第163回 勝兵塾月例会レポート
公開日:2025/1/28
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塾長・最高顧問 元谷 外志雄
勝兵塾第163回月例会が、1月16日にアパグループ東京本社で開催されました。
冒頭のアパグループ元谷外志雄会長による塾長挨拶では、「勝兵塾は、『本当はどうなのか』を参加者一人ひとりが知る機会としたい。その観点から、ただ講師の方々の意見を聞くだけでなく、参加者の方からも多様な議論が交わされる場となることを望んでいる。」と述べました。
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日本維新の会共同代表・国会議員団代表 衆議院議員 前原誠司様
日本維新の会共同代表・国会議員団代表で衆議院議員の前原誠司様は、「私の恩師は高坂正堯先生という国際政治学者である。私の大学時代、高坂先生の中公新書『国際政治』を読み現実的な外交安全保障政策の立案がしたいと考え政治家を志した。一昨日は尖閣諸島が閣議決定を経て日本に編入されて130年となる日であった。編入当時には他国からクレームが全くなかったにも拘わらず、1968年に国連が尖閣海域周辺に天然ガス・石油が存在することを発表すると、中華人民共和国および中華民国が領土主張を始めた。特に中国は海警局が軍隊組織として領海侵犯を繰り返し行っており、彼らは歴史的な経緯や国際法上の意味合いではなく、実効支配を繰り返すことにより、領土主張を認めさせようとしている。尖閣を足掛かりとした中国の太平洋進出を阻止するには、日本が尖閣の実効支配を続けるしかなく、海上保安庁と自衛隊が能力強化した上で、両者が連携し警戒監視を行うことが大事であるが、その上でいかに自国を守っていくべきかが課題である。私はアメリカが有事の際に日本を必ず救ってくれるというのは幻想だと思っている。特に現在のアメリカは分断国家であり、共和党が多数派ではあるものの勢力はかなり拮抗している。とすると、有事の際の対応についても一枚岩とはいかない可能性もあるため、自国での防衛体制を整えることが大事である。私は防衛の4要素として核抑止力、情報収集能力、打撃力、装備を挙げており、核抑止力を除く3点をまずは自国で強化する必要がある。情報収集能力について、私が宇宙開発担当大臣の際に準天頂衛星といわれる測位衛星を7機打ち上げ、日本独自の情報収集を行う体制を整えた。日本はまだ多くの情報をアメリカとフランスから買っているが、情報を自ら取れない国は外交戦略を取れないと思う。打撃力だが、敵基地攻撃能力に関する議論が活性化しており、望ましい流れとなっている。最後に装備について、日本の採用していた武器輸出三原則では、共産圏国家や紛争当事国、および国連決議による武器禁輸措置を取られた国への武器輸出を禁止していた。PKOを海外で展開する際に必要な武器も武器三原則によって禁止されており、私が野田政権の政調会長として行ったのは、他国と共同開発・生産した武器については武器三原則の例外とするという緩和であり、その結果イタリア・イギリスとの次期戦闘機の共同開発が進行している。また、それ以外にも海上封鎖されるリスクを考慮すると、エネルギーと食料の自給率を上げる必要がある。こうしたトータルでの国力増強を、政治の責任で行うことの一翼を日本維新の会も担って参りたい。」と、自国を自らの手で守るために必要な国力強化についてお話いただきました。
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国際歴史論戦研究所会長 杉原誠四郎様
国際歴史論戦研究所会長の杉原誠四郎様は、「日本維新の会は教育関連の政策にも積極的で、以前には従軍慰安婦に関して強く追及を行い、朝日新聞や外務省も性奴隷という発言を撤回したことがあった。日本維新の会で教育関係の研究チームを立ち上げることはないか? また、選択的夫婦別姓の問題について、維新の会はどちらかというと賛成というお立場だが、これを変更されることはないのか?」と質問され、前原様は、「私はかつて教育無償化を実現する会を結成し、日本維新の会へ合流しており、日本維新の会では教育無償化を憲法に記載するべきという主張があったため、教育に関する研究については積極的にお引き受けしたい。選択的夫婦別姓については党内で様々な議論があり、全員がまとまって反対意見というわけでない。」と答えられました。
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慶應義塾大学名誉教授・公益財団法人アパ日本再興財団理事 塩澤修平様
慶應義塾大学名誉教授・公益財団法人アパ日本再興財団理事の塩澤修平様は、「経済安全保障、特にエネルギーと食料について、日本政府としてどのような議論から始めるべきか?」と質問され、前原様は、「エネルギーについては、今後AIや電気自動車が普及し電力消費量が増える一方、カーボンニュートラルの目標も両立させるには、現実的には原子力の再稼働が大きな方策となる。私は石破氏、武見敬三氏と共に議員立法により海洋基本法を制定させ、海洋エネルギーを利用した発電の普及を目指しているが、現時点では原子力に比べわずかな発電能力である。食料についてはゲノム編集の安全性に確たるものはなく、まずは伸びしろのある北海道の食料自給率を高めることが現実的だと考えている。」と答えられました。
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麗澤大学国際学部准教授・モラロジー道徳教育財団道徳科学研究所客員研究員 ジェイソン・モーガン様
麗澤大学国際学部准教授・モラロジー道徳教育財団道徳科学研究所客員研究員のジェイソン・モーガン様は、「アーリントン国立墓地と靖国神社を比較することについてお話したい。アーリントン国立墓地は2017年に安倍氏が献花をされたことでも知られる。死者の魂に対し敬意を表する文化は、日本が世界で一番進んでいると考えている。先の大戦でB29爆撃機に乗っていた人々が墜落した際にも、日本軍は石碑を建てる文化があったが、アメリカではありえないことで、非常に美しいものだと思う。また、日本人がアーリントン国立墓地に赴くのだから、アメリカの政治家も靖国神社に参拝すべきだという意見にも賛成である。一方で、靖国神社とアーリントン国立墓地には重要な違いがあり、例えばトランプ大統領が靖国神社に参拝することで、アメリカの靖国神社に対するタブーがなくなる、靖国神社の存在を容認してくれるという考えはいささか短絡的であり、そこには何か政治的もしくは戦略的な欺瞞があるのではないかと映る。私にとって、アーリントン国立墓地に眠っている人々は、私、そして人類の敵である。インディアンやベトナム、イラク、アフガニスタンに対し残虐な行為をした人々があの墓地に眠っている。またアーリントンという土地自体、元々南軍のロバート・E・リー将軍の住居だった周辺が南北戦争で北部軍に奪われ、墓地として聖地を汚すような恰好で使われた。また、そのロバート・リー将軍も奴隷を働かせており、さらにジョージ・ワシントンの義理の息子がアーリントンに引っ越した際、多くの奴隷を連れてきて働かせている。また、ナコッチャタンクという先住民をはじめ、少なくとも4000年以上前からネイティブ・アメリカンがアーリントンに住んでいたが、彼らも殺戮や搾取されてその身を追われるなど、アーリントンという土地には虐殺や人種差別の歴史がある。こうしたことは靖国神社にはなく、また英霊が目指したものとは正反対のことである。英霊は奴隷を持たず、アジアの解放を目指した20世紀のヒーローであり、その英霊が眠る靖国神社とアーリントン国立墓地を同一視することは英霊に対する侮辱だと考える。アーリントン国立墓地が靖国神社と同じだとする考えは、おそらく親米保守の勢力による欺瞞ではないか。私は絶対にアーリントン国立墓地には行かない一方で、英霊のために靖国神社参拝を今後も続けていきたい。」とアーリントン国立墓地と靖国神社の違いについてお話されました。
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ニューヨーク大坪不動産社長、事業創造大学院大学客員教授 大坪賢次様
ニューヨーク大坪不動産社長、事業創造大学院大学客員教授の大坪賢次様は、「ニューヨークに在住する身として、今回の米大統領選挙がどういったものだったかお話したい。まず、ドナルド・トランプについて私の知る範囲でお伝えする。私がアメリカでコンサル会社を経営していたころ、会社が急速に大きくなり社員100人ほどの大きな会社となった。私も少し有名になり、ゴルフ場へ招待され、ニュージャージーのゴルフ場で会員に、そしてそこで理事となった。10数人ほどの理事会には当時のニューヨークタイムズの社長や共和党の委員長らがおり、彼らを通じてトランプ氏とも知り合う機会を得た。お互いの事務所がニューヨーク五番街のトランプタワーとオリンピックタワーで近かったため、よく一緒に食事もしていた。彼は食事のお金は必ず自分で出すし、顔も広くて様々な人を紹介してくれ、とても魅力的な面があった。それゆえ、彼をよく知る人物ほどトランプを応援していたわけだが、実際には昨年の米大統領選挙は非常に拮抗した争いとなっていた。まずバイデン前大統領との争いでターニングポイントとなったのが6月末のテレビ討論会であった。SNSが発達した現代でもなおテレビ討論会は重要なターニングポイントであり、声がかすれ顔色も悪かったバイデン氏に対し、民主党内からも候補を変える意見が続出し、カマラ・ハリス副大統領が新候補となった。彼女は検察官出身で弁は立ち、一時はトランプ氏を凌ぐ勢いとなったが、実際に彼女の発言を聞いてみるとバイデン氏の政策を引き継ぐだけで自身の政策がなかった。また、現在のアメリカは物価高や戦争への懸念から、トランプ氏のような強い指導者を求めていた。結果、メディアの予想に反してトランプ氏が完勝する結果となった。翻って日本についてだが、残念ながらニューヨークで日本が話題になることは少ない。一度ニューヨーク市長と食事をした際に、私のひと言で市長が大使公邸で開催した天皇誕生日の祝賀会に来たことがあった。というのも、駐米大使から送った招待状が市長のところまで届いておらず、私が声を掛けるまで市長は祝賀会の存在を知らなかったのである。200以上在外公館があるニューヨークにおいて、日本の大使が埋没してしまっていた。日本の政治家には主張を明確にしていただき、トランプのような強い政治家のいる国と渡り合える素晴らしい国になっていただきたい。」とニューヨークから見たアメリカ、そして日本の現状についてお話されました。
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政治評論家、元自民党政務調査会調査役 田村重信様
政治評論家、元自民党政務調査会調査役の田村重信様は、「憲法改正において自衛隊を軍隊にすることは極めて重要であるが、それには自民党立党の精神が重要である。昭和30年に保守合同があり自民党が立党したが、綱領には『自主独立の完成を期する』という表現があり、現行憲法の自主的改正、自衛軍備を備える意思がすでにこの時期からあった。今こそ占領憲法からの脱却を図り、真の独立国家を目指すべきである。日本国憲法の最大の欠点は、平和時にどうするかという記述はあるものの、実際に戦争が起こったような有事の際に日本がどう行動すべきか、つまり戦争を行う軍隊に関する具体的な規定が何も盛り込まれていない点である。私は自民党政務調査会にて、小泉政権の2005年に森喜朗氏を起草の委員長とし、それから安全保障の問題は福田康夫氏が中心となって、その他石破茂氏や岩谷毅氏などと議論した上で新憲法草案というものを作成した。その際には自衛隊を『自衛軍』と記載していたが、その後自民党が野党になった際に新憲法草案をリニューアルして『国防軍』に変化し、第二次安倍政権の際に再度私が『改正・日本国憲法』という本を安倍氏のところへ持っていったところ、アベノミクスとの関係ですぐには対応していただけず、しばらくして安倍氏に推薦をいただいた。しかし、その際に安倍氏の要望により、結局自衛隊として憲法に明記する道を目指すことになった。しかし、自衛隊という表記だと諸外国の軍隊と同様の活動ができず、必要最小限度の能力しか有せない。同時期に集団的自衛権の一部行使が可能になり、自衛隊が米軍に協力できるようにはなったものの、それではやはり不十分であり、トランプ政権が自国の安全は自国で守れと主張することを考えると、やはり軍隊としての憲法明記が必要である。私は国防を専門とする前は農林・水産を担当していたが、北洋漁業の減船などがあり魚の消費が減少するなど、水産の問題が深刻であった。そこで、『魚を食べると頭がよくなる』とキャンペーンを行い、『おさかな天国』という歌を創ってそれが大ヒットし、魚の消費量拡大につなげた事例があった。私は憲法改正について本も出したが、歌も創ろうということでこのような歌を作り、YouTubeにもアップロードして憲法改正の大切さを訴えている。」とお話いただき、続いて自ら原案・企画された『憲法よりも大事なもの』というオリジナルソングを流して、憲法改正の重要性を訴えられました。
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一般社団法人シベリヤ抑留解明の会理事長 近藤建様
一般社団法人シベリヤ抑留解明の会理事長の近藤建様は、「先ほどの田村先生の歌を聞き、自民党が議会で改憲勢力を有していたにも関わらず、何もしなかったやるせなさを再度覚えた。そうした中ではあるが、ぜひ田村先生には憲法改正をご推進いただきたい。」と発言され、田村様は、「農林・水産を担当し、『おさかな天国』がヒットした際に強く思ったが、歌による力は絶大なものがある。本日お聞きいただいた歌が世間で話題になり、憲法改正の機運が高まることを期待している。」と答えられました。
塾生より「日本と欧米の強さについて、かつて岩倉具視氏は宗教の有無、キリスト教国家であることを挙げていた。現代において、無宗教の中で軍備を強化しても、実際に自衛隊が国のために人命を奪うということができるだろうか。」と質問され、前原様は「私が民主党、野党側の責任者として有事法制と国民保護法制をまとめる議論においても自衛隊の方から的確なアドバイスをいただいたこともあった。彼らは国会議員も自衛官も有事の際には命を捨てる覚悟がある点で同じであると考えており、今おられる方々についての心配はない。一方で、これからは人手不足にどう対処して国家のために働く人材を育てられるかが課題となる。」と答えられ、田村様は「今の自衛隊の方々でも、国家と国民の安全を守るために相手を殺害することもできる。」と答えられました。
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日本体育大学教授 岡田隆様
日本体育大学教授の岡田隆様は、「日本を強く、日本人が誇りを持てるようにと思い、教育とスポーツの活動を行っている。その思いが強くなったのが2023年にイスラエルに滞在していた際、ハマスとの戦争に直面した時であり、本日この場でお話する機会を得たことを嬉しく思う。私は日本体育大学で教師を行っており、ボディビルダーとしても活動している。また、柔道の全日本男子チームにて、2021年の東京オリンピックまで体力強化部門長として活動していたが、その際に多くの代表選手からも日本への誇り、国旗を表彰台の高いところに掲げたいという思いも強く感じた。私は体作りの専門家として、子どもの体力低下の解決や健康寿命の延伸を通じて日本に貢献したいと考えている。そこでイスラエルの戦争の中で、ボディビルをやっていた仲間が突然軍服に身を包んだのを見て、日本人が同じような行動力を持てるのかと不安に思った。日本人が誇りや自信を持てないという現象がスポーツの世界にも影響を及ぼしており、例えば柔道でも欧米人のような筋肉量を日本人がつけられないという思い込みがあったが、私が科学を以って体力強化を改革していき、欧米に負けない筋肉量をつけられることを柔道界で証明した。私自身も2年前のボディビル世界選手権で優勝し、日本人でもできるんだということを見せ、また科学者として検証、日本人の体作りに生かしている。冒頭でお話したイスラエルでの戦争体験についてだが、2021年からイスラエル・テルアビブ大学のZeevi Dvir教授と共同研究しており、同国のウィンゲート大学客員研究員としても活動していたため、イスラエルに滞在していた際、突然爆音が鳴りサイレンが鳴り響く状況となった。平和だった環境が一瞬にして戦争になることを実感し、常に準備することの重要性、そして自分自身の心と体を鍛錬することやこうした平和な日本を作った先人への感謝を忘れてはいけないということを心の底から感じる出来事であった。」と、体育の面から日本人の誇りと自信を持たせるための活動について話されました。
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第29代航空幕僚長 田母神俊雄様
第29代航空幕僚長の田母神俊雄様は、「私が航空自衛隊に入隊した昭和46年ごろは竹島の上空を航空自衛隊のF‐86が飛行していた。また、魚釣島の近くも海上自衛隊のP‐3が超低空を飛行していたが、やがて日本政府から飛行をやめろと要請された。日本政府が問題が起きることを恐れすぎたあまり、他国の実効支配を許し、国益を失う結果になっている。大人の対応も結果として不利になるのであれば、それは間違った対応になってしまう。今回の防衛費増により、自衛隊もようやく十分に稼働できる体制が整うが、その際に戦闘機やミサイル部隊に加えて戦術データリンクによる部隊間の情報交換が重要である。しかし、このデータリンクシステムや戦闘機のソフトウェアなどはアメリカからの部品や整備支援を受けて成立しており、兵器の国産化を目指さなければ国家としても自立することはできない。」と語られました。
最後に塾長は、「毎月10万部以上発行しているアップルタウンで掲載している『APA的座右の銘』で、今月は『正しいことをするのに 臆しては いけない』と記している。『座右の銘』というかたちで私の考え方や生き様を毎月掲載しているので、過去のものも含めてご覧いただきたい。私は事業活動で成功し、日本のために多くの納税義務を果たしてきた。税金を逃れることが良いことだという風潮があるが、日本のインフラを使って事業をしているのであるから、国のためにはしっかりと利益を出して税金を納めるべきだというのが私の考えである。」と話し、会を締め括りました。