第166回 勝兵塾月例会レポート

公開日:2025/4/25


塾長・最高顧問 元谷 外志雄

勝兵塾第166回月例会が、3月19日にアパグループ東勝兵塾第166回月例会が、4月17日にアパグループ東京本社で開催されました。
 開会に先立ち、4月15日に急逝された、当塾の講師特待生であり、何度も講演して頂いたことのある岸本周平和歌山県知事へ黙祷を捧げ、追悼の意を表しました。その後のアパグループ元谷外志雄会長による塾長挨拶では、「勝兵塾は孫子の兵法の『勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求む』という言葉に由来している。勝つ段取りをつけてから戦闘に挑むのが強い兵だが、日本人にはそうした意識が低いように危惧している。本日お集まりいただいた皆さんには、是非それぞれの人生の中で勝ち組、『勝兵』になられるよう頑張っていただきたい。」と述べました。


衆議院議員 高市早苗様

衆議院議員の高市早苗様は、「前回2年前に登壇した際、産業技術版のセキュリティクリアランス制度を創るとお話しさせていただき、重要経済安保情報保護活用法を昨年の5月に成立させることができた。日本企業や研究者が信頼性調査をしっかりと受けることで、海外における競争力を担保し、日本経済や友好国との信頼性の強化に資することができたと自負している。今回は私が会長を務める、治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会に関連したお話をさせていただく。昨年夏以降、闇バイトによる事件が多発しており、殺人事件にまで発展しているケースもあった。一方で、当時の自民党内に闇バイト問題に対する具体的な政策がないことを危惧し、衆議院選挙終了後すぐに小野寺五典政調会長に電話をして対策を要請したところ、私が対策調査会長を拝命することとなった。その後すぐに本格的な議論を開始し、12月には提言書を石破首相に提出した。提言書には三つの柱があり、一つは仮装身分捜査である。これはおとり捜査とは異なり、犯罪を起こすように仕掛けることまではしない。ただ、犯行グループに入る際に偽の身分証を作り潜入する行為について、刑法35条の正当業務行為であって公文書偽造罪に当たらないとすることが主眼である。次に、法改正となると時間を要することから、現行の職業安定法で可能な範囲の模索にあたった。職業安定法では、求人者もしくはその仲介者について、その氏名や事業者の名前、住所・連絡先等を明示しなければならず、徹底されていないものは明確に違法だとして警察から削除を要請できるようにした。三つ目は、防犯カメラの配備。情報が抜かれてしまう懸念のある中国製のカメラではなく、国産のカメラを配備する。これらの提言をもとに犯罪対策閣僚会議というものが開かれ、ほぼ丸ごと私たちの提言が採用され、仮装身分捜査についてはガイドラインが策定され、全都道府県の警察本部に徹底されている。閣僚会議の実施後、昨年の12月から闇バイトによる強盗殺人事件は発生していない。3月には第二弾の提言を行い、詐欺被害に遭ったお金を、海外に資金移動される前に口座を凍結できるよう、銀行間の情報共有を徹底して怪しい資金移動を防いでいく。そして、現在はオンラインカジノ対策にも乗り出している。違法とは知らずに、若者を中心に手を出してしまい、1兆円以上のお金が海外に流れ、借金を抱えている人も多い。違法性を明確にして、広告掲載や誘導を排除する議員立法が完成した。現在野党と調整を行い、委員長提案で一気に立法まで持ち込みたいと考えている。」と自身が会長を務める自民党治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会の活動を中心にお話しされました。


文藝評論家、一般社団法人日本平和学研究所理事長 小川榮太郎様

文藝評論家、一般社団法人日本平和学研究所理事長の小川榮太郎様は、「ここしばらくのトランプ大統領の動きについて、彼の革命の本質は関税競争や対中包囲網ではなく、イデオロギーの対立にその根本がある。共産主義、そしてソ連崩壊後はリベラルイデオロギーやグローバリズムに形を変えたイデオロギーとの対立である。こうしたイデオロギー戦を行っていることは日本にとっては非常に貴重な存在である。故安倍首相も不自由な中、漸進的にイデオロギー戦を行っていた。第一次政権時に戦後レジームからの脱却を真正面から打ち出し、朝日新聞や官僚に叩きつぶされた安倍氏は、第二次政権は経済が一丁目一番地と言い続け、その裏で少しずつイデオロギー戦を戦い抜いた。トランプ氏も第二次政権という点で安倍氏と近いところがあり、前回の課題に対し戦略を持って動き、国際秩序の再構築を図っていると思う。私は一般社団法人日本平和学研究所というシンクタンクで、年4回『湊合』という機関誌を発行しており、そこでも論じているが、日本はこれまでの漸進的な変革ではなく劇的な変化が可能な状況にある。かつての米国について印象的な出来事が、安倍氏の靖国参拝に対する評価である。参拝の直前に安倍氏と話す機会があり、その際に彼は中国ではなく、むしろアメリカの反応を懸念していた。実際に2013年にはオバマ氏が、2021年にはバイデン氏が『失望』の意を表明し、これもイデオロギー戦の一つの障壁となっていた。しかしトランプ政権下で可能性が広がった中、本当にイデオロギー戦を戦える人が日本の首相となってほしい。そのような状況下で、アパ日本再興財団が実施している懸賞論文制度やアパ日本再興大賞という制度は、懸賞論文第1回の田母神俊雄氏の論文から一貫し、しっかりとした紙媒体のファクトチェックのもとになされた実証研究を正しく評価する制度であり、大変意義のあるものである。インターネットに氾濫する情報は玉石混淆であり、我々が日本を取り戻す際に重要なのは、事実に則った判断を国民一人ひとりができる状況をつくることである。私は岸田前首相が保守のキーパーソンだと信じているが、そうした中で高市氏のような保守の旗手をどう多数派にしていくか、応援団をつけていくか。先鋭的になりすぎず、時間がない中で保守団結して強いリーダーシップを持った首相を擁立できるよう、本日お集まりの皆さまと一緒に戦っていきたいという所存である。」とお話しされました。


詔勅研究家 佐藤健二様

詔勅研究家の佐藤健二様は、「戦後80年という節目を迎えるに当たり、日本人が精神的に失った最重要なものである、國體思想についてお話ししたい。はじめに留意すべきなのは、國體と國體思想は分別すべきということである。國體はいつの時代にもあるものだが、國體思想は國體を言語化して表現することであり、これは後期水戸学の会沢正志斎が19世紀初頭、『新論』という本の最初に國體という章を入れたのが最初である。それ以前にも例えば山鹿素行が17世紀に『中朝事実』という書物で触れた内容は、会沢正志斎の國體思想に直結する内容ではあるが、会沢正志斎が言語化して表現したことで、宮中に伝わることとなる。孝明天皇は詔勅の中に國體という言葉を入れ、その後、明治維新以降も大正・昭和と國體という言葉が詔勅をはじめ、宮中で使用されることとなった。大東亜戦争終結のためのポツダム宣言受諾も、國體すなわち天皇、ひいては日本を護持することがその条件であったわけだが、現在の日本国民は國體の概念を説明できなくなった。かつては小学校の教科書にも載っていた國體という概念だが、現在では姿を消している。憲法第一条では天皇を、『日本国の象徴』『日本国民統合の象徴』と規定しているが、それほどの至高の権威は、何を根拠としているのかについて、國體思想の中心となる神話がないと説明が出来ない。しかし一方でGHQは、昭和20年12月15日に『神道指令』を発し、国費で神社神道を維持する『国家神道』の制度を廃止し、また神道思想に関係するという理由で学校での神話教育を禁止した。これにより神話を失ったことが日本にとって致命的である。日本は神話の事績が人の代の歴史に連続するという、他国に比類のない國體を有し、神と人との結びつきは各地の神社のお祭りなどで、いきいきと生きている。それら神社の頂点に皇室の御先祖である天照大神をお祀りする伊勢神宮がある。その御神体は八咫鏡であり、伊勢内宮と皇居内の賢所に奉斎されている。天照大神の御神霊と天皇とは一体なのである。天皇について規定されている至高の権威は、天照大神が皇御孫である瓊瓊杵尊が地上に降臨するときに賜わった『天壌無窮の神勅』に端を発するのであるが、そうしたことを戦後教育では一切教えない。『天壌無窮の神勅』では、稲穂がたわわに実るこの美しい国は、天照大神のご子孫が王となる地であるとする神勅があり、これが日本の根幹であるにも拘わらず、現代の左翼憲法学者は第一条を大学等で教えずスルーし、神話を否定している。我々は失った神話を通じ、國體思想を取り戻すことが重要である。戦後日本は豊かになったが、日本という国がいかなる国であるのか語るべき言葉である國體思想を取り戻さなければ、外敵に対しても毅然と立ち向かえないのではないか。いま一度、國體思想や神話について正面から考えていただきたい。」とお話しされました。


武蔵一宮氷川神社権禰宜 遠藤胤也様

武蔵一宮氷川神社権禰宜の遠藤胤也様は、「氷川神社は創建から2497年、あと3年で2500年の節目を迎える。御祭神は須佐之男命、稲田姫命、大己貴命の三柱の神で大己貴命は須佐之男命の御子に坐して国土を天照大神の皇御孫瓊瓊杵命に御譲りになられた国土経営の神であり、稲田姫命は須佐之男命の御妃で大己貴命の御母神である。それよりも以前から祭祀の文化は根付いていたが、大宮が災害のない場所ということもあり、神社の中で特に長い歴史を誇る神社となっている。創建後、各時代で将軍や権力者が来訪されたが、特に1868年に京都を発し江戸城に入城なされ明治天皇は、そのわずか2週間後に氷川神社に行幸された。東京遷都政務のご多忙の合間を縫い、明治元年の10月28日に氷川神社に行幸され、国そして国民の幸せを祈るために神様にご祈願されたのである。全国の神社で唯一、明治天皇自ら祭祀を御奉仕され、神に祈られた。当時はペリーによる外圧、東南アジアの植民地化という世界情勢の中であった。明治天皇は明治維新が起こっている最中に、神様に祭政一致のお伺いを立て、清廉潔白なお祭りを成就する誓いを立てられ、祭政一致の勅として氷川神社を武蔵国の鎮守、勅祭の社と定められた。ここに勅書を読み上げると、『勅ス。神祇ヲ崇メ、祭祀ヲ重ンズルハ、皇國ノ大典ニシテ政教ノ基本ナリ。然ルニ中世以降、政道漸ク衰エテ祀典擧ラズ。遂ニ綱紀ノ不振ヲ馴致セリ。朕深ク之ヲ慨ク。方今更始ノ秋、新ニ東京ヲ置キ、親臨シテ政ヲ視、将ニ先ズ祀典ヲ興シ、綱紀ヲ張リ、以テ祭政一致ノ道ヲ復サントス。乃チ武蔵国大宮駅氷川神社ヲ以テ当国ノ鎮守ト為シ、親幸シテ之ヲ祭ル。自今以後歳ゴトニ奉幣使ヲ遣シ以テ永例ト為サン。』それから157年、日本が近代国家の仲間入りできたのはやはり天皇陛下が国民の幸せを祈っておられることが重要だと思う。現代のような波乱の国際情勢であるからこそ、明治天皇の勅書が活きてくると私は思っている。」とお話しされました。

在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥様は、「私の考えとしては神と仏教に儒教が合わさり日本人の精神性を創っており、そこに政教分離という日本独特の制度が融合していると考えているが、どうお考えか。」とご質問され、遠藤様は「廃仏毀釈や神仏習合といった考えも近年見直されている点がある。春日大社は一種の神仏習合のような側面があり、『春日権現記』は興福寺のお坊さんと春日大社の神職が一緒になって作ったようなものである。元々神道は八百万の神という考えで、その中にはキリスト教やイスラム教、仏教の神様も含まれる。これが日本人の本来の精神ではないかと考えている。」と答えられました。


英霊にこたえる会中央本部副会長 國松権左衛門様

英霊にこたえる会中央本部副会長の國松権左衛門様は、「私は最近、名前を國松善次から國松権左衛門に改めた。國松家では代々長男が権左衛門を名乗るルールがあったが、私の父が32歳に早逝し、当時は私がまだ幼かったりその伝統に反発していたりしたこともあり、権左衛門の名をこれまでずっと継いでこなかった。しかし87歳になり、あの世で先祖から我が家の伝統を守らなかったと言われることを懸念して改名した。私の父親は戦争に行く際、農民は国の根源であるので農業を大事にするべきだという遺書を置いており、私も農業専門学校にいた。しかし農業だけでは食っていけないと思い、公務員試験を受け大阪府庁で仕事をすることとなった。その折に沖縄の戦跡巡回の募集に応募した。当時はまだ占領軍の支配下であったが、そこで遺骨の山に圧倒された。帰ってからは自分の町や滋賀県で遺族会青年部を作り、さらには全国の仲間に呼びかけて日本遺族会を作り、全国の戦跡に赴いた。そして1984年には、全国の仲間と共に、親の写真を持って白装束で靖国神社の能楽堂に入った。当時の藤波孝生官房長官から集会を止めるよう要請を受けたが、私はリーダーとして、『中曾根首相が参拝されれば集会を解散する』と返した。結果的にその年に中曽根首相は参拝し、その翌年も参拝された。しかし、靖国参拝をその後も継続してほしかったと私は思う。今年は終戦から80年の節目であるが、今年の8月15日には衆参両議員は全員靖国神社、もしくは地元の護国神社に参拝して頂きたい。また、『太平洋戦争』というGHQによって変更された名称を『大東亜戦争』に改めて欲しい。これは憲法改正などといった難しい手続きは不要であり、国会決議で可能である。また、戦没者追悼式の所管は厚生労働省となっているが、国家のために命・人生・家族を捧げた国民を弔う場として、防衛省に所管を変更し、その慰霊の式典での国歌は、自衛隊音楽隊に演奏して頂きたい。相撲の初場所や春場所も自衛隊音楽隊の演奏があるのだから、戦没者追悼式もぜひ自衛隊音楽隊に演奏して頂きたい。」とお話しされました。


日本ウクライナ文化交流協会政治担当部長 グレンコ・アンドリー様(右)
政治活動家 オレグ・マガレツキー様(左)

日本ウクライナ文化交流協会政治担当部長のグレンコ・アンドリー様は、「本日はウクライナの政治活動家であるオレグ・マガレツキー氏をご紹介したい。彼はつい1週間前にロシア政府から危険人物として指定されており、その活動はロシアにとって大きな脅威とされている。」とお話しされ、オレグ・マガレツキー様は「ロシア国内に様々な民族が支配されており、植民地支配のような状況となっている。彼らのために声を上げて独立運動、脱植民地化を達成したい。この運動を広げロシアだけでなく中国の脱植民地化を進めることができれば、ウクライナだけでなく日本の国益ともなるため、ともに同じ目標に向け力を合わせていきたい。」とお話しされました。


前衆議院議員 杉田水脈様

前衆議院議員の杉田水脈様は、「本日は先約の講演が早く終わったため、急いで月例会に駆け付けた。世界の国際情勢が非常に危ない状況にある。現在アメリカが仲裁に入るような形でウクライナ戦争の停戦議論が行われているが、ロシアが主張する国境線変更が受け入れられると、武力行使による現状変更を世界が認めることになる。これは日本にも直結する問題で、今後ロシアが日本に攻め込んできて北海道を実効支配する、というシナリオも考えられる。一方で日本の政治、そして国民はそうした危機感を全く持っていないことを危惧しており、日本の独立を守るという、政治家の役割を胸にこれからも尽力して参りたい。」とお話しされました。

最後に塾長は、「毎月10万部以上発行している『アップルタウン』の最終ページに、第18回『真の近現代史観』懸賞論文の募集に関する案内がある。本日の月例会に参加されている皆様はこのような話題に強い関心をお持ちの方ばかりかと思うので、是非とも懸賞論文に応募して頂きたい。」と話し、会を締め括りました。