第155回 勝兵塾月例会レポート
公開日:2024/5/28
塾長・最高顧問 元谷 外志雄
勝兵塾第155回月例会が、5月16日にアパグループ東京本社で開催されました。
冒頭のアパグループ元谷外志雄会長による塾長挨拶では、「勝兵塾はできるだけ多くの方々からご意見を頂くことを重視し、発表時間を1人10分程度と短く設定している。今回も色々な意見が交わされる場となることを期待している。」と述べました。続いて、アパグループ元谷一志社長兼CEOが出演した、不動産メディア大手『楽待』のYouTube動画『アパ流ホテル経営術(前編)』を視聴しました。
比較文学学者、文化批評家 金文学様
比較文学学者、文化批評家の金文学様は、「私は中国・瀋陽が出生地だが、両親は韓国人で、現在は日本国籍を持っている。これら3カ国はいずれも私の祖国、バックボーンであることから、日韓中の比較文化論を研究してきた。根本的な違いとして、日本が島国であり農耕・漁業文化が中心であったのに対し、中韓は農耕・牧畜文化であったことが挙げられる。漁業文化が定住しながら集団を形成するのに対し、牧畜文化は移動して縄張りを争い、家畜の屠殺にも長けているため、宦官や纏足といった人体に傷をつけるような、日本にはない風習が中韓にはあった。日本の精神に特徴的なのは『和』の精神である。これは平和を愛して調和を保ち、集団利益のためには適度に自分の利益を犠牲にする、神道がベースとなった考え方である。一方、中国は『闘』の精神である。中国の歴史は戦争の歴史であり、新しい勢力がその時の国家や君主を滅ぼして、自らが権力を得る歴史である。そのDNAを受け継いでいる中国人は、全世界に点在し、そこで強い生命力を発揮する。彼らは周りよりも自分自身を優先し、独立したコミュニティを形成する傾向にある。そして韓国は『情』の精神であり、豊かな感性・感情を発散することを美徳としている。日本人は和を重視するため、感情を抑制することを美徳とする点で違いがある。文化に対する国民の意識でいうと、中韓は国境を接する隣国や異文化があるため、自国の文化に対する国民意識は高い。日本は島国であるがゆえに近接した国家がなく、異文化に対する意識も領土に対する意識も低いように感じる。日本人は中国文明に対して強い憧れを持っているが、その憧れの本質が何かということに対して日本では研究は進んでいない。中国の研究者も中国共産党による買収などもあり、純粋な研究は難しい。少し前に私は『新・「NO」と言える日本』という本を著した。このタイトルは、石原慎太郎氏の書籍の延長線上にあるという想いで付けたものである。石原氏がアメリカを意識していたのに対し、私は中国に対し『NO』と言おうという趣旨で書いている。比較文化学者の私から見て、こんなに安全で国民の教養が高い国は世界に類を見ない。ある意味、聖域として神に守られているような国である。だからこそ、岸田首相が移民政策を積極的に取り入れていることに対して異議を唱えたい。日本は今や移民大国となっており、在留外国人が約300万人、そのうち中国は80万人以上いる状況である。生態系の話でよく、外来種によって在来種の環境が脅かされることがあるが、人間も同様である。開放するばかりが良いこととは限らない。ある程度鎖国することも大事であり、私は永住権制度を改革するべきだと考える。帰化のハードルを高くして、非常に人材として優れていたり、日本の文化や国民を愛しているかを試験し、それをクリアした人間だけに永住権を与えるべきだ。日本の文化を守るためにはある程度閉鎖的な政策も必要である。」と素晴らしい日本の文化をいかにして守るべきかについて話されました。
史実を世界に発信する会 会長 茂木弘道様
史実を世界に発信する会 会長の茂木弘道様は、「4月に出版した『日中戦争真逆の真相』という本は、『日本が中国を侵略した』と誤って定着している日本侵略者説を、徹底的に論破する目的で書いた。中国は侵略を受けたとして日本を非難してきたが、そもそも『日中戦争が中国国内で戦ったから侵略に決まっている』というのが錯覚なのである。実際には、義和団事件以降に日本軍は居留民保護の目的で合法的に中国に駐屯していた、当時わずか約5千人の日本軍が、一方的に中国から攻撃されて開戦したのが日中戦争である。始まりは昭和12年の盧溝橋事件であるが、夜間演習中の日本軍歩兵連隊に対して実弾が打ち込まれたことがきっかけである。事件発生4日後、両軍で結ばれた現地停戦協定には第一項で中国軍が日本軍への発砲を謝罪しており、これは中国側から攻撃を仕掛けたという明白な証拠であるにも拘らず、どの教科書にも盧溝橋事件が起こったとしか記述されていない。なお、『新しい歴史教科書をつくる会』の教科書には現地停戦協定の原文を掲載している。そして発砲事件の実行犯は中国軍に潜入していた共産党員であり、停戦協定後もコミンテルン指令のもと、日中全面衝突の目的達成のため要人の抹殺も辞さない活動を展開する。そこで日本軍は居留民の安全確保、自衛権行使のためにやむなく追加の派兵を決断した。その矢先に7月29日に通州事件が起こる。これは日本人・朝鮮人居留民と日本軍守備隊計257名が惨殺された事件であり、これを機に日本国内では暴支膺懲と呼ばれる反中ムードが巻き起こった。しかし日本政府はこのムードに与せず、『船津和平案』と呼ばれる、日本が満洲事変以降に北支で得た権益のほとんどを返還する代わりに、日本・満洲・中国政府で共同して共産党に対抗するという画期的な和平案を決定した。しかし、和平交渉中に上海の日本軍の大山中尉が中国軍保安隊に惨殺される事件が起き、交渉は雲散霧消した。その後8月に、中国軍は全国総動員令を出して大本営を設置し、上海に70万もの軍隊を投入した。戦線を拡大させたのは中国の方であり、日本は上海の防衛を強いられた。私に言わせると、これは上海事変ではなく、もはや全面的な戦争である。日本は苦戦しながらも防衛に成功し、ドイツのトラウトマンを仲介役に和平交渉までこぎつけた。きわめて穏健な内容であるとドイツからも評価された和平案にも拘わらず、蒋介石は再三にわたり拒絶したことで、日本もとうとう堪忍袋の緒が切れ、和平から方針転換し、最終的には昭和13年1月16日に近衛首相声明として『国民政府を対手とせず』と発し、戦争が泥沼化した。付け加えると、大陸侵略を日本の軍部強硬派が先導した、というのも嘘であり、むしろ近衛声明が中国との長期戦を招くとして最後まで反対したのは陸軍参謀本部であった。まとめると、日中戦争の原因を作ったのは中国共産党なのであり、これを日本の中国に対する侵略戦争とするのは大きな間違いである。」と熱弁されました。
日本戦略情報研究所長 林文隆様
日本戦略情報研究所長の林文隆様は、「日本が今後に大繁栄の時代を迎える可能性についてお話したい。バブル崩壊以降、全く経済成長できなかった日本だが、一方で超円高時代の中で日本企業は効率化、グローバル化を進めた。第二次産業を例にとると、家電や繊維といったBtoC、すなわち消費者向けの製品から、企業向け・政府向けの高度な製品に転換していった。最先端技術として、物質に質量をもたらすヒッグス粒子の検出装置がスイスにあるが、その心臓部となる超電導線材は日本企業の独壇場である。また、アメリカが長年にわたって研究した後に頓挫したレールガンを、日本が開発し、昨年に海上自衛隊が世界初の洋上射撃試験を実施した。そのように技術の面で日本が世界に誇れる点は多い。経済を成長させる要素として、第一義的には物質的な資源国が有利とされていた。しかし実際には日本やドイツのように、物質的な資源はないが人的資源のある国が20世紀以降に経済成長してきた。日本は今後、金融政策ではなく財政政策に力を入れるべきであり、日本の優れた技術に対して投資をするべきだ。現在の人工知能や量子コンピューターをはじめとする最新技術の要となるのは半導体であるが、ロシアや中国は半導体を自前で生産できず輸入に頼っているのに対し、日本は国内でほぼ一貫生産が可能である。これは半導体を作るために必要なクリーンルーム、電子制御の技術が日本企業で進んでいるためであり、日本の技術が半導体に不可欠である。また現在の半導体は電子制御であるから、使用の増加に応じて電気消費量、通信量が膨れ上がり、情報遅延が懸念される。そこで、電子ではなく光で制御する光半導体の開発をNTTが中核となって主導しており、これにより電気消費量を抑え、通信速度を向上させることができる。また、半導体を使う量子コンピューターも日本の研究が先行しており、エラーの少ない冷却原子型の量子コンピューターが実用化寸前となっている。また、量子コンピューターのエラー解決に寄与するマヨラナ粒子についても、今年3月に東京大学と京都大学が共同で観測に成功している。次に航空機製造の分野でも日本の技術が使われている。機体軽量化のために炭素繊維複合材料を使用しているが、エンジンの部分の金属とくっつかないような炭素繊維が求められる。日本の、特に東レの炭素繊維は溶けないので、世界中の航空機に使用されている。また、戦闘機にもチタン合金ではなく軽量化のために炭素繊維を使用する動きがでており、非常に難しい技術だが日本カーボンの繊維は搭載することが可能である。このように素晴らしい技術を持つ日本であるが、GDPという観点から見ると世界第4位に落ち、そう遠くない未来に順位がさらに低下することが予想される。しかし、グローバル化した現代社会で重要となるのはGDPではなく、本当の暮らしの豊かさを図る指標として、人的資本、生産資本、社会関係資本、天然資本を用い、国連の委託を受けた研究チームが『総合的富裕度報告書2012』を発表したところ、人的資本の分野で日本が1位になった。GDPではない指標で見ると日本は今でも優れているのだ。今は国際的なパワーバランスの転換時期であると思われる。かつてオックスフォード大学が発表した覇権国家の寿命は約80~110年とされており、これは20世紀初頭から栄華を極めた米国の覇権が間もなく終わることを意味している。」と今後の日本が経済的に豊かになる希望について話されました。
早稲田大学非常勤講師 大場一央様
早稲田大学非常勤講師の大場一央様は、「早稲田大学、國學院大学、国士舘大学で陽明学や水戸学、吉田松陰といった中国および日本の思想について研究をしている。それらの思想に関する研究において、世に知られている考え方の中には実は間違っていることが多い。例えば水戸学では『国体』という言葉が有名だが、国体は天皇を中心とした国、という意味ではない。日本人はよく日本の精神や日本人の心といい、そうした考え方を好む傾向にあるが、現代はこれらの正しい意味を理解していない言説も多い。身近なところで『葉隠』と呼ばれる、『武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり』の一節が有名な書物であるが、この書物についても誤解されている点がある。『葉隠』は江戸時代中期に誕生した書物であったが、明治時代以降に広まり、第一次上海事変に敵陣を突破して自爆した『爆弾三勇士』の逸話として、彼らの行いが葉隠精神の発露と報道されたことで広く日本人の知ることとなり、戦前の精神に影響を与えた。その有名な一節だけを読むと、武士道=死ぬこととなるが、その続きを読むと、人というのはあれこれと理屈ばかり述べてごまかすことが多いとある。この書物が作られた江戸時代中期には武士も官僚化しており、政策に対して保身や既得権益の保持を目的として、適当な理屈をつけてごまかす武士が増えており、作者はそれに憤慨している。そうした生き方は武士らしくない。また、主君への忠誠や親孝行も自己正当化にはよく用いられる。そうした耳あたりの良い言葉で自己主張をすると、忠誠や親孝行同士で衝突が発生し、物事が進まなくなってしまう。そこで、ここでは『死に狂い』という表現をしているが、つまり保身はやめて常に死んでもいいという覚悟を持ち、思い切った決断をすることで、自ずと忠誠や親孝行を含む最も合理的な選択ができるようになり、その結果、武士として恥ずかしくない人生を送ることができるという意味である。そのためには、自分の主君や仕事を心底好きになって、そのためなら死んでも良いというくらいに向き合うことで、そうした死への覚悟が生まれるという記載がある。これを現代において考えると、政治や日常社会でも、色々と美辞麗句を並べた上っ面だけの考え方が出てくるが、そうした死の覚悟がない言葉に振り回されるのではなく、それぞれが日本のため自分自身が与えられた役割のために何ができるかということに純粋に向き合うことが大事であり、それによって日本全体の飛躍、日本復興が達成できるのではないか。これが戦前に陸海軍にて愛読された、『葉隠』の実際の解釈であり、そこに大東亜戦争中の優れた戦略・戦術の答えがあった。」と話されました。
元環境大臣、弁護士 原田義昭様
元環境大臣、弁護士の原田義昭様は、「冒頭に司会の諸橋事務局長から、本日の産経新聞に掲載された東海大学の山田吉彦教授による、交戦権を否定している現行憲法では自衛隊は尖閣を守れないという寄稿についてお話があった。最近の中国の尖閣諸島に対する挑発ぶりは腹に据えかねるところである。以前に私は、中国政府が過去に尖閣諸島について日本の領土であると明確に記載している古地図を発見し、平成27年の衆院予算委員会で発表した。中国政府は同資料に対し、百でも千でも反証があると強がりを言っていたが、結局何も言ってこなかった。中国の挑発に話を戻すと、海警船に対しては放水砲を撃つべきであると考え、4月に産経新聞へ寄稿し、WEB版に掲載された。なぜ放水砲かというと、中国が近時、南シナ海でフィリピンの公船に対して放水砲を頻繁に使用しており、中国が放水を正当と考えているからである。現状の外交的な抗議では無意味であり、政治家の決断やマスコミの役割と責任が問われると考えている。」と、尖閣諸島問題への対策について話されました。
参議院議員 石井苗子様
参議院議員の石井苗子様は、「日本は次期戦闘機を日英伊で共同開発し、その戦闘機の生産ラインを日本が主導し、10年後を目標に量産しようとしている。防衛力の抜本的な強化のために今後5年間で必要とされている支出額は約43兆円であり、防衛費総額としてGDPの2%に当たる金額をかけるわけだが、それに加えてウクライナに対して支援するか、という問題もある。岸田首相が訪米した際に日本はアメリカと共にあると発言したが、アメリカがウクライナへの軍事支援に対して追加予算を約9兆円計上しているのに対し、日本は追随するのかについても考えている最中である。現状の対外政策には問題点が山積している。有事が発生したときに戦う部隊は自衛隊ということになるが、憲法には『第9条』があるという矛盾した状態である。また総人員数が充実しておらず、採用も少なく定員割れしているのが現状である。その中で陸海空を横断的に総合作戦司令部というものを創設し、来年の4月に250名でスタートする予定だが、総司令官も決まっておらず、人員も集まっていない。防衛省は自衛隊について抜本的強化を図るというが、具体的にはサイバー人材を民間から増やし、5年間勤務した後に退職してもらう予定だという。この方針では自衛隊の抜本的強化にはつながらないではないか。このような課題を解決するために、参議院の外交防衛委員会の理事として日々奔走している。」と、日本の国防における問題点について語られました。
最後に塾長は、「今回も多くの方々から多様な観点でお話を頂き、本当はどうなのかということを参加者で考える勝兵塾の趣旨に沿った会となった。もし勝兵塾の月例会で発信したい意見のある方は申し出ていただければ可能な限り時間を取りたい。今後もこのような会を続けていきたい。」と述べ、会を締め括りました。