
塾長・最高顧問 元谷 外志雄
勝兵塾第79回月例会が、12月21日(木)にアパグループ東京本社で開催されました。冒頭のアパグループ元谷外志雄代表による塾長挨拶では、「今年は1月の書籍問題に始まり、多くの話題を提供してきたが、これほど事業が順調だった年はなかった。今年の新年会では、『今年は経済的には素晴らしい年になるが政治的には不安定な年になるだろう』と話したが、まさにその通りになった。本年度の決算は、中間報告では増収増益となる見込みである。昨年度は経常利益が338億円で利益率が31%と良い業績だったので、今年はどうなるかと心配していたが、速報値では経常利益が345億円は超えている。勝兵塾にこれだけの方々に集まって頂けるのは、事業が順調だからだろう。私は言論活動の信頼性を担保するために事業活動をやっているようなものである。事業活動による貢献よりも言論活動による貢献の方がはるかに大きいだろう。書籍問題で『南京大虐殺』が歴史カードとして無効化しただけでも何兆円もの価値があるのではないか。」と、この一年を振り返りました。続けて、12月8日に明治記念館で開催された第10回「真の近現代史観」懸賞論文の表彰式及び受賞作品集の出版記念パーティーの模様を視聴しました。

明星大学特別教授 髙橋史朗様
明星大学特別教授の髙橋史朗様は、「『高大連携歴史教育研究会』が発表した歴史教科書用語の見直し案では、『従軍慰安婦』や『南京大虐殺』を載せ、坂本龍馬や吉田松陰、高杉晋作、中江藤樹らの人名が外れることとしている。歴史教科書の中に特定の思想やイデオロギーが入ってきている。教科書用語の選定基準が曖昧である。GHQは占領政策を遂行するため、フレンドリー・ジャパニーズを選んだ。彼らは共産主義者、社会主義者である。教育勅語を道徳教育に用いることについての閣議決定に対して、教育学会が反対をした。道徳教育を行っている教員の8割が教育勅語に反対している。」「ユネスコの『世界の記憶』登録について、慰安婦が先送りされた。10月31日に国際連帯委員会は『登録を阻止するために日本が暴力的な行為をしてきた』と会見した。慰安婦は8か国による共同申請だったが、先送りになったのは、性奴隷の強制連行の証拠として共同申請された資料に関して、これに反対する日米4団体は同じ資料を、公娼制度を示すものとして申請したことで、対話が必要だということになったのである。『世界の記憶』の審査は14人のメンバーによって行われるが、歴史家ではなく文書管理の専門家である。8か国申請はNGOによるものだったが、韓国は政権が代わって政府が前面に出てきた。中国メディアは、韓国に世界の記憶センターが設置されると発表した。さらに、韓国人がユネスコ執行委員会委員長に就任した。『世界の記憶』登録は、本来資料に普遍的にアクセスできるようにするためのものであるが、2年前に登録された『南京』については、未だに誰も資料を見ることができない。中国は『南京』と『慰安婦』を絡めるようになってきた。すなわち南京の犠牲者30万人、慰安婦30万人と言い出したのである。さらにフォーカス・アジアは、75%のアジア人慰安婦が日本軍に蹂躙されて死んだと報じ、人民網は30万人の慰安婦の68%は中国出身者だと報じた。中国は731部隊を次回の登録に申請しようとしている。そこでも30万人が殺されたとしている。政府を挙げて『歴史戦』を仕掛けている。日本も官民一体となって戦わなければ日本の名誉が守られない。」と、国内外の「歴史戦」の現状について解説され、官民一体となって戦うことの必要性を訴えられました。
ダライ・ラマ法王 日本代表部事務所 日本・東アジア代表 ルントック様
ダライ・ラマ法王 日本代表部事務所 日本・東アジア代表のルントック様は、「チベット国内の状況は深刻である。チベットは2000年以上の歴史があり、チベット人が住み、チベット仏教を信仰していた。しかし、1951年に中国共産党が解放の名の下、チベットを占領し、17か条の条約で国が消滅した。中国共産党はチベットの寺を破壊し、政治的に影響のある人々を逮捕し、僧侶を還俗させた。ダライ・ラマ法王は1959年にインドに亡命し、チベットの独立を主張して国際社会に支援を求めたが、支援を受けられず、国を失った。それでも中国と仲良く暮らしたいと考えている。チベットは独立しても、軍事や防衛は中国に頼り、仏教文化を自分達の手で守ることができればよいのである。仏教で世界に貢献できる。今のチベットでは中国語ができないと仕事ができない。中国共産党は、チベットは豊かになってチベット人は幸せに暮らしていると言っているが、150人以上のチベット人が焼身自殺をして抗議してきた。いずれも20~30代の若者である。中国の言っていることとやっていることは逆である。それでもダライ・ラマ法王の指導の下、中国と仲良くし、過去に囚われず前向きにやっていきたいと考えている。2008年以降は外との交流が減り、チベット内の移動にも許可が必要になった。2500年前にインドで誕生した仏教は、21世紀の科学と対等に対話ができる。科学は物質面では進んだが、精神面や意識面で未知の分野がたくさんあり、そこに仏教の神髄が貢献できるのである。日本はダライ・ラマ法王が亡命後に初めて訪れた国であり、法王は日本人の心、精神が好きである。」と、チベットの過酷な現状と仏教の持つ可能性について語られました。
参議院議員 松下新平様
参議院議員の松下新平様は、「先の衆議院選挙では、ワイドショーの影響を受けて投票行動をしたという人がかなり多いという調査結果があり、大変将来を案じている。選挙は民主主義の基本であるが、偏向報道によって間違った投票行動をし、間違った政権が生まれかねない。私はこれまで内閣や党の立場から偏向報道に取り組んできた。総務省情報流通行政局が作成した資料によると、日本と他の先進国との番組規律を比較した場合に、日本にだけ独立規制機関はなく、番組規律を担保する措置として行政罰(課徴金)も刑事罰も設けられていない。制度として業務停止命令や免許取消はあるが、これまで適用されたことも検討の俎上に載ったこともない。日本にはBPOはあるが、これはNHKと民放が資金を拠出し、人を出している機関であり、お手盛りだと批判されている。こうしたことから、日本では偏向報道が問題になりながら堂々と行われている。この背景には、昔は政府・与党と民放との間で信頼関係があったから厳しい規定を設けなかったということがある。しかし、今は信頼関係が変わった。民放は視聴率を上げるために国民を誘導する報道になりがちであるが、独立した機関がチェックする体制になっておらず、他の国並みに規制をかけるべきである。フランスでは放送時間量に関する規律がある。つまり放送番組における政治家の発言時間量について厳しい制限があるのである。さらに、諸外国では青少年保護に関する規律もある。出版は基本的には自由であり、監督官庁はないが、放送は国民の財産である電波を利用したものであり、影響も大きいことから、偏向報道に対して危機感を持って取り組んでいる。」と、偏向報道の問題点を指摘され、番組規律のあり方を論じられました。
元駐トルコ大使・元国連事務次長 田中信明様
元駐トルコ大使・元国連事務次長の田中信明様は、「大使という職業は、赴任したその日から任地の状況を全て知っているという前提で成り立っており、任期は通常2~3年と短い。だから現地事情を理解するのは大変難しい。そこで、自分なりの判断基準を持っていないとあらゆることに対応できない。私は『地理によって国民性が創られる』ことと、『歴史がその国の文化を形作る』ことの2つの軸で物事を把握してきた。山本七平がイザヤ・ベンダサンと言う名前で書いた『ユダヤ人と日本人』の中で、日本人は水と安全はタダだと思っているが、ユダヤ人にとっては水も安全も血を流してでも勝ち取らなければならないものであると指摘している。厳しい環境で育った人と温暖な気候で育った人とでは全く考え方は違う。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教といった一神教はいずれも中東から出てきている。厳しい環境で育ってきた人にとっては、物事は白か黒しかない。一方、温暖なところで育った人には灰色というものがある。日本人とトルコ人は、元は同じだと言う人もいるが、考え方は全く逆である。日本では『和を以って貴しとなす』というように、農耕民族であり共同生活して協力していかなければならないが、遊牧民族はリーダーに付いていくものであり、リーダーの資質が重要となる。日本では妥協することが大切であるが、トルコでは妥協する人は弱い人だということになる。中東のメンタリティは強い者は妥協せず、力で獲得するというものであるから、話し合いに乗ってこない。また、大陸と島国との違いもメンタリティに多大な影響を与える。日本の歴史の中では外国と戦争をすることがあまりなかったため、日本人は、安全はタダで得られることを前提に考えがちだが、これは国際常識からかけ離れている。大陸では、いつ外国から攻められるかわからないから、機を見るに敏になる。歴史教育について、パキスタンではインダス文明の後、イスラム教の発祥まで歴史が飛躍し、トルコではローマ、ギリシャはほとんど無視され、歴史を遡るとヒッタイト人にまで飛んでしまう。このように宗教に縛られて歴史を直視できないのである。日本は歴史と土地と民族が一つであり、恵まれた立場にある。」と、国民性や文化の違いを地理と歴史の2つの視点から解説されました。
サー中松義郎博士
新しい歴史教科書をつくる会顧問 杉原誠四郎様
名城大学講師 久野潤様
最後に塾長は、「今月の座右の銘は『悠久の勝利を願うなら 自らの心を支配せよ』である。人間の心の中には正邪があり、絶えず誘惑に勝ち続けなければならないという思いで、事業も言論活動も続けている。勝兵塾を6年半も続けてきて、世の中がかなり保守化の方向に変わってきた。今日本が真っ当な国にならなければ、日本もいずれ中国の日本自治区になってしまう。日本が独立自衛の国になるために、北朝鮮危機を契機に憲法改正を実現させなければならない。」と、憲法改正の必要性を訴えて会を締め括りました。