第130回 勝兵塾月例会レポート
公開日:2022/4/27
塾長・最高顧問 元谷 外志雄
勝兵塾第130回月例会が、4月21日にアパグループ東京本社で開催されました。
冒頭のアパグループの元谷外志雄会長による塾長挨拶では、「今日は第130回目となる東京における勝兵塾月例会である。お配りした今月号のエッセイのタイトルは、『平和を守りたければ、戦争の準備をせよ』である。戦争の準備を怠ってはならず、平和を守りたければ、舐められない様に備えておかなければならない。平和だからと無防備でいれば、そこに付け込んでくる勢力に屈服させられ、従わざるを得なくなる。そういう現実を知らず、平和を唱えていれば平和が来ると信じている風潮があるが、十分な警戒心を持って、自分の国を自分で守るのが基本であり、その過程で軍事同盟が有効となるのであり、自らが戦わずして誰かが守ってくれるはずがないことを自覚しておく必要がある。勝兵塾で本当のことを知れば、皆そのような考えになるだろう。」と語りました。
衆議院議員 櫻田義孝様
衆議院議員の櫻田義孝様は、「ウクライナの問題について、21世紀の時代にこんなことがあるのだろうかと思った。あんな露骨にロシアがウクライナを侵略してくるなんて、本来であればあり得ないことである。このようなことが起こったことは残念であり、ロシアを徹底的に経済的に痛めつけ、安易な妥協をしてはならないと思う。自由民主党の党是でもあるが、戦後70年以上が経っているにもかかわらず、憲法改正ができないことを本当に残念に思う。私の持論は、『憲法改正なくして戦後は終わらない』であるが、今ほど憲法を改正して国防力を高める必要があると思ったことはない。ウクライナはロシアに侵略されているが、一体誰が助けてくれるのかと言えば、誰もいない。やはり軍事同盟を持たない結果があの形である。私は日米安全保障条約の大切さを日本人は肝に銘じるべきでないかと思う。安倍元首相などは、防衛費に世界標準のGDP比2%を充てようと言っているが、私も今こそ日本は国防にもっと力を入れるべきだと思う。ヨーロッパは隣同士が自由主義の国なので、国を守りやすいと思うが、日本の周囲の国々を見れば、唯一の民主主義国家が韓国であることを考えると、国防費を増強すべきであると思う。台湾有事は日本有事であり、これに対処するためには、日本は周囲の自由主義を信じる人々との連帯が必要である。皆さんと共に、憲法改正に力を入れて取り組んでいきたい。私は元々大工職人で、高校卒業後、昼は大工をやり、夜は明治大学の夜間で経済を勉強した。25歳の時に独立して会社を立ち上げ、30歳で青年会議所に入り、33歳の時に柏青年会議所の理事長になった。公職に就くようなったことで、社会的な役割を果たしていきたいと思うようになり、36歳の時に市議会議員になった。市議会議員を7年間やった後は県会議員を経て、第一回目の小選挙区制度下での選挙で衆議院議員になった。これからも日本の安全保障に取り組んでいきたい。」と、日本の国防力強化の必要性を訴えられました。
新しい歴史教科書をつくる会副会長 藤岡信勝様
新しい歴史教科書をつくる会副会長の藤岡信勝様は、「『新聞が伝えた通州事件』という書籍を仲間と共に出版した。この中から、通州事件はなぜ知られなかったのかを話したい。通州事件は、盧溝橋事件の三週間後に北京の東、通州という城壁都市で起こった。保安隊という通州の親日政権の警察組織の隊員が反乱を起こし、無辜の日本人居留民二二三人を惨殺した。こういう事件を日本人は戦後ほとんど忘れてしまった。どうしてそうなったのか。この事件については、一九五〇年に森島守人という外交官が岩波新書から書籍を出版した。彼は当時北平の日本大使館の参事官であり、通州事件を処理する立場にあったが、『中国部隊(注‥国民党軍)を掃討するために出動したわが飛行部隊が、誤って一弾を冀東防共自治政府麾下の、すなわちわが方に属していた保安隊の上に落とすと、保安隊では自分たちを攻撃したものと早合点して、さきんじて邦人を惨殺したのが真相で、巷間の噂とは異なり殷汝耕には全然責任はなく、一にわが陸軍の責任に帰すべきものであった。』と書いている。保安隊には、日本が武器を供与し軍事訓練を施しており、日本の居留民を保護する役目を担っていた。このたった一つの証言に基づき、秦郁彦という歴史学者が、一九六一年に『日中戦争史』という本の中で、『日本軍の攻撃と誤解した保安隊が、日本軍守備隊と居留民を襲って惨殺したもので、保安隊側には責任がなかった』『このように通州事件は、郎坊・広安門両事件とはまったく性質を異にするものであったにもかかわらず、真相を知らなかった日本国民の中国膺懲熱を煽る材料として十分に利用された』と書いた。この説が三十年間に亘って、日本の戦後歴史学の通説になった。しかし、この説にはおかしな点がたくさんあるが、四つの観点から述べたい。第一に、日本人への殺意を煽る工作が、通州事件のはるか前から行われていたことである。第二に、同時多発テロだったことであり、通州だけでなく、天津はじめ少なくとも五カ所で一斉に同じことが起こった。天津ではたまたま鎮圧されたが、逮捕者からの自白で、邦人大量虐殺の計画があったことがわかった。第三に、通州‐天津間の道を六十カ所切断して、連絡をできなくしていたことである。第四に、保安隊が事前に日本人の家屋を虱潰しに調査し、戸籍調査と称して日本人の家族構成を調べていたことである。こうした点から、誤爆説は全くおかしいと言える。さらに、首謀者の手記が発表されてこの問題に決着がついた。一九八二年に保安隊第一総隊隊長の張慶余の手記が公表された。この手記によれば、蒋介石政権が河北省政府の名義で五つの特殊警察総隊を設立させ、冀東地域の守備に就かせ、殷汝耕が冀東防共自治政権を設立すると、河北保安隊は冀東保安隊に改称されたが、内部人事は変わらなかった。つまり、蒋介石の作った秘密組織がそのまま親日政権の保安隊に移行したのである。張慶余らは宋哲元から資金提供を受け、宋哲元は、盧溝橋事件が起こると、戦争が始まったら通州で反乱を起こすよう指示し、張慶余らの総隊を戦闘序列に編入した。張慶余らは事件の前日に細木繁特務機関長と二十九軍との戦いの作戦を打ち合わせたが、その際に、張慶余から保安隊の兵力を一カ所に集めたらどうかと進言し、細木機関長は同意した。さらに、中国共産党は劉少奇を北方局書記に任命し、保安隊の中にも共産党員が侵入して共産党が下支えをして国民党の指揮下に入った部隊が反乱を起こしたのである。このことを中国側が自慢話として公表した。このほかにも通州事件にはおかしな説があり、例えば『反日プロパガンダに利用された』というものがあるが、通州事件で日本人に報復された中国人は皆無であった。戦後の歴史家は中国共産党の歴史観を近代史の原則として語ってきたので、通州事件を隠したいのはよくわかるが、大本営報道部長の松村秀逸は、通州事件の報が天津に伝わると、幕僚の首脳者から『新聞に出ないようにしてくれ』との相談を受け、いざ発表することになると『保安隊とはせず中国人の部隊としてくれ』と注文されたと書いている。なぜなら軍に責任問題が生じるからである。このように、日本軍が隠蔽しようとすらしていたのである。通州事件については間違った議論がほとんどであり、またほとんど知られていない。」と、通州事件に関する誤った議論や知られていない理由について解説されました。
大阪市立大学名誉教授・経済学博士 山下英次様
大阪市立大学名誉教授・経済学博士の山下英次様は、「ウクライナ戦争の日本への重要な教訓について話したい。三つの重要な教訓があり、一つ目は中国への警戒をさらに強めるべし、二つ目は我が国の自主防衛能力の飛躍的な増強が急務、三つ目は新冷戦における米欧の外交政策の失敗を許すな、である。ロシアによる侵略の背景に米英の外交政策の失敗がある。ソ連崩壊時に核兵器を持っていた国がロシア以外に三つあり、ウクライナとカザフスタン、ベラルーシであった。ウクライナには当時1、240発の核弾頭があり、世界第三位の核保有数であった。それをロシアに返還させようとアメリカも躍起になり、一九九四年十二月に米英ロは『ブダペスト覚書』を交わした。ウクライナは核を手放し、NPT(核拡散防止条約)体制に非核保有国として参加することを条件に、三カ国がウクライナに対して国防の保証を提供するという内容だった。しかし、ロシアはこれに違反して軍事侵攻をしたが、アメリカやイギリスにも道義的責任はあるのではないかと思う。さらに、中国とフランスも別のレターを出して、ウクライナに対して国防の保証をしていた。国際安全保障上の大きな教訓として、現行のNPT体制は機能しないということがある。公認の核保有国五カ国と非核保有国を差別的に扱う体制ではうまくいかない。NPTに入らず核を保有した者勝ちになる。さらに、『核の傘』というものは存在しない。このことは、一九六一年五月のケネディ=ド・ゴール会談ですでに明らかになっている。抑止力は核保有国同士では働くが、第三国をカバーすることはあり得ない。NATOの行き過ぎた東方拡大が問題だった。東西冷戦終了後、東西ドイツ再統一が問題になった。ソ連に平和裏に認めさせるために、二(東西ドイツ)+四(米ソ英仏)の外相会議が開催された。ソ連は当初統一ドイツがNATOに加盟することにすら反対していたが、統一後のドイツの軍事力をそれまでより減らすことで妥協した。そういう状況であったにもかかわらず、NATOは東方に拡大し、合計十四カ国が加盟して、現在三十カ国になり、人口規模では合計九億人超の一大勢力になっている。一九九〇年当時の米国国務長官のジェームズ・ベイカーはゴルバチョフに対して『NATOは一インチたりとも東方に拡大せず』と約束した。外交文書にはなっていないが、ベイカー以外にも多くの西側の要人が同じことを言っていた。外交文書になっていないとしても道義的責任はあるのではないか。東方拡大に対して、ジョージ・ケナンは『NATOの東方拡大は致命的な失敗になる』と警鐘を鳴らしていた。多くの専門家がNATOの東方拡大に批判的であったが、東方拡大を推進したのが、ブレジンスキーであり、米国務省とCIAである。EUもNATOと平仄を合わせて東方拡大をした。特に二〇〇四年のビッグバン的な拡大が問題である。当時の米国大統領はブッシュ・ジュニアだった。二〇〇四年三月にNATOが七カ国増加し、同年五月にEUが十カ国増加した。当時のシュレーダー独首相と欧州委員会拡大担当委員ギュンター・フェアホイゲンが推進したが、ドイツが拡大に熱心だったのは、東方に厚い緩衝地帯を求めたからである。東方拡大はEUにとって一種の『弾除け』であったが、ロシアから見れば、従来あった自分の『弾除け』を外された格好になった。アメリカやヨーロッパは非常によく間違える。東西冷戦の敗者はロシアであるが、そこから全てを奪い獲るようなことをしてしまったことが問題である。第一次世界大戦後のパリ講和条約も同じだった。ドイツに過大な賠償金を課したことで、ナチスドイツの台頭を招き、第二次世界大戦の原因の一つになった。これと同じことをやったのではないかと思う。敗者を追い詰め過ぎてはいけないが、欧米人はそうしてしまう。日本としては、自前の防衛力を飛躍的に増強させる必要がある。ドイツは左派の政権であるにもかかわらず、ウクライナ戦争が始まると防衛費を倍増させることを決めた。一方、日本の国会はどうなっているか? 日本は真の独立国にならないと話にならない。」と、ウクライナ戦争におけるアメリカの道義的責任を指摘されました。
元谷一志アパグループ社長兼CEO
元谷一志アパグループ社長兼CEOは、「三月十五日に内示を受け、四月一日にCEOに就任した。引き継ぎ含めて準備に東奔西走している。就任後、社内的には経営方針の骨子を発表したが、五月十日に新たな中期経営計画を発表し、六月二日に明治記念館で開催する就任記念パーティーではプレゼンをしたいと考えている。既に皆様にはパーティーのご案内をしているので是非ご参加いただきたい。」と挨拶をしました。
在米企業経営者 山中泉様
在米企業経営者の山中泉様は、「一九八〇年に渡米した。極真会館の三浦美幸師範を頼ってシカゴに行き、六年間、三浦師範の四つの道場で空手を指導した。同時に大学に通いながらジャーナリズムを専攻した。その後はニューヨークの野村證券で米国株のトレーダーをやりながら、夜は空手道場で指導をした。数千名のアメリカ人に空手を指導してきたが、大金持ちから生活保護の人達まで道場に来るので、様々な人々と交流してきた。アメリカ人の少なくとも四割、多ければ五割、六割、七割という統計もあるが、多くのアメリカ人が、バイデンが正当に選ばれた大統領ではないと思っている。そこで世界が一気に動き始めた。昨年からバイデン大統領の支持率は下がってきたが、昨日バイデンの支持率が21%という数字が出てきた。QUINNIPIACという大手の統計会社の数字であり、前回は33%から急落した。少し前のNBCでは、支持率が40%、不支持率が55%だった。40%という支持率は、NBCで過去最低である。リアル・クリア・ポリティックスの統計では、就任時は60%近い支持率で悪くなかったが、昨年8月のアフガン敗戦から支持率と不支持率が逆転した。アメリカ人の生活は良いように思っているかもしれないが、統計では64%のアメリカ人が生活は給料ギリギリと答えている。バイデン大統領が就任式で十七本の大統領令を出し、キーストン・パイプラインを停止した。アメリカ最大のパイプラインを止めたのである。これは民主党環境原理主義派に配慮した反エネルギー政策で、エネルギー価格の急上昇を生み、インフレを引き起こした。カリフォルニアのガソリン価格は1ガロン5・45ドルであるが、トランプ政権時の二〇一九年は2・25ドルだった。四月十三日に発表された三月の米国生産者物価指数が前年比11・2%上昇した。過去例のない歴史的な物価高が起こっている。生産者物価は必ず消費者物価に反映される。アフガン陥落がウクライナ侵攻の引き金を引いた。アフガニスタンは周囲を全て敵国で囲まれている世界で唯一の国である。アメリカは、約十兆円の兵器を置き去りにしてアフガニスタンを放り投げた。慌てて撤退したのだが、バイデン大統領は、撤退は成功だったと言った。八月三十一日に撤退することをバイデン大統領は決めたが、それは昨年九月十一日に9・11の二十周年記念のスピーチを高らかに行いたいと考えたからである。そのために相当の無理をした。なぜ今このロシア侵攻が起きたか? NATOとの連携が全くなく、アメリカ単独でアフガニスタンから撤退したため、他のNATO諸国が皆怒ったからである。これを見ていたのがプーチンであり、習近平、北朝鮮、イランである。そして昨年十二月にはプーチンは十数万人の兵力を出した。さらに、中国、サウジとUAEは石油決済をドルから変えていった。サウジとUAEはバイデンからの石油増産要請の電話を拒否し、サウジは中国と元で石油決済をすると発表した。インドはロシアとルピー・ルーブルで決済すると発表した。欧米がロシアを追い詰めたことで、ロシアと中国が接近し、インドもロシア側に追いやった。また、資源戦争の一面があり、グローバリストとグリーンエネルギー勢力が仕組んだ資源戦争の側面もある。プーチンは過去十数年、EU環境NGOを支援し、ロシア産天然ガスの輸入増加工作をしてきた。我々は経済制裁と言っているが、プーチンはそう考えていない。ロシアの中央銀行、ルーブルへの攻撃であり、宣戦布告だと言っている。日本は既に戦争に加担しているとプーチンは取っている。日本の政治家やメディアはそのことをわかっているのか。ロシア・ルーブルはドルベースで半分に下がったが、今は戻っている。」と、米国大統領の支持率低下の背景と、ロシアのウクライナ侵攻との関係について解説されました。
最後に塾長は、「本日も、講師の方々の素晴らしい話で、充実した月例会となった。毎月、東京のみならず金沢、大阪でもやっているので、ご参加いただきたい。」と会を締め括りました。