第157回 勝兵塾月例会レポート
公開日:2024/7/26
塾長・最高顧問 元谷 外志雄
勝兵塾第157回月例会が、7月18日にアパグループ東京本社で開催されました。
冒頭のアパグループ元谷外志雄会長による塾長挨拶では、「『本当はどうなのか』を知る機会となる場として、勝兵塾を東京・大阪・金沢で毎月開催している。なお東京では毎月第3木曜に開催しているが、8月は第3木曜が15日となりお盆のため、1週前倒しで第2木曜の8日に開催する。本日も活発な議論が行われることを期待したい。」と述べました。続いて6月3日に明治記念館で開催された、「アパグループ創業祭 並びに会長バースデーの会」の模様を動画で視聴しました。
元環境大臣・弁護士 原田義昭様
元環境大臣・弁護士の原田義昭様は、「元谷塾長のお言葉で印象的なのは、『二兎を追う者は二兎ともを得る』である。世の中の常識とは逆の発想で、恐れることなく事業活動と言論活動を両立させてこられた。私は小さい頃から勉強家であったが、最近新しく学ぶ知識のほとんどが勝兵塾から学んでいると言っても良い。私は28年間国会議員を務め、国会で永年在職表彰も受けた。長い議員生活は地元の皆さんに応援いただいたおかげであるということを忘れずに生きていきたいと思っている。議員生活の中では、環境大臣や内閣府特命担当大臣(原子力防災担当)を務め、自民党内の原子力発電所規制委員長も担当していた。そこで本日は原発の放射性廃棄物処理に関して、『大深度完全密閉方式』というものをご紹介したい。これは昨日に、私が日本放射性廃棄物処理研究会の代表として提案したものである。前提として原子力発電は人類にとって欠かすことのできない重要なものであり、2023年11月に行われたCOP28(国連環境会議)では、2050年の原発規模を2020年の3倍にすることが決議された。特に発展途上国で原子力発電が拡大する見込みである。一方で、高レベル放射性廃棄物の処理処分の技術が最大の課題となっている。現状では最終処理の技術が開発されていないため、各発電所の横に仮置き場を作り、プルトニウムを含んだ廃棄物を仮置きしている。反対派はそれを盾に新原発の建設や再稼働に反対している。原子力発電所規制委員会は、福島県のALPS処理水については国内外から反発を受けながらもなんとか海洋放出までこぎつけるなど、廃棄物処理について長年対策を続けてきた。『大深度完全密閉方式』とは、廃棄物を深度300~800㍍の大深度に地層処分するものである。廃棄物について私は、『地産地消であるべき』という考え方を提唱した。他地区に送り込むことは社会通念上困難であり、発生した場所で廃棄するべきという考えである。また、発電所付近の地域の産業基盤や社会基盤を整備するための、電源三法に基づく電源立地地域対策交付金という制度がある。そこに大深度に廃棄する地域については追加で交付金を出すようにすれば、周辺住民の理解受容を促進することができる。こうした地層処分についてはNUMO(原子力発電環境整備機構)という組織が先導しており、この取り組みについて原子力規制委員会、そして政府に納得していただき、国民の皆様にも賛成いただきたいと考えている。進行中の案件であるため、皆さまの支援等いただきながら本計画の実現に向け尽力していく。」と放射性廃棄物の新しい処理方法の提案についてご説明いただきました。
慶應義塾大学名誉教授・公益財団法人アパ日本再興財団理事 塩澤修平様
慶應義塾大学名誉教授・公益財団法人アパ日本再興財団理事の塩澤修平様は、「高濃度放射性廃棄物の廃棄について、大深度完全密閉方式は非常に素晴らしいものだと思う。一方で非科学的、感情的に反対してくる勢力も多いと思うが、それについてどのように対処していくのか。」と質問され、原田氏は「これまで科学的な説明が十分ではなく、反対派も聞く耳を持たなかったという点があった。特に政治家は、選挙への影響を恐れ、原発稼働については明言を避けていた。そこで今後は大深度の掘削や密閉手段について、専門の技術者を招き説明を尽くすことを心がけ、できるだけ多くの方々に納得していただき進めようと思っている。」と答えられました。
イスラム評論家・国際ジャーナリスト フマユーン・ムガール様
イスラム評論家・国際ジャーナリストのフマユーン・ムガール様は、「私が尊敬する、すでにお亡くなりになった方々の話をしたい。まずはアントニオ猪木氏である。彼とは40年以上前からの付き合いで、私が21歳で日本に来る前に、パキスタンではじめてお会いした。日本大使館から、現地で日本語が話せる学生をということで、私が猪木氏の通訳となって各地を一緒に回った。そのお陰もあって私は日本語が上達し、その後早稲田大学に留学した際に猪木氏と再会させていただき、色々とお世話になった。猪木氏はパキスタンの英雄的なプロレスラーと戦ったことで、現地で最も有名な日本人となっていた。彼はイラクでイスラム教に改宗しており、ムスリム名は『モハメッド・フセイン・イノキ』である。2012年に猪木氏が再度パキスタンに行く際にも同行させていただき、お墓参りや当時の大統領・首相と謁見したりした。その際、猪木氏を見に約5万人が集まったことからも、猪木氏がいかにパキスタンで尊敬されていたかが分かる。さらにパキスタンの全国テレビで生中継に出演した他、私の家族とも面会していただいた。闘病中はコロナ禍でなかなか面会できなかったが、最後にお会いできたのが、猪木氏と親しかったパキスタン大使が帰国するタイミングで、猪木氏が病院を抜け出してホテルで大使と私と三人でお会いしたときだった。これが、お亡くなりになる3カ月前のことだった。猪木氏の告別式は立派に執り行われたが、これは生前多くの方々に尊敬されていたからこそだと思う。次に尊敬する方が中村哲氏である。中村氏がパキスタンのペシャワールに病院を建てたことで、彼も現地で尊敬される日本人の一人となった。私が早稲田から九州大学に転校した際、中村氏に大変お世話になった。それから安倍元首相である。安倍氏の葬儀には、パキスタンの大統領・首相も含む世界中の要人たちが参列した。安部氏との関係は、熊本の幣立神宮で5年毎に行われる五色神祭で、安部昭恵さんが五色人の一人となり、私もそこに参加したことがきっかけで始まった。この祭りのことを大使に話したらパキスタン大使館でもこの五色神祭をやろうという話になったが、大使館から宗教関係のイベントを行うことに外務省に反対される中、安倍元首相に協力していただいて実現したということがあった。中村氏も安倍氏も素晴らしい人物だったが、奇遇にもどちらも殺されてしまったことを残念に思う。最後に歴史を語るにあたり、各時代で偉大な人物は誰かという話をしたい。イエスキリストを中心に、紀元前から現在まで2000年ずつのタームがある。紀元前にはモーゼやお釈迦様、イエスキリストを経て紀元後にはムハンマドが生まれているが、それ以降は偉大な人物が生まれていない。日本は2600年前の古くから神道が根付いている国であり、私は安倍氏が英霊となって日本人の魂を世界に知らしめる存在となるかもしれないと考えている。」と、尊敬する日本人について語られました。
在日本ルーマニア商工会議所会頭 酒生文弥様
在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥様は、「アントニオ猪木氏は北朝鮮にも訪問されていたかと思うが、日朝国交正常化に携わる身として、猪木氏が日本と朝鮮半島、さらには中国との関係についてどのようなビジョンを持っていたのか。」と質問され、ムガール様は、「猪木氏は特に拉致問題に注力されていた。彼は北朝鮮から親善勲章第1級を授与されており、英雄として北朝鮮でも扱われており、国交正常化のために尽力されていた。しかし優秀な政治的なブレーンがついていなかったため、外交戦略が上手くいかなかった面もあった。とはいえ北朝鮮だけでなく、湾岸戦争の際には在留日本人をチャーター便でイラクから帰国させるなど各方面で活動していた猪木氏であり、そうした外交面の働きについて今後も私が発信していきたい。」と回答されました。
アルファ・リード株式会社代表取締役・危機管理コンサルタント 丸谷元人様
アルファ・リード株式会社代表取締役・危機管理コンサルタントの丸谷元人様は、「私はかつて海外のハイリスク地域と呼ばれる国・地域の要人警護、情報収集を生業としていた。ハイリスク地域の一つ、パプアニューギニアに初めて行った際、かつて連合軍と戦った10万余の旧日本軍の遺骨が今なお散乱していることを知り衝撃を受けた。近年は中国の進出が激しくなっているが、パプアニューギニアは親日国であり、日本兵がいつか帰ってくることを信じて疑わない現地の方々が数多くいた。その後、ナイジェリアでもボコハラムやニジェールデルタ解放戦線などのテロ対策や、日本の駐在員の警護警備・情報収集に当たった。そうして得た知見を活かし、現在日本企業のセキュリティ、危機管理対策を担う会社を経営している。日本の官民双方に共通した課題として、人事異動が多くセキュリティ担当者の知見や人脈が蓄積されないということがあり、これが日本を弱くしている原因だと思う。また海外の危険な地域に進出する際に、現地でのリアルな経験や危機感が足りないために事件に巻き込まれるリスクも無視できない。私の会社では経営者の方々に戦術射撃や身辺警護の訓練を体験してもらっている。そうした体験をすると、実際に発生したテロ事件についても、日本の報道と実際の状況が大きく乖離していることが分かる。先日のトランプ氏狙撃事件についても、あんなに近距離まで大きな銃を持って接近できることは通常は考えられないので、政治的に仕組まれた暗殺計画だったのではないかと思っている。アメリカは2020年頃から内戦の機運が高まっており、ANTIFAやブラック・ライヴズ・マターなどは、私からは紅衛兵のように見えている。もし今回トランプ氏が暗殺されていたら一気に内戦状態に傾いていただろうし、今後もそうした危険性がある。私は各国の情勢を調査する上で、お金と武器の流れを注視するようにしている。ウクライナ戦争においては、ウクライナ空軍がロシア系の兵器システムを使っていたため欧米製の航空兵器を使えず、陸上兵器が売れた、反対にガザ地区の空爆では航空兵器が非常に売れていた。ちなみに、ハマスの攻撃前にアメリカの民主党議員が航空兵器産業の株を買い漁っていたようである。となると今後は海上兵器を売るインセンティブが高くなるが、四方を海に囲まれた日本においては海上兵器の需要が非常に高い。そのように政治的な意味だけでなく武器ビジネスの観点からも世界情勢を見ることが、これからの日本に求められるインテリジェンスだと思う。」と危機管理の観点から今後の日本に求められる視点について話されました。
大学教授(言語社会学専攻)・国際音楽メンタルセラピスト協会会長 山西敏博様
大学教授(言語社会学専攻)・国際音楽メンタルセラピスト協会会長の山西敏博様は、「この度の能登半島地震に際して、ボランティア活動を展開している。それに関連して、『災害に負けるな』というテーマでお話させていただく。能登半島地震が起こり、しばらくは支援活動の自粛を求められていたため、余震がひと段落した後に支援活動を行った。キゴ山研修センターという金沢にある施設に赴いたが、そこは輪島で被災された方々の避難所になっていた。そこで私は励ます言葉として、『だいじ』という言葉をかけた。『だいじ』は栃木弁で大丈夫という意味があり、また自分自身が大切だという意味でもある。そこで逆に被災者の方々から私を励ましてくださり、『地震、津波があったからこそあなたに会えた』と言っていただき、支え合いの精神を被災者の方から感じたことが強く心に残っている。具体的な支援としては、私が運営している国際音楽メンタルセラピスト協会として少額ではあるが50万円と、山梨の支援者からいただいた70㌔のお米、そして宮城県の蒲鉾を持っていった。蒲鉾は南三陸の及善かまぼこ店からのもので、そこは東日本大震災で被災しながらも場所を変え営業を続けており、当時の天皇皇后両陛下、安倍元首相も訪れたお店である。その10万円相当の高級な蒲鉾を、店主さんが七尾の商店街の人にお渡しし、『ここで売って収益は自分のものにしていいよ』とほとんど寄付に近いような、心の広い支援をしていただいた。ご本人も東日本大震災で被災したことでそうした助け合いの意識が芽生えるようになったそうで、大変素晴らしいことである。最後に、アパグループが災害に際して行った活動についても触れたい。2018年の西日本豪雨の際に1億円とアパ社長カレー1万食を寄付されたこと、また新型コロナの際には宿泊療養・検疫施設として自治体・省庁にホテル業界を率先して施設貸出を行ったこと。今回の能登半島地震でもお水とカレーの管理物件への提供、二次避難先としてのホテルの提供などご尽力され、元谷外志雄会長や一志CEOも被災地訪問したと伺っている。是非アパへ宿泊やカレーの購入などで応援したい、今回の157回月例会にかけて、『アパに行こうな(157)!』という気持ちである。このような形で自分を元気にする言葉をテーマに、メンタルセラピストとして引き続き活動を続けていく。」と実際のボランティア活動経験を交えながら、復興に関するお話をいただきました。
埼玉県議会議員 諸井真英様
埼玉県議会議員の諸井真英様は、「私は20代にサッカー選手としてブラジルに留学し、小野田寛郎氏にインタビューする機会があり、小野田氏が明言はされなかったものの今の日本に失望されているような印象を受けたことが、政治の世界に入ったきっかけである。その後は中川昭一元財務大臣の秘書を務めた。中川昭一氏からは選挙対策に奔走するのではなく、本当に日本のために大事なことを考えて活動することを教わった。後に埼玉県議会議員となり、現在5期目である。実は今年の3月15日に、県議会の自民党会派から除名処分を受け、会派に属さない議員として活動している。昨年の10月に県議会で小学生の留守番禁止に関する条例案が上がり、私は自民党会派の中で唯一反対したが、周りからは県議会の有力者が推進していて逆らえないと言われてしまった。しかし、本条例案は報道でも問題となり県民、さらに全国からも様々な意見が届いたため、常任委員会を通過した後に本会議で取下げとなる異例の事態となったが、県議会では誰も責任を取らなかった。また埼玉県議会は、国会よりも早く2022年にいわゆるLGBTQ条例、正式には『埼玉県性の多様性を尊重した社会づくり条例』を可決した。その際にも私は反対していたが、数の力で押し切られ、採決の際には私は退席した。国会のLGBTQ理解増進法と県条例の違いとして、県条例には国の理解増進法にはない、『性自認による差別をしてはならない』という一文が入っている点である。そうなると、例えばLGBTQのQ(Questioning)とは自身の性自認が定まっていない人を指すが、その人の気分に応じて男子トイレや女子トイレに入ったりすることを尊重しなければならなくなる。昨今、盗撮などの問題も出てきている中、そうした安全・安心を脅かすような社会を本当に国民が望んでいるのかという疑問がある。本条例の成立は2022年の7月で、当時安倍元総理から私のところにコンタクトがあり、当時は参院選中だったため、選挙後に詳しくお話を聞きたいという話になっていた中であの事件が起こった。今年の4月に安倍氏のお墓参りに萩に行き、松陰神社へ伺ったところ、吉田松陰が獄中にて、自分の死を悲しむよりも自分の志を大きくしてほしいと弟子に伝えていたことを知った。私も中川昭一氏、安倍元総理の思いを継いでこれからも活動していきたい。」とLGBTQの過剰な権利保護に対する問題点についてご説明されました。
最後に塾長は、「今回の勝兵塾月例会も様々な観点からの講義があったが、もっと参加者同士で議論の場になってほしいと思う。次回以降は意見に対し、賛成や反対など多様な考えを披露する場にしていきたい。」と話し、今後の月例会の方針について触れられた上で、会を締めくくりました。