第140回 勝兵塾月例会レポート
公開日:2023/2/22
塾長・最高顧問 元谷 外志雄
勝兵塾第140回月例会が、2月16日にアパグループ東京本社で開催されました。
冒頭のアパグループの元谷外志雄会長による塾長挨拶では、「科学技術が発達してくると、領土、領海、領空から宇宙にまで対応していくような体制を取らないと、いつの間にか侵されてしまい、気付かずになし崩し的に自国の権益を失ってしまいかねない。「備えあれば患いなし」という言葉もあるように、覇権争いの中で、我が国も宇宙から深海まで十分な備えをしていく必要がある。特に深海では、無人潜水艦で自爆攻撃ができるようなものの開発を進めていくことが考えられる。そのような備えをして、危険に巻き込まれないようにしていく必要がある。」と述べました。
衆議院議員 空本誠喜様
衆議院議員の空本誠喜様は、「私の専門は原子力である。東京大学で博士号を取ってすぐに東芝に入社し、原子力事業部で研究開発のほか、定期検査や新しいプラントの設計開発にも携わった。政府は原子力発電所の再稼働を進めながら、新しい安全性の高い発電所プラントを作り直すという話がある。原発について政治の中で様々な議論をしているが、現実的かつ国民生活をしっかり守るような原子力発電所のあり方を考えていきたい。電気料金が高騰する中で皆さんに考えて頂きたいのは、石炭が全部悪なのかということである。石炭火力は確かにCO2をたくさん出すが、今は石炭ガス化燃料電池複合発電という、高効率かつ低炭素な新しいものができている。インドは14億人の人口を抱え、世界一の大国になろうとしている。モディ首相はこれから50%を再エネでと謳っているが、実際には、インドはCO2を大量に出している。ならば、石炭ガス化燃料電池複合発電といった高効率で低炭素な発電の技術を日本が持っているのだから、技術供与やインフラの輸出をするべきである。しかし、今は石炭と名が付けば、金融機関の融資は出ない。2月13日の予算委員会の一般質疑で、西村大臣と鈴木財務大臣・金融担当大臣に、高効率かつ低炭素の日本の優れた技術をインドに持って行き、その時には銀行のファイナンスをしっかり付けるべきとお願いした。日本の技術を海外にどんどん供与していき、日本の地位を高め、もう一度技術大国になっていくべきである。もう一点残念な話は、電気自動車社会が来ると言われているが、そこで握られているのが、リチウムとニッケルというレアメタルである。これをどうやって日本が獲得していくかという経済安全保障をしっかり確立していかなければならない。TSMCが熊本で大きな工場を造るが、そこで作るのは少し古いタイプの半導体である。回路の線の幅が10ナノ、20ナノと言われているが、より幅の狭い新しい半導体を日本が造らなければならない。今は台湾が技術を持っているが、半導体産業をもう一度日本で大構築する必要がある。エルピーダメモリが倒産したときにも私は国にお願いしたが、今こそ半導体産業のあるべき姿を作ることが必要な時である。今2ナノメートルの幅の回路を作ろうとしているが、これまでの技術ではトンネル効果で電気的に通じてしまう。そこで新しい量子工学的、光工学的な半導体に移っていく。それは我が国が得意な分野であり、各メーカーが技術を持っている。だからこそ、今立て直しが必要である。与野党関係なく、日本の経済安全保障、半導体の安全保障体制をしっかり築いていきたい。エネルギー、半導体に加えて重要なのが食料である。自給率を今の37%から、いざというときのために50%に引き上げる。そのためにもっと米を食べてもらおうと官房長官にお願いした。我が国のエネルギー、食料、そして経済、さらには防衛のためには、我が国の科学技術、原子力対応さらには宇宙、こういったものをしっかり支えていく。昔科学技術庁という省庁があった。その中には、原子力、海洋、宇宙の三つを柱にしていた。もう一度皆さんと一緒にこの国を立て直していきたいと思っている。」と、エネルギー問題をはじめ、経済安全保障の重要性について語られました。
神奈川大学経済学部教授・東京大学経済学博士 一般社団法人メディア報道研究政策センター理事長 小山和伸様
神奈川大学経済学部教授・東京大学経済学博士で一般社団法人メディア報道研究政策センター理事長の小山和伸様は、「ユネスコの世界記憶遺産に、慰安婦は日本軍が作った性奴隷であったと登録されようとしている。とんでもないことだと私は思う。2015年10月10日に南京大虐殺が登録された。南京大虐殺は、反論しようと思えばいくらでもできるくらい矛盾に満ちている。しかし中国共産党の執拗な反日工作によって登録が実現してしまった。1ヶ月ちょっとの間に15万の遺体を埋葬したという東京裁判での証言が証拠になった。12月の南京は土が凍るため、当時はショベルカーもなく、ショベルとツルハシだけで15万体も埋めたことになる。屈強な男性でも4、000人くらい必要である。女子供に至るまで皆殺しにされたというのに、死体を埋めたその4、000人の屈強な支那人男性は、なぜ日本軍の標的にならなかったのか。これ一つをとっても全く出鱈目だと言える。しかし日本政府はするべき反論をせず、マスコミは中国の尻馬に乗っている。そして南京大虐殺は世界記憶遺産に登録された。同じことを今、慰安婦でやろうとしている。慰安婦が性奴隷だったということは、幾多の研究によって出鱈目だということがはっきりしており、数年前に発表されたラムザイヤー論文で決定的になった。明らかになったのは、戦地における、女衒と称する業者の募集に応募した売春行為だったということである。日本軍がその売春行為を戦地で容認したが、その背景には、戦地における性犯罪防止の効果があった。さらに、部隊に変な病気が入ってはいけないため、軍医による健康診断をやった。このことによって、いわゆる慰安婦本人、戦地売春婦たちの健康も保全されたのである。中には騙されて身売りをした哀れな例はあるが、それもあえて経済学的に言えば、貧しい階層の人たちに対して、雇用の道を与えたということでもある。小児労働も同じである。工業化の初めの頃のイギリスでは小児労働が盛んで、3歳の子供でも働いて残酷じゃないかと言われるが、残酷ではない。その子たちは、農業社会では生きられず、本来なら間引きされるはずだったのである。この慰安婦が、日本軍が作った性奴隷制度だとはとんでもないことである。アメリカが日本に来て何をやったか? 終戦後にアメリカ軍が進駐してきて、わずか1年の間に横浜だけで2、000件のレイプ事件が起きた。アメリカ人には綺麗事を言って日本を攻撃する資格はない。さらに慰安婦について決定的なのは、目撃証言がいまだにゼロだということである。20万人の女子が一般家庭から銃剣を突き付けて連れて行かれたと言っているが、それを見た人は誰もいない。こういうものが登録されたらとんでもないため、我々は戦う。ユネスコや外務省の動きには注意しないといけない。元々外務省がしっかりしていれば我々が出ていく必要はない。慰安婦の強制連行があったと言ったのは日本の官房長官である。我々が何を言おうが、政府が認めているじゃないかと言われたら何も言えない。だから、我々が立ち上がるしかない。南京大虐殺登録のときには我々は猛烈に批判した。その結果、ユネスコは反省して、世界記憶遺産登録の際には、当事国の話し合いの場を持ち、オープンにすることにルールを変えた。そのため、我々はこれから韓国側と対話をする。韓国は元挺対協が、今は正義連に名前が変わっているが、6カ国16団体に呼び掛けている。これと我々は今、4団体で戦うことになった。この話し合いの期間は無期限である。挺対協は1年間で1億円を集めるが、我々はそれだけ集められないので、長引いて体力勝負になったら負ける。だから、多くの国民の皆さんにそれを知っていただき、ご理解の上ご支援頂きたい。」と、いわゆる従軍慰安婦のユネスコ世界遺産登録の危機に警鐘を鳴らされました。
産経新聞上席論説委員で前論説委員長 乾正人様
産経新聞上席論説委員で前論説委員長の乾正人様は、「『安倍なきニッポンの未来 令和大乱を救う13人』という書籍を昨年の10月に出した。この本は、安倍さんが暗殺をされた後の日本の政界を担う人物にはどんな人がいるのかという問題意識から書いた。かろうじて13人を挙げたが、日本を愛して世界と伍していける政治家がいない。その理由として、政治家が小粒になったことがある。その理由は三つあると思う。一つは選挙制度の問題である。昔のような中選挙区制ではないので、選挙区から一人しか当選できない。そうすると、政治を目指す前途有為な人たちが諦めてしまい、世襲ばかりになってしまう。二つ目の理由は、戦争体験がないことである。戦後日本の政治が機能したのは中曽根時代までだったと思うが、それは実際に戦場に行った人が政権を握っていたからである。その時代までは、表向きは日米安保、でも時が来たら自分たちで何とかしようという裏の政策がかろうじてあった。佐藤内閣時代には、研究だけではあるが、核兵器を持ったらどうなるかを内調が研究している。しかし平成になると途端に、戦争を実体験した総理大臣も閣僚も官僚もいなくなり、やられ放題になった。だから平成の初頭にアメリカが日米構造協議で、日本の大きくなり過ぎた経済力を削ぐ工作をして、日本はそれにまんまと引っかかり、失われた20年、30年となった。そして三つ目の理由は、戦後教育の弊害であるが、政治家が日本の正しい歴史を学んでいないことである。ではどうしたらいいのか? 第一に、選挙制度を直すことであるが、これには時間がかかる。岸田内閣はボロボロだが、ポスト岸田を伺う人がやはりいない。岸田さんにとってはラッキーだが、国民にとってはラッキーではない。やはり、正しい歴史認識を子供のときから教育する機会を設ける必要がある。文科省はあちら側なのでなかなかうまくいかないので、民間の力でやっていく必要がある。さらに、空本先生のような前途有為な政治家を応援する体制を、皆さんに作って頂くしかない。与野党が一致してやらないと憲法改正はできないので、ぜひとも維新の皆さんにもご尽力いただきたいと。」と、現在の政治家の課題について論じられました。
在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥様は、空本様に、「ソーラーシェアリング発電とトリウム溶融炉についてご見解を頂きたい。」と質問され、空本様は、「ソーラーシェアリングについて、再生エネルギーはできる限りやった方がいいが、蓄電池技術には限界があり、再エネと石炭、原子力のベストミックスが一番良いと思う。また、トリウム炉も良いが、より高効率なのは、今のウラン燃料であり、トリウムはもう少し先の話ではないかと思う。」と答えられました。また乾様に、「日本には1、741の基礎自治体があり、首長は直接選ぶ大統領みたいなものなので、地域から変えていくという考えはいかがか?」と質問され、乾様は、「その通りだと思う。地方がしっかりしないと政治が上手くいかない。問題はどうやってそういう人材を送り出していくかである。今地方議員、首長のなり手がいなくて無投票が多い。皆さんの中からどんどん立候補して盛り立てて頂くことが民主主義である。」と答えられました。
山元学校学長の山元雅信様は、「政治家が小粒になったとずっと感じており、中選挙区制になれば変わると思うが、なぜ中選挙区制に向かう動きが出ないのか?」と質問され、乾様は、「そもそも小選挙区制にした理由の一つは、中選挙区制では金がかかるという表の理由もあるが、裏の理由は小選挙区制にして憲法改正できる体制にしようということだった。しかし、これに比例を入れて敗者復活を入れたため、当初の思惑とは全く異なるものになってしまった。だったら私は中選挙区制に戻してもよいと思うが、決めるのは国会議員で、今の選挙制度に適合している人が多いので、既得権益となって変えられない。」と答えられました。
一般社団法人シベリヤ抑留解明の会理事長 近藤建様
一般社団法人シベリヤ抑留解明の会理事長の近藤建様は、「ロシアは出鱈目を言いながら国際舞台で歴史戦をやっている。しかし、南京大虐殺も従軍慰安婦も含めて、日本は歴史戦をどことも戦おうとしなかった。このままおとなしくしていたならば、ますます日本はおかしくなってしまう。私は悔しい思いをしているが、どうすればよいか?」と質問され、小山様は、 「中村粲先生の『大東亜戦争への道』を今全英訳している。その意図は、世界に発信するためには英語で書かなければ駄目だからである。非常に立派な本で、日本がなぜあの大東亜戦争を戦わなければならなかったのかを明らかにしている。日本は内閣があれだけ代わって、明治時代の短い間に工業化を成し遂げて、民主制度が根付いた。あれだけ政権の交代があった日本と、ナチスの独裁政治とを同列に論ずることはできないと言っている良識ある歴史家、学者が欧米にもたくさんいる。だからこそ、この本を英語にして、世界の大使館、図書館、大学に寄贈して読んでもらう。」と答えられました。
日本戦略情報研究所長 林文隆様
日本戦略情報研究所長の林文隆様は、「2025年から東京都は太陽光発電を義務化しようとしている。太陽光発電は公害の塊である。現在日本で販売されている太陽光発電の95%は中国の新疆ウイグル自治区で作られている。現在、太陽光発電の建設費は1枚当たり大体1万円前後で、中国から購入する太陽光発電が大体3、000円から4、000円ぐらいである。これを廃棄するのに2万円かかり、現在の太陽光発電を廃棄するだけで、もう処理場は満杯で、これ以上作ったら困ると言っている。太陽光発電のパネルは非常に長持ちするが、直流を交流に変えるパワーコンディショナーが10年程度で壊れる。さらに直流であるため、パネル1枚が壊れると全体が動かなくなってしまう。壊れても発電はしてしまうので、うっかり触ると感電する。太陽光発電は発火をしても科学消火液をかけるしかなく、これを家庭でやるとその家は二度と住むことはできない。さらに最大の問題は、不法投棄されたときである。ところが、実は東京都のこの太陽光発電の問題は全く心配ない。なぜならば、小池都知事が言ったことは、全部チャラになるからである。小池都知事の公約であった満員電車ゼロ、介護職の離職ゼロ、電柱の地中化は全てやっていない。小池都知事の頭にあるのは国政に復帰することである。だから新知事が出てくれば、太陽光発電の義務化は、結局なかったことになって終わると思う。そこで、脱炭素の世界的動きによって、日本は太陽光発電や風力発電をやらなきゃいけないとなっているが、実は日本には膨大なエネルギー源がある。それは温泉と農業用水である。日本列島は火山列島である。そこで、温泉発電をすればよい。温泉発電はせいぜい15坪ぐらいあればできる。その次に膨大なエネルギー源が海に捨てられている。それは農業用水である。日本には年間2、990億トンという膨大な量の雨が降っている。ところがこの70%ぐらいが海に捨てられている。わずかに使っている35%の水のほとんどは農業用水である。しかし、米を収穫すると田んぼは空っぽで、水は全て海に捨てている。だからこの水を使って発電すれば良い。栃木県の話をすると、ここは五つの県に囲まれて、膨大な河川、小川がある。那須高原には、用水路、放水路が340㎞ある。しかも農業用水はものすごい水量であり、ここで発電できる。2014年現在で、日本全国約40カ所で農業用水発電をやっている。日本政府から1カ所につき8億5000万円までの補助金が出ている。これを使わない手はない。だから温泉発電と農業用水発電のエネルギー源を使って、日本の食料自給率を向上させるために、食料工場をどんどん作ればいい。食料工場の最大の問題は電気である。コストの52%が電気で、今日本全国650カ所のうち、採算に乗っているのは1割である。だから電気が安く手に入れば、食料工場をどんどん造ることができる。それから将来のエネルギー源だが、確かに大量に電気を作るには原子力発電等々が必要だと思うが、軽四輪やオートバイ程度のものだったら、日本の周囲に無尽蔵にあるマグネシウムによる発電を日本は世界で最初にやるべきである。」と、太陽光発電に代わる再生エネルギーについて語られました。
公益財団法人アパ日本再興財団理事・慶應義塾大学名誉教授 塩澤修平様
公益財団法人アパ日本再興財団理事・慶應義塾大学名誉教授の塩澤修平様は、「経済安全保障として食料やエネルギー、戦略物資の自給率を高めるのは必要であるが、いきなり自給自足というのは現実的ではない。当然貿易や外交が必要になってくるが、維新の会としてどのような基本的な考えがあるか。」と質問され、空本様は、「経済安保に関しては、特許戦略などにしっかり取り組んで技術を確立できるようにと考えている。食料については、50%の自給率があれば、万一のときでも、日本の国民を何とか持たせることができるので、そのくらいの食料自給率を維持するのが一番大事であると思っている。」と答えられました。
衆議院議員 一谷勇一郎様
衆議院議員の一谷勇一郎様は、「先ほど中選挙区制を復活させたらどうかというお話を頂いたが、残念ながら日本維新の会の中でも、国会議員の中でも、今はそういった話は全く出てきていない。それはやはり既得権益があるからである。だから、ここを変えることは少し難しいと思っている。我々の戦略としては、まず地域から国を変えていくことであり、そのために地方分権として、知事に権限と財源と人を戻すことに注力していきたい。」とコメントをされました。
スタンフォード大学フーバー研究所教授 西鋭夫様
スタンフォード大学フーバー研究所教授の西鋭夫様は、「福島はどうするのか? こんなに円安になって外国から食料や燃料を買うのは大きな損失である。なぜここまで円安を放っておいたのか。」と質問され、空本様は、「福島のあり方であるが、まずは除染をして綺麗にして、その中で廃棄物の処理を進めていく。処理水にはトリチウムが入っているが、普通の原子力発電所でもトリチウム水は流しており、希釈して海に流せば安全性は担保できる。円安の問題もあるが、この国土に一番合っているのは米作りであり、総理大臣自ら米をもっと食べようとPRを打って、もっと米を食べて頂くことによって、食料の問題はある程度解決できると思う。」と答えられました。さらに林様は、「お米を食べてくれと言う必要はない。九州や中四国では、米粉パンを学校給食に使っている。値段が高いので、米粉パンを普及させるために、小麦を輸入するときの補助金をこの米粉パンに回せばいい。さらに食糧自給率が37%というのは嘘である。食料自給率とは、穀物自給率を指すのが世界の標準である。だから欧米では、小麦が自給できるかどうかが問題になる。日本の場合、穀物自給率で計算してみると、大体68%から72%は確保している。」と補足されました。
最後に塾長は、「本日の月例会でも、非常に示唆に富んだお話を伺った。本当はどうなのかを知る機会として、この勝兵塾を開催しているが、本来ならできるだけ質問をして頂き、それに回答するような討論形式でできればと考えている。本日も大変良かったと思う。」と述べて会を締めくくりました。