第162回 勝兵塾月例会レポート

公開日:2024/12/23


塾長・最高顧問 元谷 外志雄

勝兵塾第162回月例会が、12月19日にアパグループ東京本社で開催されました。
 冒頭のアパグループ元谷外志雄会長による塾長挨拶では、「毎月東京・大阪・金沢の3会場で開催している月例会だが、講師の話を一方的に聞くような会になっている。私としては今後、この月例会が講師だけでなく参加者の方からも、反論も含めた多様な意見を出してもらい、双方から議論を交わし合う有意義な場となることを期待している。」と述べました。続いて、12月6日に明治記念館で開催された第七回アパ日本再興大賞・第十七回「真の近現代史観」懸賞論文受賞記念パーティーの模様を動画で視聴しました。


評論家、第1回アパ日本再興大賞最優秀賞受賞者 江崎道朗様

評論家、第1回アパ日本再興大賞最優秀賞受賞者の江崎道朗様は、「私がアパ日本再興大賞を受賞した際に審査委員を担当されていた、歴史学者の伊藤隆先生が先日ご逝去された。伊藤先生は我が国の近現代史の見直しが民間で積極的に行われている一方、アカデミズムの世界ではなかなか進んでいかないことを憂いていた。とりわけ、民間で取り組むにあたり、政府の公文書や、丁寧に事実を掘り起こした上で、アカデミズムに耐えうるような議論をしていくことが我が国は弱い点を憂いておられた。私はバルト3国や東欧諸国を渡り歩いてきたが、彼らはロシアの専制主義がそれらの諸国でいかに人権弾圧と国民の財産を侵害してきたかということと、それを正当化するプーチン主導の全体主義的国家といった歴史的事実をしっかりと認識した上で、自由と民主主義を守る立場から、近現代史の見直しに対し建設的な議論や資料の発掘を進めている。それに対し、日本ではそうした動きが乏しい。アパ日本再興財団の言論活動はそうした中で貴重な取り組みとなっており、田母神論文を国会で問題視した自民党が、その後与党から野党に転落するような歴史的な出来事も起きた。そうした中で誕生した第二次安倍政権では、安全保障政策の立て直しが行われた。国家安全保障戦略において、基本的には自国を自ら守る方針を持ちつつ、いざという際にはアメリカをはじめとする自由主義国家を味方に、ロシアや中国に対峙していく方針が立てられた。それに加え集団的自衛権の行使容認や特定秘密保護法成立による他国とのインテリジェンス共有など、外交戦略は飛躍的に進歩している。しかし、一方でそうした日本政府の外交戦略に対し、正しい理解をせず闇雲に『憲法が改正できていない』などと批判する声も多いのが事実である。直近ではウクライナとも機密共有を行っている。ウクライナはソ連時代KGBの情報処理の下請けを行っており、日本政府はその時期の軍事演習や中国、北朝鮮との連携に関する活動情報を入手しようとしているが、都合の悪い共産主義勢力から反発を受けている。私は共産主義勢力のインテリジェンスに関して専門的に研究を行っているが、彼らの典型的なやり方は反米運動、そして自国の自由主義政府に対する不信を扇動することである。日本政府、そしてアメリカへの批判を展開することで、日米、そして政府と国民の分断を画策し、中国共産党やロシアに都合のいいように操る工作手段を実施してくる。日本における典型的な例が二・二六事件である。高橋是清は世界恐慌の時代に大蔵大臣として金融緩和を推進し、日本をいち早く景気回復へ導いた立役者であるにも拘わらず、当時の自称愛国者が、高橋是清を不況の最大の原因と勘違いして彼を暗殺し、日本は緊縮財政に転じて経済的に苦しい状況に陥ってしまった。こうした、『財界と日本政府は信用できない』という不信を煽ったのが他ならぬ、当時の日本共産党とコミンテルンの指示を受けた学者たちであった。このような、一方的に反米や財界への不信を煽る議論に対して懐疑的に見ていくことが、真に日本を良くしていく上で大事な考え方である。」と、正しい歴史認識とそれを阻害する共産主義者の妨害活動についてお話しいただきました。


朝鮮近現代史研究所所長 松木國俊様

朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊様は、「日本ではここ数年、夫婦別姓制度や同性婚といった議論が高まっていたが、これは民主党のバイデン政権の影響もあったのではないか。その意味で自国第一主義のトランプ氏が当選・就任することにより、日本もそうした議論から逃れ自国を強くする、江崎先生の仰る『ストロング・ジャパン』を達成するチャンスではないかと思うがどう思われるか。」と質問され、江崎様は「夫婦別姓制度やLGBTに関する議論はアメリカの影響はあくまで小さく、公明党と自民党左派といった連立与党による意向が大きかった。LGBT法案についてエマニュエル大使が圧力を加えたことは事実だが、それは大使個人の意思によるところが大きい。ただ、アメリカでジェンダーフリーに関する議論がトランプ政権下で変わることは事実であり、米軍内の規律について、LGBTや気候変動対策に配慮する動きがバイデン政権下であった一方、先日可決された国防権限法内で出された国防予算の概要には米軍の活動に関する正常化という項目があり、その中でLGBTや気候変動対策といった軍事力・戦闘能力と関係ない問題に対する予算を削減する方針となった。しかし繰り返しになるが、日本の夫婦別姓制度やLGBTについてはアメリカの意向と関係なく政権与党によるものであり、そこを誤解するべきではない。」と答えられました。


歴史学者、日本経済大学准教授 久野潤様

歴史学者、日本経済大学准教授の久野潤様は、「大阪万博の開催が迫る中、大阪の政治勢力に対する好き嫌いで万博開催に対する賛否が分かれているが、万博や五輪といった国際社会に責任を持つ行事を開催しないことは責任放棄であり、考えられない。ただし、万博や五輪は国威発揚が主要なミッションである。そうした話を踏まえ、本題に入っていきたい。日本の陸海軍の起源がどこにあるか。建国は初代神武天皇が橿原宮で即位したことによるものだが、神武天皇は、後に神武東征と呼ばれるように、日向から出発し、九州、中国、関西地方と経由して大和へ入り建国している。日向には皇宮神社があり、その境内には皇紀2600年の記念事業として造られ、当時の陸軍参謀総長杉山元が揮毫した『皇宮発祥の地』という碑がある。そこから沖に出てお船出をした地が立磐神社となり、これまた当時の内閣総理大臣・海軍大将の米内光政が揮毫した『日本海軍発祥の地』の碑がある。すなわち当時の陸海軍トップが揮毫した通り、日本の国防は建国時から始まっており、またそのモニュメント建立の事実からは、建国から綿々と受け継がれてきた日本を護るという大東亜戦争の大義が窺い知れる。それだけではなく同時期には、東征の各所に神武天皇聖跡顕彰碑が計19箇所建てられているが、現在は地元でも知る人が少ない。このうち15箇所が関西地方に点在しており、冒頭に万博の話をしたが、その際に観光客へぜひアピールすべきという提案を兼ね、顕彰碑について神武東征の時系列に沿ってご紹介したい。神武天皇は吉備国の高島宮から海を渡り、現在の大阪に上陸する。その顕彰碑が大阪天満宮の境内にある。そこから生駒山で抵抗勢力である長髄彦(ながすねひこ)に遭い、我が国最初の合戦である孔舎衛坂(くさえのさか)の戦いが起こり神武天皇の兄の一人が負傷、その後死亡した。その戦場にも顕彰碑があるものの、放置された史跡となっている。合戦の後に一旦退き、体制を立て直した地、盾津にも顕彰碑がある。その後太陽の方角、大切なご先祖である天照大神のいる東に直接弓を引いたことが苦難の原因であると気付き、南への迂回を決意する。その決意の地は古事記と日本書紀で異なる説があり、それぞれの説に基づき2つの碑が建っている。その後、熊野へ迂回し、その際にも兄を失いつつ上陸した現在の和歌山県新宮市狭野にも顕彰碑があるが、住民運動の看板の隅に追いやられている。そして奈良に入り、大和平定の成否を占うために魚見石と呼ばれる占いを行い見事成功させた後、金色の光を放つ金鵄により長髄彦が退散し、その後抵抗する地方の豪族を討ち、今でいう大嘗祭を行い神様へ即位の報告を行ったが、これらの地にも石碑があり、大嘗祭の地は奈良県桜井の等彌神社となっている。しかしこれらの史跡の認知度が非常に低く、その多くは放置されている。ここで一度、建国の時代の日本人が現代にタイムスリップしてきた場合を想像してほしい。街の様子や服装も全く違うが、神武天皇から続く皇位の継承や、建国期の神様を祀る神社が続いていること、そして神武天皇の顕彰碑を見れば、彼らもここが日本であると認識できるだろう。そうした日本であり続けるために、これらの史跡を日本人が知って、万博という機会に国内外の観光客へ案内し広めていけるような体制が望ましいと考えている。」と神武天皇の史跡についてお話しいただきました。


英霊の名誉を守り顕彰する会会長 佐藤和夫様

英霊の名誉を守り顕彰する会会長の佐藤和夫様は、「年末ということで本年における私の活動について報告させていただく。24年は42回の講演会、14回のイベントを実施した。そのうちのいくつかをご紹介すると、まず能登半島地震の復興の意を込め、『レディ加賀』という加賀温泉が舞台の映画のチャリティ上映会を実施した。次に『安倍路線を継承せよ!』と題して、安倍元首相の死から2年が経ち、安倍批判が強まることを危惧し、安倍内閣の方針を継続すべく、複数の講師を招いて講演会を行った。また、勝兵塾の諸橋事務局長をお招きし、『義を見てせざるは勇無きなり』というタイトルで講演会を実施し、原田義昭氏をはじめ多くの方にご参加いただいた。今年総裁選に立候補した高市早苗氏の講演会も実施したが、参加者が非常に多く、高市氏を当選させたいという国民のムードを感じた。その他では、『歌で自衛隊を応援しよう』というテーマでの演奏会や、さらに今年のアパ日本再興大賞を受賞されたジェイソン・モーガン氏の出版記念講演会も開催した。その他アパ関連では6月のアパグループ創業祭や、元谷会長主催の『日本を語るワインの会』に2回参加した。次にデモ活動として、10月に池袋で反ワクチン運動を行い2万人が参加し、70年安保の頃のような盛大なデモとなった。この件で特徴的だったのは、活動家だけでなく一般の女性から関心を集めたことである。デモの模様は第二次トランプ政権下で厚生長官に起用されたロバート・F・ケネディ・ジュニア氏にも引用され、世界中に拡散された。その他の活動として、ニュー山王ホテル前にて日米合同委員会に対する抗議を実施した。日米合同委員会は日米地位協定の運用について協議しているが、彼らは巧妙に日本をアメリカの占領政策に閉じ込めている。日米合同委員会を鵜吞みにせず、日本の自立のために保守は行動しなければならないと感じる。慰霊の旅としては、四日市にある森田必勝の墓を訪問した。四日市は本居宣長ノ宮のある松阪市や伊勢神宮、橿原神宮に近く、日本古来の精神を育んだ土壌だと実感した。また、安倍氏の暗殺現場へ訪問すると花壇になっており、慰霊碑が霊園にあるものの、その霊園が非常に辺鄙なところにあり、地元の方も知らないような場所であったため、暗殺された事実が薄れてしまっているような印象を受けた。気になったニュースとしては、旧田中角栄邸、そして猪口邦子議員のマンションでそれぞれ火災があったことである。田中真紀子氏が機密費問題について言及したこと、猪口氏が夫婦別姓制度の反対論者であったことから、何か裏の原因があったのではと推察する。また、安倍昭恵氏がトランプに招待された。これはトランプからの、日米で共同してディープステートと戦おうという呼びかけだと私は理解している。最後に、英霊の名誉を守り顕彰する会の活動について。例年8月15日に靖国神社参拝をしていたが、それだけでなく紀元節である2月11日にも、大東亜戦争だけでなく古くから日本を護ってくれた全ての英霊に対する感謝の意をこめて靖国神社を参拝したい。ご参加いただいた方は会費無料で同会会員になっていただける。」とお話しされました。


文化随筆家、第9回真の近現代史観懸賞論文優秀賞受賞 騎士崚史朗様

文化随筆家、第9回真の近現代史観懸賞論文優秀賞受賞の騎士崚史朗様は、「国難といえる日本の状況下において、教育の大改革が喫緊の課題である。大東亜戦争の終結時、川端康成が奥さんに対して『占領軍が日本の教育を全て変え、日本は大きく変革するだろう』と嘆いたが、まさにその予言通りに占領軍によって日本が破壊された状態のままとなっている。戦前の教育では教えられていたが、戦後教育で削除されている4つの重要事項があるが、それは、神代の物語、國の成り立ち、歴史における我らが父祖の苦難の歩み、肇国以来の各天皇の事績である。これらの欠如により私たちは、日本人とは何者であるのかが分からず、アイデンティティや拠りどころがないままに生きている。占領軍は四大教育指令という名の下に教育の破壊工作を実施した。特に第三の指令は神道指令、すなわち国家と神道を分断するものであった。しかし、アメリカでも大統領就任式において聖書の上に手を置いて宣誓を行うように、政治と神聖な力は密接な関係を持つものであり、こうした指令は日本を分断統治して支配する策略に他ならない。こうした日本の戦後教育について、文芸評論家である保田與重郎氏は歴史教育の放棄により教養が欠如し、国民的自覚が欠如していると指摘している。占領軍は戦後教育について、反日教育、言論統制教育、反國史・反倫理道徳教育という三つの志向性を持たせた。反日教育とは東京裁判史観を基軸とした歴史教育であり、当時のパール判事が危惧したように、大東亜戦争に対し日本の帝国主義に原因があるとする自虐史観を持つことで日本国民は自国への誇りを現在に至るまで失ってしまった。言論統制教育は、昭和20年に占領軍からメディアに対して報道を禁じた30項目のことであり、これは現在まで継承されている。反國史・反倫理道徳教育は皇室につながる神代の物語、尊王思想を抱いた歴史的人物を抹消した教育であり、さらには『修身』という科目を抹消した。歴史人物譚を通じて徳を学び、國史と同時に道徳を学ぶ科目であった修身を復活させることが私の第一の提言である。また愛国心と軍国主義を混同する極左による妨害により、世界で日本のみが愛国心を教育現場で教えられておらず、社会に貢献する意識の欠如につながっている。戦前には実践されていたこの愛国心の醸成を教育が取り戻すため、その源泉である教育勅語を復活させ、日本の国体や道徳、倫理について学ぶことが第二の提言である。そうした中で、教育を司る文科省、そして省庁内のキャリア官僚にも問題がある。彼らは受験勉強において東京裁判史観を叩き込まれた上に、海外留学でグローバリズムに触れ、そうした思想に基づいて政策立案をするため、国益に沿った政策がなされない現状にある。警察官になる際の学校として警察学校があり、警察法や刑法、刑事訴訟法を叩き込まれるわけだが、同様にキャリア官僚へ官僚愛国学校に入学させ、真の近現代史観を学ばせ、愛国者として政策立案させることが第三の提言である。以上の提言を通じ、戦後教育の欠陥を改善させ国家の再興を図ることが急務であると考えている。」と、戦後日本教育の惨状および改善への提言についてお話しいただきました。

塾生より「日本は教育界をはじめ、報道やマスコミですらまだまだ東京裁判史観から抜け出せていない。政治の力だけで教育、特に国民の歴史観が変えられるのか、ということに疑問がある。国民の側から集団訴訟などを通じ、一大運動で変えることも手段ではないかと思うが、いかがお考えか。」と質問され、騎士様は「まずは正しい歴史観を持った、例えば安倍氏のような政治家がしっかりと権力を行使し、政策立案をすることが肝要である。具体的には先述した官僚愛国学校のような真の近現代史観を教える学校を創設するべきである。もちろん勝兵塾のような民間の議論する場も、それを後押しする大きな力となるであろう。」と答えられました。


大阪市立大学名誉教授、経済学博士 山下英次様

大阪市立大学名誉教授、経済学博士の山下英次様は、「1月25日に日本の真の独立を目指す有識者会議、ECAJTIの第1回公開シンポジウムを開催する。昨年4月に日米両国首脳に対し新しい自衛関係の在り方を書簡として公開したが、それに続いて今回はメディアに対し、戦後自虐史観によって日本国民を洗脳してきたことを告白し、懺悔することを求めるシンポジウムを予定している。これを基に国民的なメディア批判の運動を巻き起こしたいと考えているので、興味のある方は是非ご参加いただきたい。」と話されました。


一般社団法人空の神兵慰霊顕彰碑護持会代表理事 奥本康大様

一般社団法人空の神兵慰霊顕彰碑護持会代表理事の奥本康大様は、「『空の神兵』では現在、義烈空挺隊の顕彰碑を出撃場所の熊本健軍神社内に建立する活動をしている。その内容については本年10月号のアップルタウン『BIG TALK』にて元谷会長と対談した中にも書いているが、戦争の歴史が風化しつつある状況を止め、力強い日本を取り戻す活動の中で、現代の戦争を知らない方たちに学ぶ機会を与えるため、顕彰碑の建立を目指している。ぜひ多くの方からご賛同をいただきたいと思っているので、この場でご紹介させていただいた。」と話されました。