され、慕われている。八田技師は1886年に生まれ、烏山頭ダムの建設に着手したときはまだ34歳の若者だった。現在の貨幣価値で5、400億円もの予算を要する計画を立案した八田技師も素晴らしいが、若い八田技師の計画を認めて10年間に亘って莫大な予算を投じ続けた当時の日本政府も素晴らしく、当時の日本政府のことをもっと評価されるべきである。烏山頭ダムは湛水面積が1、300ha、高さ66・7m、有効貯水量が1億5、000万㎥で、さらに灌漑用水路が16、000㎞にわたって張り巡らされ、当時東洋一のダムと呼ばれた。」と、八田與一技師と当時の日本政府の功績を紹介されました。

 

 最後に塾長は、「今月の座右の銘は、『約束は 力に依って守らせるもの 親交を結んでも守れない』である。これはまさに今の北朝鮮問題にも当てはまる。アメリカは力があるから3人のアメリカ人が解放された。約束は力を背景に守らせるものというのが国際社会の常識である。日本は早急に憲法を改正して独立自衛の国家にならなければならない。」と、座右の銘を紹介されて会を締め括られました。