塾長・最高顧問 元谷 外志雄
勝兵塾第31回月例会が、12月19日(木)アパグループ東京本社6階会議室にて開催されました。
冒頭のアパグループ代表、元谷外志雄塾長の挨拶では、「日本のメディアは一色になってしまい、私の思いと違うことがさも本当のことであるかのように書かれている。北朝鮮問題に関して重要なのは、北朝鮮が緩衝エリアとして存在することが日本の国益に沿うことだということである。張成沢(チャン・ソンテク)前国防副委員長を処刑したことが話題になっているが、改革開放路線をとる張氏が強くなると、中国に擦り寄っている韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領とともに、中国の傀儡国家である南北朝鮮連邦国家が生まれてしまう。張氏の処刑は、金正恩を立てつつも崔竜海(チェ・リョンヘ)総政治局長が主導したクーデターと言っても良い。北朝鮮が中国にもロシアにも米国にも与しない独立国家であることが日本の国益に合致する。先日李登輝閣下と対談したが、米国の国際影響力が低下し、中国が台頭する現在はリーダー無き『Gゼロ』の時代であり、自分の国は自分で守り、力の空白域を作ってはいけないという認識で一致した。安倍政権は1年間でかなり多くのことを成し遂げたが、安倍首相が自らオリンピックの開会式をやるくらいの長期政権となってもらいたいと思い、エッセイや勝兵塾、夕刊フジの連載などで応援している。」と、北朝鮮問題と「Gゼロ」時代における日本のあり方について語られました。
駐日アルバニア共和国大使館特命全権大使のブヤール・ディダ博士
駐日アルバニア共和国大使館特命全権大使のブヤール・ディダ博士 は、「アルバニア語は日本語と同様にユニークな言語である。また、アルバニア国民のほとんどはアルバニア人で、単一民族である点も日本と似ている。日本について、ハイテクの国であるとともに伝統を守っている国であるという印象を持っているが、後者についてはアルバニアにも共通している。ギリシアやローマから文化を取り入れながら、自分たちの手でアルバニアの文化を作ってきた。バルカン半島にはアルバニア人、ギリシア人、スラヴ人の3つの民族がいるが、アルバニア人とギリシア人はスラヴ人が入ってきたことで減少した。アルバニアは人口が320万人と小さな国であるが、言語を守ることで国がひとつにまとまり、文化を守ることができた。」と、アルバニアの歴史について語られました。
戸塚ヨットスクール校長の戸塚宏
戸塚ヨットスクール校長の戸塚宏様 は、「ウチがダメになった子供を正しくできてきるのだからウチのやり方が正しい。しかし文科省は決して認めようとしない。臨教審は日本の英知を集めて日本の教育を立て直そうとしたが、30年経っても未だに教育荒廃の原因もわからない。先日、名古屋のテレビの討論会で元文科省の官僚でゆとり教育を推進した人物が出ていたが、『ゆとり教育が悪かったという証拠はない。』と言い切った。偏差値秀才は教育の失敗者になる。教育とは知育、徳育、体育の3つのことを実践するものである。偏差値秀才はモノを覚えるだけで考える力がない。教育の荒廃は日本で初めて起こったことでサンプルがないから何も出来ない。また、今の精神論は欧米流の精神論で、創造論、すなわち、神が人間を創り、人間には理性があるというものである。一方日本の精神論は、理性は作るものであり、正しい理性を作るのが修身であるという考え方である。よく『古い』という言葉を否定的に使われるが、古いということは正しいということである。なぜなら間違っていることは捨てられるのだから、古くはなれないからである。『古い』は左翼にとっての否定の文句だった。日本人にとって大和魂が古くて、ヨーロッパから来たラショラリズム(合理主義)が新しい。新しいものが正しいとして覚えたのが偏差値秀才である。大和魂は性善説であり進化論であり科学的であるが、ラショラリズムは性悪説であり、創造論であり、非科学的である。間違った精神論で教育するからうまくいかない。体罰が悪いと言うが、体罰とは何か、善悪をどうやって決めるのか、定義をはっきりさせない人間が体罰を悪といっても、何を言っているかわからない。そうした非科学的、非論理的な態度が教育の荒廃の原因である。就職ができないと言われるが、職がないのではなく、多くは3年以内に辞めてしまうのである。このままでは日本が潰れてしまう。もっと真剣に教育問題について考えて欲しい。そして文科省に責任を取らせてダメな権力者を取り替えていくよう、もっと声を上げて欲しい。」と、教育問題の原因について語られ、声を上げる必要性を強く訴えられました。
第6回「真の近現代史観」懸賞論文社会人部門優秀賞で慶応大学経済学部教授の塩澤修平
第6回「真の近現代史観」懸賞論文社会人部門優秀賞で慶応大学経済学部教授の塩澤修平様 は、「歴史問題が一部の国家にとって政治的手段であり外交カードとして利用されている。これは学問的真理の探究とは全く次元の違う話である。歴史問題は領土や経済的損実に留まらず、民族の誇りと尊厳、名誉、価値観の問題であり、過去の世代から将来の世代にまで続く。歴史問題を手段として日本を弱体化させることは冷戦期において米ソの利害が一致した稀有な例であり、他の敗戦国にとってもこの状況を変えようとする誘因はほとんどない。」と政治的手段としての歴史問題の本質について語られ、「外交カードは言われた方が動じるから効果を持つのであり、これに対処するためには世界史的な視野を持った歴史観が求められ、次のことを教育内容に盛り込むべきだ。」として、「国際連盟規約中に人種平等主義を挿入することを日本が提案したが否決されたこと」、「1943年の大東亜会議と大東亜宣言の内容」、「日本はポツダム宣言を受諾したのであり、無条件降伏ではないこと」、「国家主権のない占領下で日本国憲法が成立したこと」、「1951年のアメリカ上院軍事外交合同委員会におけるマッカーサー証言」、「1953年の全会一致の国会決議により、また関連国に事前の了解をとり、『A級戦犯』はもはや存在しないこと」、「日韓基本条約ならびに日中共同声明の内容」を挙げられました。最後に「反論すべきことは毅然として反論すべきであり、沈黙は美徳ではなく、和の精神は通用しない。」と、毅然とした発信を求められました。
元空将補でアパグループリスク管理室長の石井よしあき
元空将補でアパグループリスク管理室長の石井よしあき様 は、「中国が防空識別圏を拡大したことがメディアで報じられているが、防空識別圏とは内規で定めるもので、通常は表に出てくるものではない。日本の場合、GHQが統治していた時代に定めたものであるため、隣国と重ならないようになっているが、本来は各国が勝手に決めるものであり、隣国と重なっていても不思議ではなく、排他的な権利が発生するものではない。むしろ問題は日本の防空識別圏が北方領土や竹島を外していることである。これは米国が領土問題を残していざとなったら日本が米軍を頼る構図を残しているのではないかと思う。ただ、中国は太平洋に進出したいという意図があるから日本政府は防空識別件の拡大を断固として拒否すると言っている。今後、中国が尖閣上空を飛ぶなと規制し始めると問題である。民間飛行機が飛行計画を入力すると、自動的に各国に届くシステムになっている。中国が防空識別圏を広げたことで飛行計画を出すかが問題になっているが、現実的にはFIR(飛行情報区)が機能しているため、飛行計画を新たに出さなくても中国は把握している。米国の航空会社は飛行計画を提出するようになったが、これは保険をかけているのではないかと考えられる。一方、日本は尖閣領有権を主張しているので認められない。」と、防空識別圏の意味と問題の本質について語られました。
第29代航空幕僚長の田母神俊雄
第29代航空幕僚長の田母神俊雄様 は、「防空識別圏は各国が勝手に決めるものであり、ヨーロッパでは防空識別圏が他国の領土上にあることはごく普通のことである。また、防空識別圏の外であってもレーダーに入ってくるものは識別している。FIRでわかるから飛行計画を出しても出さなくても同じことである。だから中国は政治的に威圧するために言っているのである。また、アメリカはわざと日本と違う対応をしている。それは日本がアメリカを頼るようにして、TPPなど別のところで日本の譲歩を引き出そうしているのではないか。」と、防空識別圏について補足されたほか、「国土強靭化計画が掲げられているが、日本も政治家が軍事について学べば危機対応についてよくわかる。航空自衛隊では被害回復について応急復旧と本格復旧が定められている。応急復旧はすぐに元に戻すことを目的としており、指示なくすぐに動くようになっている。東日本大震災では本格復旧が考えられていたが、出来るだけ早く元の場所で生活ができるようにして、3年間は国家公務員として雇うということもできたのではないか。民主党政権では復興構想会議を立ち上げ、復興計画を策定し、それに基づいて予算を付けるというやり方をしたが、それではいくら時間をかけても進まない。自衛隊はノウハウを蓄積しているので、災害時には自衛隊の知見を活用すればよい。」と、災害対応における自衛隊の知見の活用の必要性について語られました。
衆議院議員の原田義昭
衆議院議員の原田義昭様 は、「先日のパーティーで山本みずきさんが私の選挙区の出身であることを知った。論文や本日の話を聞いて大変感銘を受けた。自衛隊の活用については、最近随分変わり、東日本大震災では高く評価されるようになった。防空識別圏については、中国による政治的な圧力であり、これに従ってはいけないが、米国が急に態度を変えたのを見ると国際政治は恐ろしいと感じた。」と感想を述べられました。
元衆議院議員の高邑勉
元衆議院議員の高邑勉様 は、「北京大学に3年間留学した経験があるが、そのとき参加したゼミの唯一の日本人として、朝鮮併合や中国沿海州のロシアへの割譲について問題提起をした。しかし中国人学生は愛琿(アイグン)条約について教えられていなかった。お互い知らない歴史があるが、まず日本人自身が日本の歴史を学ぶべきであると感じた。」と、中国留学の経験から歴史問題の取り組み方について語られました。
最後に塾長 より、「左翼は戦後68年かけて様々なところに食い込んで、いつの間にかこういう国になった。5年前に田母神論文騒動がなければ、日本はどうなっていたかと感じる。日本は良い国だったという論文を書いたら政府見解に反するとして航空幕僚長を解任されるなどということは、世界中を見渡しても今の日本以外ではあり得ないことだ。世界78カ国を訪れその国の有力者とディベートをすれば、日本は今も昔も素晴らしいと賞賛される。それが日本の中にいると日本が悪い国だったと思ってしまう。本当のことを知れば保守になる。私は右も左も関係なく、『本当はどうなのか』を求めていく会として『勝兵塾』を開催している。田母神論文をきっかけに日本は覚醒した。教育やメディアの改革も大事であるが、左翼が68年かけて今の日本を創ってきたのだから、これを変えていくのには時間がかかるだろう。だから『Apple Town』や勝兵塾、懸賞論文、夕刊フジの連載などと通じてより多くの人に広げていくことで大きな流れを起こしていきたいと考えている。ある程度の線を超えると一気に加速していくだろう。この5年間でも世の中が大きく変わったと感じている。」と、勝兵塾をはじめとする言論活動へ思いを語られ、会を締め括られました。