第126回 勝兵塾月例会レポート

公開日:2021/12/22


塾長・最高顧問 元谷 外志雄

勝兵塾第126回月例会が、12月16日にアパグループ東京本社で開催されました。
 冒頭のアパグループの元谷外志雄代表による塾長挨拶では、「今朝の日経新聞の一面に『中期防、初の5年30兆円』『日米協力強化の基盤に』という見出しで記事が掲載されていた。5年で30兆円ということは1年で6兆円だが、アメリカの80兆円、中国の20兆円という軍事費と比べれば、6兆円という金額は必ずしも十分ではない。経済力を背景に、これから中国の脅威が益々大きくなってくる。いずれは台湾海峡が危うくなり、次は沖縄、その次は日本本土へということになってくるだろう。そうさせないためにも、専守防衛ではなく、攻められない体制づくりが必要であり、相手に勝る軍事力を付けて、力の均衡に基づく平和を確立していかなければならない。憲法第九条や日米安保条約があるから大丈夫だと他人事のように思っている人も多いが、軍事力に差が付けば、戦争にならなくとも、軍事的圧力に屈服して相手の要求に応じざるを得なくなる。そうならないためにも、防衛予算をもっと増やしても良いのではないかと思う。さらに、日本独自の兵器を秘密裏に開発し、日本が最先端の軍事兵器を開発していると他国に思わせることで抑止力になる。日本のメディアは何でも暴き立てて明らかにしようとするが、敵を有利にするだけである。」と、我が国の安全保障のあり方について述べました。続いて、12月7日に明治記念館で開催された第四回アパ日本再興大賞・第十四回「真の近現代史観」懸賞論文受賞式並びに受賞記念パーティーの模様を視聴しました。


前衆議院議員・弁護士 原田義昭様

前衆議院議員・弁護士の原田義昭様は、「先日の選挙では不覚を取ったが、こうした境遇にあっても変わらず接して頂ける元谷代表や皆様に心から感謝する。元谷代表は実業家としての実績ももちろんすごいが、日本人の心に圧倒的な力を与える活動をされていることに、心から敬意を表したい。『二兎を追う者は一兎をも得ず』という格言があるが、元谷代表を見ていると、むしろ『二兎を追う者こそ二兎を得ることができる』と感じる。私は現在国際弁護士として活動している。選挙の直前に議員在職25年の表彰を受けたが、これまで安全保障や外交問題に一途に取り組んできた。鹿児島県に馬毛島という島がある。種子島の西約14キロのところにある離島であるが、私が動いて一昨年に国有化を果たした。最も喜んだのがアメリカの国防省で、二番目に喜んだのが防衛省だった。きっかけは、数年前に所有権を巡る民事上の問題で私に相談があったことだが、私が民事の問題を解決したことで、所有者の立石氏にアドバイスをして、防衛省が馬毛島を160億円で買った。現在防衛省はアメリカの国防省と航空基地として使うために調査中である。台湾有事はこれまでは机上の議論であったが、中国は本気であり、3、4年以内に台湾有事が必ず起こると思っておいた方がよい。先日安倍さんが言っていたように、台湾有事は日本有事であり、日米安保の有事である。政治家のOBとして、10万円の給付について非常に情けないと感じている。せっかく出すというのにこれだけ揉めて、これではもらう方も嬉しくないだろう。反省すべきことは、政治家のメンツや立場が国民にとって本当に良いのかということである。私は引き続き、現職以上の思いを持って政治家として国家社会のために頑張ろうと思う。」と、馬毛島買収の逸話と今後の抱負を述べられました。


議員立法研究所代表 宮﨑貞行様

議員立法研究所代表の宮﨑貞行様は、「岸田内閣が成立して注目すべき動きは、経済安全保障への取り組みを明確にしたことである。経済安全保障政策の5本柱は、①サプライチェーンの強靭化、②我が国の機微技術の防護強化、③経済制裁法の強化、④外国による干渉工作の排除法制、⑤事後検証から成る。このうち、④外国による干渉工作の排除法制について詳しく述べたい。週刊文春の今週号に、大物参議院議員の秘書が中国人女性だという記事が掲載されていた。中国の手段は巧妙であり、スパイ法制があったとしてもグレーゾーンは防ぐことはできない。アメリカの外国代理人登録法は、外国の代理として政治活動や宣伝活動を行い、あるいは官庁や議会に対して働きかけを行う者を『外国代理人』と位置付け、外国代理人は司法省に登録し、半年ごとに活動報告を行うことを義務付けている。したがって、アメリカ人の広報会社も外国の代理として広報を行う場合、登録しておかなければならない。我が国も早くこの法制を作らなければならない。そこでアメリカの外国代理人登録法を参考にして、特定国代理人登録法(案)を作成した。この法案では、『特定国』を『我が国の領土に関し所有権を主張若しくは占拠し、又は我が国の安全保障に対し武力の行使若しくは威嚇を加えている国』と定義し、『特定国主体』を『特定国の政府、政党、法人、団体又は国民』、『特定国代理人』を『特定国主体の指示若しくは教唆により、又はその幇助を得て、我が国の政府、政党、法人、団体又は国民に対し心理的影響を及ぼそうとする活動』と定義して、その後に具体的な工作活動を示している。そして、特定国代理人は都道府県公安委員会に登録し、その活動内容を毎年届けなければならないとしている。そして都道府県公安委員会は、これらの内容を国家公安委員会に通知し、国家公安委員会はこれらの内容を公表するとともに当該活動に関心を有する政府機関にもその内容を通知する。さらにみなし規定として、『特定国の国営の報道組織又は通信組織は、この法律において特定国代理人とみなす。』とする。評論活動をする人は多いが、特に国会議員の方々には、具体的な法案を作ってほしい。我々もそのお手伝いをしていきたいと思う。」と、外国による工作を牽制するための具体的な法案を提案されました。


衆議院議員 池畑浩太朗様

衆議院議員の池畑浩太朗様は、「私は日本維新の会所属で、一期目の衆議院議員である。元々は農業高校の教師をしていて、その後県議会議員をしてきた。現在は農林水産部会と農林水産省の委員会に所属している。今日憲法審査会が久し振りに開催されたが、これから自民党に対案をしっかり出していきたいと思う。また、私は農業の専門家であるので、食料の安全保障について取り組んでいきたい。」と挨拶をされました。


日本安全保障フォーラム会長 矢野義昭様

日本安全保障フォーラム会長の矢野義昭様は、「アメリカの政治学者ミアシャイマーが、『今日独自の核抑止力を持たない国は大国たりえない』と言ったが、これが世界の常識である。このことをよくわかっている世界の大国は、独自の核保有を巡って国益を懸けた熾烈な戦いをしてきた。その理論と歴史を踏まえて、日本も自らの核保有に真剣に取り組んでいかなければならないと痛感する。私は元陸上自衛官であるが、自衛隊では核の問題はタブーとなっており、語ることも研究することも一切やっていない。したがって、本日述べることはあくまで私の個人的な考えである。1980年代の末頃に北朝鮮が核開発をやっているらしいと聞き、私は北朝鮮の体制であればいずれ核を持ち、ミサイルに搭載して、日本にとって脅威になるだろうと考え、個人的に核の研究を始めた。核保有する目的は、一つ目は、抑止の為であり平和の為である。核と言えば広島、長崎の悲惨な被爆者の写真を見せられるが、そこで核は恐ろしいものだと思考停止してしまっている。それではそうした惨害を防ぐためにどうすればよいかという思考は一歩も進まない。真剣に平和を守ろうと考えているからこそ、核の問題を考えなければならない。サイバーや宇宙と言った新領域に注目されているが、核保有国は核戦力の増強に力を入れており、究極兵器としての核の地位は全く揺らいでいない。そのため、抑止のために核が必要となる。抑止の本質は恐怖であり、相手に恐怖を与えることではじめて抑止が働く。この現実から目を逸らしてはいけない。二つ目は、自立のためである。安全保障の根本、すなわち核の抑止力を他国に依存している国は、自立している国家とは言えない。現在の日本は、安全保障の根幹において、米国の核兵器に全面的に依存しており、実態において自立国家に脱皮することができない。三つ目は、鎮魂のためである。私は直接軍人の方から、被爆直後の広島に入って、自分の腕の中で『この敵は必ず打ってください。』と泣きながら亡くなった少年を看取ったという話を聞いた。こういう惨害を二度と繰り返してはならないのであれば、後世に生きる者の責任として、実効性のある行動をとらなければならない。アメリカの核の傘に全面依存していてよいのか。究極の国益がかかる段階では、核の傘を提供している国は、核戦争を避けてでも自国の安全を守ろうとする。一方、守ってもらう側は、核戦争のリスクを冒してでも守ってほしいと考える。そこで決定的に国益の対立があることは理論的に明確である。しかも、核戦力のバランスがこの10年間で劇的に変化した。アメリカから核攻撃を受けた場合、中国本土に着弾する前に中国がICBMを発射できる体制ができている。したがって、現在中国は、核兵器で4、000万人、5、000万人の被害をアメリカに瞬時に与えることができる。アメリカは、オバマ政権やバイデン政権で核への依存度を下げる方針を取り、70年代、80年代のシステムを寿命延長して改良しながら使うことを余儀なくされている。したがって米中の核戦力は、決してアメリカが優位とは言えない。昨年のアメリカでの報告書では、米中核戦争が起こった場合、勝者はないと言っている。アメリカ大統領は、東京のためにニューヨークを犠牲にすることはできない。だから日本は独自の核を考えなければならない。日本が独自の核を持たなければ、中国や北朝鮮から核で恫喝されたらそれに屈するしかない。屈すればどうなるかは、香港やウイグルを見ればよく分かる。先程、香港の次は台湾、その次は沖縄、さらにその次は日本本土、という話があったが、これから1世代の間に起こる可能性がある。日本には核保有するための技術も資金もある。最後の制約は、日本国民の決断であり、それを受けた政治家の決断にかかっている。他の国は、可能性があれば、国民の過半数が賛成してすぐやろうとするが、日本だけ例外的に、能力はあるのに国民が渋っていて、みすみす自らを危機に曝している。いずれ韓国が核を保有すれば、韓国も日本に対して核恫喝をしてくる可能性もある。日本が核保有すれば、アメリカは日本を守る必要はなくなる。その力は日本にはある。是非ともこの問題に対して国民には目覚めてほしい。」と、日本の核保有の必要性と可能性を訴えられました。


日本戦略情報研究所長 林文隆様

日本戦略情報研究所長の林文隆様は、「自由主義経済の原則は、万人が平等に働く場やビジネスに参加する権利を持ち、公正なルールの下で切磋琢磨することである。しかし、チャンスを与えられず、結婚もできず、大学を出てもフリーターで一生を過ごす若者が増えている。松下幸之助は、『現状維持は後退の始まり』だと言ったが、平成から令和まで30年余り、日本経済は全く成長していない。総務省の統計によると1997年をピークに日本の世帯収入は減っており、韓国にも抜かれている。収入が減れば消費も減る。なぜ収入が減り続けているのか? 理由は政治的な問題と経済的な問題がある。政治的な問題は、デフレ下で財政出動をせず、消費税を引き上げたことだ。経済面の問題は、国内市場は、普及率がほぼ100%で飽和状態であることだ。ケインズは経済の停滞は『需要の飽和』だと言った。グローバリズムによって企業が国内から世界各地へ投資をするようになり、どこで作っても同じだから価格競争が激化して賃金が停滞した。1990年以降のグローバル化により、大企業は生産拠点を海外に移転させ、国内の雇用は減った。トヨタの年間生産台数は1、000万台だが、このうち国内生産は300万台である。この30年間に金融政策ばかりやってきたが、全く成果が出なかった。今までのやり方が限界ならばやり方を変えれば良い。参考になる事例が二つある。まず、明治5年から明治28年までのビクトリア大不況である。23年間で物価が30%下がったが、南アフリカで金山が発見され、さらに製法が発達したことで、膨大な金貨が流通するようになり、さらにドイツとの戦艦建造競争が熾烈になって鉄の余剰が吸収され、卸物価が上昇してビクトリア大不況が終わった。この教訓は二つある。一つ目は通貨の大量発行であり、二つ目は有効需要の創出である。もう一つは第二次世界大戦後のアメリカで、国債残高はGDPの二倍だった。FRBは額面で国債を買い上げ、全米にハイウェイを造り、有効需要をつくった。その結果、アメリカは黄金の1960年代を迎えることができた。今日本に足りないのは投資である。日本政府は財政政策で大胆に投資をするべきである。そのために、組織力で対応する国家戦略を創案するセクションを創設すべきである。日本の政策シンクタンクは、かつては内務省だった。明治日本の国策は『富国強兵』だったが、21世紀の日本の国策は、『超高度科学立国』である。国家存亡の技術と見抜いたら、コストを度外視して取り組まなければならない。超高度科学技術立国を達成するためには、人財を育成し、財政を注力すればよい。そのためには早期高度教育が必要である。飛び級を認め天才を早期に育てればよい。現在日本には、総合科学技術・イノベーション会議の下部組織に専門部会があるが、その構成員はほとんどが事務員なので、ノーベル賞受賞者など各界の専門家のアドバイスを受けて、超高度科学技術プロジェクトの選定、資金配分をし、研究進捗や成果を厳しく監視すればよい。そして、超高度科学技術開発に国債を100兆円発行し、建設国債も100兆円発行して、合計200兆円を5年間で使う。金利負担や円の暴落を心配するかもしれないが、政府利払いのGDP比は0%であり、日本国債の外国人保有は5~10%である。日本企業は投資先がなく、金を持て余している。日本企業の余剰資金は欧米より多く、この資金を使えばよい。財務省はマスコミを動員して財政均衡論で政府を脅してきたが、これに対して政府統合理論を国民に丁寧に説明していき、国債を勇敢に増発して有効需要を創出する。電柱の地中化とプラスチック製の光ファイバーの整備、超大型飛行船によるネット基地局、介護ロボットなどへ公共投資をすべきである。これから日本が特許を押さえ、日本しか製造できない、国民が欲するモノやサービスを登場させれば、国際経済情勢に関係なく消費は必ず伸びる。」と、日本経済停滞の原因とその処方箋を示されました。


創藝社出版役員 相田勲様

映画「稲むらの火」製作者で創藝社出版役員の相田勲様は、「私は竹田恒泰さんのラジオ番組のプロデューサーをしていて、先日元谷代表にもご出演頂き、その前にはご子息にもご出演頂いた。その他にも保守系の言論人の方々に出演して頂いている。この番組は『たかじんのそこまで言って委員会』のラジオ版という位置付けで、5年くらいやっている。戦後一県一紙となった地方紙の左傾化が進み、その系列のラジオ局もその影響を受けていたが、現在地盤変化を起こしつつある。左系はジャーナリズム的なチェック機能しか期待されておらず、世の中の人々からはむしろ右寄りのメッセージが求められている。放送法で良く不偏不党と言われるが、これはドグマであり、共同幻想であると言っているラジオ局の社長もいる。つまり、選挙報道は別であるが、放送責任者がやると決めれば、やってできないことはない。そこでラジオでは保守的な話ができるようになってきた。また、茨城放送は朝日放送系列であったが、今はグロービスの堀義人さんが買収し、前回の『真の近現代史観』懸賞論文で最優秀藤誠志賞を受賞された河添恵子さんをコメンテーターとして起用したりして、これから期待できる。3・11をきっかけに日本の津波に世界的な関心が集まり、安政の時代の1854年11月5日に和歌山県全域を襲った大地震で、濱口梧陵が広川町を救った奇跡的なエピソードに基づき、国連は11月5日を世界津波防災の日と定めた。この日本を代表する社会活動家の濱口梧陵の偉業を伝えていくため、国土・経済レジリエンスの原作権をお借りして、映画を企画・制作し、世界に発信するために活動している。この映画は再来年には大手配給会社に配給することが内定している。大地震の際に、辺りは真っ暗でどちらが陸でどちらが海かわからない状況で津波が襲ってきたが、濱口梧陵は、丘の上にあった稲むらに火をつけて陸地の目印とすることで村民を救った。さらに濱口は、復興にも貢献した。地震で村人の仕事がなくなると、濱口は私財を投じて大堤防を建設して雇用を生み出した。その堤防が1946年に起こった地震による津波から市街地を守った。今なら災害が起こったときの情報伝達手段はSNSなどであるが、当時の最先端の情報伝達手段が狼煙であり稲むらだったと言え、濱口は防災に最新の情報伝達手段を活用したのである。世界は日本の防災に対する技術に大きく期待している。」と、濱口梧陵の功績と日本の防災技術に対する世界の注目について語られました。

コメンテーターのマックス・フォン・シュラー・小林様は、「核兵器に対する考え方には賛成だが、自衛隊の通常部隊は今後どのように拡大していけばよいと考えるか?」と質問され、矢野様は、「世界平均では人口の1%が最大動員数で、そのうち常備軍1に対して予備役2の割合である。日本もそれくらいの戦力があれば、国土防衛でかなりのことができる。もっと予備役を充実させ、さらに重要なことは頭脳や情報、知識の動員であり、国の総合的な力を発揮できるよう、非常時には首相がリーダーとなって官庁を横断して動かしていかなければならない。」と答えられました。


参議院議員 石井苗子様

参議院議員の石井苗子様は、「本日予算委員会に出席していた。補正予算が35兆9千億円であるが、これに計上している内容が、コロナ対策と新しい資本主義、国土強靭化とあるが、安全保障については一切出てきていない。歳入について、コロナで経済対策をしながら税収が6兆4、320億円の増収となっている。抑止力という話が全く出て来ない状況の中で、国会の中でどのように取り組んでいけばよいか?」と質問され、矢野様は、「被爆者の方々の無念を思い起こさせるのが良いと思う。あのような惨害を繰り返さないためにも抑止力をどうすべきか、国会の中で真剣に議論すべきだと主張していけばよいのではないか。総理が広島出身であれば、被爆者の声はよくわかっているはずだ。」と答えられました。さらに、二宮報徳連合代表の藤田裕行様は、「加瀬英明先生が、当時の米国の責任者に、『もし日本が核を持っていたら原爆を落としたか?』と質問したら、『なぜ答えのわかっている質問をするのか?』と言われたという。つまり、日本が核を持っていれば広島、長崎に原爆を落とされなかったのである。」と発言されました。

最後に塾長は、「本日も大変盛り上がった月例会となった。こうした議論の場はなかなかないので、意見をぶつけることで、本当はどうなのかを知る機会としていければ良いと思う。」と述べて、会を締め括りました。