第158回 勝兵塾月例会レポート
公開日:2024/8/28
塾長・最高顧問 元谷 外志雄
勝兵塾第158回月例会が、8月8日にアパグループ東京本社で開催されました。
冒頭のアパグループ元谷外志雄会長による塾長挨拶では、「今回は都合がつかず参加できなかったが、例年出席している大東亜聖戦祭が今年も8月4日に斎行された。日本が戦わなければ、世界は未だ西洋列強による支配が続いていたかもしれない。負けたとはいえ、結果として人種平等の社会の到来を招いた大東亜戦争は聖戦であったということを伝えるため、金沢の石川護国神社に鉄筋コンクリート造の立派な大東亜聖戦大碑が2000年に建立された。機会があればぜひ足を運んでいただきたい。今回の勝兵塾も、本当はどうなのかを知る場となることを期待している。」と述べました。続いて7月26日に開業したアパホテル〈広島駅前新幹線口〉の開業披露式典の模様を動画で視聴しました。
衆議院議員 小田原潔様
衆議院議員の小田原潔様は、「私は自衛官の父を持っていたため、名誉ある殉職であれば家族も誇りを持てるが、無謀な犬死にをしてほしくないという思いを持つようになった。そして沖縄返還の際に、武力行使せずに領土を回復することができる外交の力に魅力を感じ、政界を志すようになった。庶民の出で、選挙で重要な地盤・看板・鞄はなかったため、自民党の公募に合計5回応募し、一度は出馬して落選したものの、その後東京21区での出馬の打診が自民党よりあった。この選挙区は、民主党の長島昭久氏の選挙区であり、自民党は20年間衆議院議員のいない選挙区だったが、火中の栗を拾うようなものと思いながらも出馬し、当選して以後4期12年間衆議院議員を務めている。近年、対中外交を進める中でインドと接近する機会に恵まれているが、インドはQUADに参加しながらも、保有する武器はロシア製である。モディ首相や外務大臣のジャイシャンカル氏もロシアの独立を尊重している。つまり、インドに西側諸国への不信が見られる。ジャイシャンカル外務大臣は2冊の著書、『インド外交の流儀』と『Why Bharat Matters?』を現役大臣でありながら出版した。“Bharat”はモディ首相が国際会議でのインドの表記として使用しているものであるが、これは古い王国があったインド北中部の地域の名前であり、本来はインド全体を呼称するものではない。さらに、“India”という呼び名自体は、現地語をペルシャ語、英語読みしたものであるにも拘らず、ここに来て新たに国名を定めようとしているのだ。インドの背景を語る上でもう一冊、ウィリアム・ダルリンプルの『略奪の帝国』をご紹介したい。当初は半官半民の貿易会社としてできた東インド会社が自警団として大きな軍隊を持ち、インドから行政権と立法権を受託するようになったが、収奪の限りを尽くした東インド会社が破綻して国有化された結果、インドがイギリスの植民地になったという歪んだ歴史がある。さらに、東京裁判で日本人の無罪を主張したパール判事について、パール判決書として有名な意見書に『時が熱狂と偏見をやわらげ、理性が虚偽からその仮面を剥ぎとった暁には、賞罰の多くが変化するだろう』というような内容があるが、この文章は彼のオリジナルではなく、元はジェファーソン・デイヴィスの言葉である。彼は南北戦争中の南側アメリカ連合国の大統領で、北軍の捕虜になったワーズ大尉が、仲間を裏切ることを拒み絞首刑にされたことを悼み著した論考の中でこの言葉を記している。パール判事はこの言葉を引用句で括り、引用であることを強調して意見書に記した。この引用は、間違いなくマッカーサーに向けてのものであり、パール判事が西側諸国へ向けたメッセージであると私は考察する。私たちはパール判事にインドの良心を見るわけだが、その良心を信じる一方で、インドが西側諸国を完全に信じ切っていないことにも注意しつつ外交政策に尽力していきたい。」と、インドの政治的立ち位置についてお話しいただきました。
早稲田大学名誉教授 相葉宏二様
早稲田大学名誉教授の相葉宏二様は、「大統領選を見ても分かるが、今のアメリカは内部対立が激しく、事実上分裂国家のようになっている。そこで本日は私の仮説である、世界が分裂する可能性についてお話したい。まず、われわれ自由主義国家の敵は誰か? イデオロギーを動機として自由主義国家と対立する中国、ロシアの存在があり、それらが国連で拒否権を持っているために国連は機能不全に陥っている。また、先進国にいる隠れ共産主義者も悪影響を及ぼしている。さらに、イデオロギーではなく経済的利益を動機として自由主義を脅かす軍産複合体や医療製薬複合体といった勢力も存在する。その中でアメリカがどこまで敵に浸透されているかであるが、学会、教育、主要メディア・SNS、民主党は大部分が、FBIやCIA、司法省などの政府機関や各州の司法は一部が浸透されている。こうした状況について、日本のメディアを見てもアメリカの保守側の情報は入ってこないため、自ら慎重に情報を得ることが必要である。ではなぜアメリカは分裂したのか? 旧来のアメリカは安定した二大政党制であったが、オバマ大統領以降に左傾化が制度化され、ポリティカルコレクトネスによる言論弾圧も盛んになった。トランプ氏が登場したことで左翼はあらゆる手段でトランプを排除し、バイデン大統領就任後に再度左傾化を進めている。その結果、共和党優位のレッドステートと民主党のブルーステートとで分裂が深刻化している。その状況で活躍しているのが隠れ共産主義者であるが、ソ連崩壊後の共産主義者は、かつての階級闘争ではなく、環境主義や人権主義に転換した。CO2削減で経済を弱体化させ、LGBTQや移民流入で家族制度、民族国家を破壊していく。その結果、西欧諸国ではイスラム移民が大量流入し治安が悪化しており、アメリカでも4年間で1,000万人もの不法移民で大混乱に陥っている。日本では中国系の勢力が伸長しているが、韓国国内の左派に比べるとまだ勢力が小さいというのが実状である。こうした違いの基礎にあるのは、文化の根底にあるキリスト教の有無である。西洋文明はキリスト教に基礎があるが、キリスト教ははるか昔に作られたものであるため現代科学と矛盾する点が生じ、新しい思想が入り込む余地が生じている。日本の場合は祖先と自然を崇める神道がベースにあることで、そうした揺らぎが生じない状況にある。最後に敵の今後について。中国・ロシアは経済と技術を自前で発展させたことがなく、自力での経済発展に限界があり、今後の見通しは暗い。最後に、アメリカで現在起きていることは昔から共産主義が主張してきたことであるとお伝えしたい。キューバ危機後に米下院で報告があった、共産主義者の活動としてのリストに、学校やメディア・出版社に浸透する、倫理を破壊するなどの、今まさにアメリカで行われている内容が記載されている。」と、アメリカ社会や世界の分裂に関する自説をお話しされました。
敬愛大学経済学部名誉教授 藪内正樹様
敬愛大学経済学部名誉教授の藪内正樹様は、「高校紛争を機に水俣病患者支援の活動に参加した。高度経済成長の受益者として、その成長の犠牲者がいることを許せないと感じた。その後公害に対する責任を企業や政府が認めたことで私は別の課題を探し、大学では原子力工学科に進学した。原子力発電の問題として、使用済み核燃料の最終処分がある。放射性の減衰・無害化に要する10万年間、生活環境に戻らない場所に置く必要があり、それには安定した地下300~500㍍の地層に埋めなければならない。しかし、日本には10万年間安定を保証できる地層はない。私は原発とは、利益を現在の世代が取り、負担を後続の世代に10万年間に亘って残すものであり、その上で国民が電力を欲するのかが焦点であると気付いた。今後の原子力政策を語る上で、過去の政策の問題点を反省する必要があると私は考える。戦後に保守革新合同で原子力基本法が成立し、原子力委員会が設置され、正力松太郎氏が委員長に就任した。彼は戦前の読売新聞社主であり、読売新聞や日本テレビで平和のための原子力を宣伝したが、彼がCIAの要請に協力していたことが明らかになっている。7~8年前のNHK番組で、通産省OBが『日本の原子力政策の司令塔についてヒアリングしたが、分からない。日本の原発推進政策は謎だ。』と発言していたが、司令塔はCIAだったのだ。当時の委員会には湯川秀樹博士も参加していたが、彼は基礎研究から急がずに行うべきと主張し、正力委員長と対立して辞任した。その後、日本は産業界の協力を取付け、原子力発電所の建設を急いだ。その際、一度の例外を除き全てアメリカのゼネラルエレクトリック社もしくはウェスティングハウス社の設計通りに建設することになった。福島第一原発もGEの設計通りとなっており、非常用電源室を地下に、しかも海側に設置したことが大きな過ちだった。アメリカではハリケーンを避けるために地下に設置していたが、それをそのまま流用したのである。またその他の過ちとして、原発の多重防護による安全性を強調するあまり、地域住民の避難訓練をしなかったことや、原発立地地域に多額の交付金を支払い、交付金なしには成り立たない社会にしたことが挙げられる。今年放送されたNHK福岡放送局のドキュメンタリー『膨張と忘却』は、吉岡斉氏という科学史家が遺した資料を追う内容であった。彼は政策決定過程の合理化・透明化・民主化を目指し、核燃料サイクル政策の経済合理性の無さを指摘し続けたが、原子力政策長期計画会議は裏で国と東電とで予算継続を決めていたのだ。原子力について、感情的に反対したり交付金を執拗に請求したりする勢力があるが、責任の大本は推進側にあるのではないかと思う。最後になるが、私は一時期発展途上国に役立つ仕事をと考え、JETROに入職して中国に駐在もしていた。そのご縁もあり、9月に『中華文明とは何か』というテーマで講演会を予定している。」と、原子力発電の問題点について話されました。
一般社団法人「空の神兵」慰霊顕彰碑護持会代表理事 奥本康大様
一般社団法人「空の神兵」慰霊顕彰碑護持会代表理事の奥本康大様は、「大東亜戦争を戦った義烈空挺隊の慰霊と顕彰の話をさせていただく。義烈空挺隊は平均年齢が25~26歳で、落下傘部隊ではあったが、パレンバンでの落下傘奇襲には船が沈没したため参加できなかった。その後も落下傘部隊として訓練を重ねたが作戦は実行されず、特攻隊として作戦に参加することになった。はじめはサイパン島への特攻隊として出撃命令が下ったが、給油基地である硫黄島がアメリカに制圧された。その後は硫黄島への出撃計画があったもののすでに制空権が奪われており断念された。最終的に、アメリカ軍に奪われた読谷の嘉手納飛行場へ強行着陸し、敵機を粉砕する作戦となった。そのように紆余曲折の中、約半年間に二度も特攻の覚悟をしながら一人の脱落者も出さなかった統率力は賞賛に値する。熊本健軍飛行場から沖縄へ昭和20年5月に出撃するが、隊長である奥山道郎大尉や諏訪部忠一大尉をはじめ皆晴れやかな顔で飛び立っていた。奥山隊長は出撃の際、『国のために出撃し、敵アメリカの心胆を震駭して成果を上げる』と立派な訓辞を述べている。具体的な戦果は当時の沖縄民が知るところではなく、残念ながらアメリカの報告書によるものだが、F4UやC‐47といったアメリカ軍機9機が破壊炎上し、29機が損傷。また、燃料集積所を破壊し7万ガロンのガソリンを燃焼させるという大戦果を挙げた。こうして沖縄を護った人々のことを現地でも知られず、さらには『沖縄は踏み台にされた、犬死にした』という誤解が蔓延しており、義烈空挺隊の戦果も評価されていない状況である。私は沖縄が変わらなければ日本が変わらないという思いで、義烈空挺隊の人々を慰霊顕彰する活動をしている。数年前に『義烈空挺隊の真実』という動画をアップし、現在までで35万回視聴されている。残念なことに、玉砕した地には地元読谷村の反対もあり、今もなお質素な木柱の碑しか立っていない。しかも、この碑は実際に特攻した場所ではなく、中学校を新設するにあたり碑を移動させられたのである。一方で、反日的な憲法9条の碑が読谷村役場内に設置されている。役場には広い庭の敷地があるにも拘わらず、なぜ義烈空挺隊の顕彰碑が建てられないかと悔しい気持ちである。私はいつも、英霊を二度死なせてはならないと考えている。一度目は肉体の死であり、二度目は記憶からの死である。そこで、沖縄での顕彰碑の代わりに、出撃基地のあった熊本県の健軍に顕彰碑を建立したいと考え、健軍神社に来年の5月を目標に顕彰碑を建立する準備をしている。また、大東亜戦争における分水嶺であったパレンバンにも植民地解放の碑を建てようという活動も行っている。浄財やクラウドファンディングを利用しながら実現したい。長者の万燈より貧者の一燈という言葉もある通り、多くの皆さまよりお力添えをいただきたい。」と、義烈空挺隊の慰霊と顕彰についてお話しいただきました。
一般社団法人シベリヤ抑留解明の会理事長 近藤建様
一般社団法人シベリヤ抑留解明の会理事長の近藤建様は、「明日8月9日に産経新聞全国版へ意見広告を掲載する。内容は以下のようになっている。今から79年前の昭和20年8月9日は、長崎に原爆が投下された日であると同時に、別の大きな悲劇が始まった日である。日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連は対日宣戦を行い、旧満州、北朝鮮、千島列島及び樺太の日本軍は戦闘状態に入ったが、8月14日にポツダム宣言を受諾し敗戦を受け入れた。米国連合国が敗戦日本の残留将兵、民間人を日本へ送還した一方で、ソ連は受諾を無視し、9月5日までの3週間日本に攻撃を加えた。『ダモイ東京』、東京に帰してやると日本人を騙し、極寒のシベリアへ将兵・民間人・女性を含め60万人以上を拉致し、過酷な強制労働を強い10万人以上が亡くなった。我々シベリア抑留解明の会は、①シベリア拉致 ②北方四島拉致強奪 ③北朝鮮の日本人拉致に対して公表すべく、5年半前から活動を開始した。北朝鮮拉致がブルーリボンバッジに象徴されるように、多くの日本人が関心を持っている一方、シベリア拉致については知らない日本人が多くなっている。2月7日は国が定めた『北方領土の日』であり、一昨年自民党は9月3日を『ロシアの北方領土不法占拠に抗議する日』と定めた。ロシアに不法占拠された北方四島に強く憤りを持って抗議している人は少なく、歴史が止まっているようにしか思えない。ロシアは79年前と変わらない非人道的で野蛮な侵略をウクライナで行っている。日本に対し、ロシアは近年新たな歴史戦を挑んでいる。北方領土不法占拠や強制抑留における奴隷労働の正当化、さらに昨年は9月3日を『対日戦争勝利の日』と制定したが、全く許すことのできない暴挙である。そこで私は北朝鮮拉致だけではなく、シベリア拉致、北方領土拉致占領についても国民共有認識とし、ツインバッジを象徴にしたい。私たち日本人は、8月9日を鎮魂の日とし、無法の歴史を決して忘れず心に刻み、日本の誇りを守り、御先祖様や英霊に報いるために抗議の活動をしなければならない。一般社団法人シベリア抑留解明の会の会長は田母神俊雄氏であり、私は理事長を務めている。当会を始める際、私は勝兵塾の場で運動について宣言し、それから5年半が経過している。8月15日に毎年、靖國神社前でパンフレットを配布している。この日にお詣りをされる方でも、シベリア抑留について知らない方が多い。昨年秋に内閣府が実施した北方領土に関する調査で、30代・20代以下の約49%が北方領土について『詳細は知らない』『言葉を知らない』と回答した。そうした状況下で、自分の怒りと少しでも御先祖のためになればという思いで活動を行っている。ツインバッジは1個千円で販売しているが、少しでも多くの国会議員、そして一般の方々に知ってもらい、日本人の皆さんの胸にツインバッジがつくその日まで、私は活動を行いたい。」と、北方領土に関する自身の活動についてお話しされました。
最後に塾長は、「第7回アパ日本再興大賞および第17回『真の近現代史観』懸賞論文の推薦・募集期間が今月末までとなっている。本当のことを知れば皆保守になるが、学校やメディアでもそういった機会がない。この勝兵塾は本当のことを知る機会として、今後も多くの方にお話しいただく場としていきたい。」と話し、会を締め括りました。