第123回 勝兵塾月例会レポート

公開日:2021/09/28


塾長・最高顧問 元谷 外志雄

勝兵塾第123回月例会が、9月16日にアパグループ東京本社で開催されました。
冒頭のアパグループの元谷外志雄代表による塾長挨拶では、「勝兵塾を始めて10年が経ったが、発足式の挨拶の中で『勝兵塾から総理を出そう』と話した。高市早苗さんは最初の年から勝兵塾に入塾されていたが、彼女が総理を担う可能性が高まってきた。はじめはあまり注目されていなかったが、支持者が増えてきているようだ。私としては、勝兵塾から総理が出てほしいと期待している。本当のことを知れば皆保守になるというのが私の考えで、本当のことが報道されていない、教えられていないからおかしな考えの人が増えている。歴史上、日本の果たした役割は大変なものがあり、評価されるべきである。それを貶めるような教育やメディア報道が為されているが、私は正しい方向を示し、皆で議論しながら真実を知る運動をしている。」と、勝兵塾の意義を語りました。


エジプト・アラブ共和国大使館特命全権大使 アイマン・アリ・カーメル閣下

エジプト・アラブ共和国大使館特命全権大使のアイマン・アリ・カーメル閣下は、「はじめにこのような機会を与えて頂き感謝している。私は四年間、エジプトを代表して駐日大使を務めてきた。この集まりで、日本と近隣諸国との関係という重要なテーマについて議論されていることを素晴らしく思う。本日は、エジプトと日本の両国間の関係を強化していく上でも良い機会である。私は様々な重要行事に参加してきた。二〇一九年には横浜でアフリカのサミットが開催された。同年にはG20サミットが大阪で開催され、そこにも参加することができた。さらに私は、歴史的に重要な行事、すなわち天皇陛下の即位の場に立ち会うことができたことをとても光栄に思う。エジプトは日本とこれまで深い関係を築いてきた。両国関係の歴史は百五十年以上前に遡る。一八六二年に日本の侍の派遣団遣欧使節団である第二池田使節が、ヨーロッパに行く途中にエジプトに立ち寄っている。スフィンクスやピラミッドの前で侍たちが撮った写真は大変有名である。両国の本格的な関係は、一九二二年にエジプトの独立を日本が初めて承認した時に遡る。日本の大使館がカイロにできたのは一九五二年である。それ以来、両国関係が発展してきて、特に安倍内閣の下で大きな進展があった。二〇一五年に安倍総理がエジプトを訪問し、翌年にはエルシーシ大統領が来日した。その時から両国関係が急速に進展した。地球上で最古の文明の一つがエジプト文明で、七千年以上昔に遡る。近代的な技術が発達する何千年も前に、ピラミッドに代表されるような高度な文化的実績を残してきた。さらにエジプト文明は、他の文明にも影響を与えてきた。また、エジプトは政治的にも経済的にも周辺地域に対して大きな影響力を持っていた。二〇一一年以降、二つの大きな民衆蜂起があったが、それ以来、民主化に向けた政治のロードマップが確立し、現在は民主的に選ばれた大統領制を敷いている。現在の大統領は二〇一八年に選ばれ、民主的に選ばれた2代目の大統領である。その他にもIMFの支援で経済改革が行われており、高いGDP成長率を達成している。COVID‐19の状況下ではあるが、最も経済的に成長している。スエズ運河経済特区のような大規模プロジェクトにも着手している。また、現在カイロに代わる新しい首都を建設している。日本との二国間関係について、特に教育の分野で両国の関係が深まっている。日本で最初に海外に展開した公的な大学は、エジプト日本科学技術大学である。この大学は、早稲田、東京、東工大、広島大学など十四の日本の大学から支援を受けて、日本語を教えるだけではなく、日本の科学技術も教えている。またエジプト人だけではなく、アフリカや中東の学生にも教えている。また教育で大変重要なのが、日本が小学校で経験する掃除などの特活(特別活動)をエジプトの小学校に導入したことである。日本の協力でオペラハウスや平和橋をはじめ、多くのプロジェクトが進行しているが、特に重要なのが世界最大の大エジプト博物館のプロジェクトである。この博物館ではエジプト文明の全てを一カ所で展示することができる。このプロジェクトはJICAとJICEの共同支援を受けている。大エジプト博物館プロジェクトはエジプトのためだけではなく、人類のためにやっている。日本とエジプトとの間にある潜在的な協力の可能性は大きい。エジプトは偉大な歴史と文明を持っている。日本は賞賛すべき政治を行ってきており、中東の平和維持にも貢献し、エジプトの活動をも支えてくれている。エジプトでは、スエズ運河沿いの経済特区に製造業などの産業を呼び込んでいる。我々はアフリカ諸国と新しい自由貿易協定を結んでおり、エジプトに投資をすることで、日本の製品が自由にアフリカ市場にアクセスすることができる。スポーツの分野でも協力関係を持っている。エジプトは東京オリンピック・パラリンピックに参加して、四百人以上の選手団を送り込み、オリンピックでは六個、パラリンピックでは七個のメダルを獲得することができた。また、日本の武道をエジプトの若者に広めようとしている。最近日本の映画がカイロ映画祭で上映され、日本の監督が受賞した。エジプトは日本語を学ぶ学生が最も多い国の一つである。また、エジプトは中東やアフリカで日本語教育を十以上の大学で行っている唯一の国である。皆さんをできるだけ早くお迎えして、日本とエジプトの間でより強い関係が作られることを希望している。」と、日本とエジプトの関係や進行中のプロジェクトについて解説されました。


スリランカ民主社会主義共和国大使館特命全権大使 ウィシュラマール・サンジーヴ・グナセーカラ閣下

スリランカ民主社会主義共和国大使館特命全権大使のウィシュラマール・サンジーヴ・グナセーカラ閣下は、「この会にご招待頂いたことに感謝する。スリランカと日本は特別な友好関係がある。両国の関係に何百年もの歴史があり、上座部仏教を日本にもたらしたのもスリランカである。もうひとつの重要な出来事は、一九五一年のサンフランシスコ講和会議に財務大臣(のちの大統領)が出席して対日賠償請求権を放棄したことである。このように両国は特別でとても強い関係で結ばれている。最近の地政学的、戦略的な観点から両国の関係を話してみたい。スリランカは日本で十二番目に移住者が多い国である。小さな国としては非常に多くの人々が日本で生活している。人口二千四百万人の小さな国であるが、三万人のスリランカ人が日本にいる。そして年間約五万人の日本人がスリランカを訪れている。
今日はQUADと南シナ海とスリランカの戦略的な位置について話したい。日本とスリランカの関係は、互いの利便性だけではなく、相互に尊敬する関係の上に成り立っており、仏教を通じて共通の文化や価値観に基づいて成り立っている。さらに両国民には寛容さと慈悲の心がある。これらが二国間の強力で美しい関係の基礎にあると感じている。中国が経済的にも軍事的にも台頭してきて、北朝鮮は核兵器を持ち、ミサイル能力も高めている。さらに中国は南シナ海にある島々の領有権を主張している。これに対抗するための日本の本当の答えは何か? それはFOIPとQUADである。FOIPとは、『自由で開かれたインド太平洋』で、QUADは、日米豪印の4カ国による枠組みである。FOIPには3つの目的がある。1つ目は航行の自由の確保であり、2つ目は相互の連携性を高めること、3つ目は平和と安定への貢献である。世界地図を見るとスリランカはシーレーンの中心にあることがわかる。海上での交易の八〇%はスリランカを経由している。現在コンテナは一つの目的地ではなく複数の目的地に向かう。スリランカは中国寄りではないかと言われることがあるが、それは作り話に過ぎない。欧米は経済的な処方箋を押し付けてくるが、日本にはスリランカに直接関わってほしいと願っている。公共セクター、民間セクターに拘わらず、日本は直接投資でスリランカと関わることができる。実際にJICAやJBICが関わって、PPPモデル(公民連携)が行われている。さらに経済だけではなく、学術、教育面での協力を通じて関係を深めることができる。戦略的位置付けを見極め、単なるパートナーとしてではなく、直接関わっていくことが大切である。最新の調査結果では、日本はスリランカでは草の根レベルから最も人気のある国である。二〇一九年にスリランカは世界一の観光地としてニューヨークタイムズやCNNなどのメディアでも取り上げられた。素晴らしい浜辺があり、サファリもあり、エコツーリズムもでき、世界遺産をはじめ、様々な文化遺産もあり、アーユルヴェーダの世界の首都でもある。スリランカ人はおもてなしの心に満ちた友好的な国民である。」と日本とスリランカの関係について語られました。

塾長は、「勝兵塾が二〇一一年六月二日に発足し、高市さんは二〇一一年十一月十四日に入塾された。勝兵塾を創ったときに最初に私は『勝兵塾から総理を出す。』と話したが、いよいよその可能性のある高市さんが総裁候補として選挙に臨んでいる。私としては全面的に応援したい。彼女の真正保守の考え方は私と非常に近いものがある。是非皆さんも知り合いの、自民党総裁選の選挙権のある方々に高市さんへの投票を促して頂きたい。」と改めて自由民主党総裁選について言及しました。


スタンフォード大学フーヴァー研究所教授 西鋭夫様

スタンフォード大学フーヴァー研究所教授の西鋭夫様は、「日本人がエジプトやスリランカを訪れても安全か?」と質問され、エジプト大使のカーメル閣下は、「エジプトは大変安定した環境を保ってきた。さらに、二〇二〇年七月から三十万人の観光客がロシアやドイツ、アラブ首長国連邦などから来ているが、一人もコロナに感染せずに帰国することができた。治安状況については、EU、ロシア、アメリカがエジプトの観光地を訪れ、エジプトの全ての観光地は一〇〇%安全であると評価した。観光地はカメラによる監視システムで監視が強化されており、そこには日本企業の協力もある。したがって、エジプトの観光は大変安全である。」と答えられました。スリランカ大使のグナセーカラ閣下は、「かつてスリランカでは内戦が起こったが、内戦終結後の16年間に1度だけ爆破事件があったものの、安全を保ってきた。当時防衛次官だった現在の大統領が内戦を終結させた結果、今や世界で最も安全な国の一つとなった。二〇一九年には二百五十万人以上の海外からの訪問者を記録した。二〇二一年には海外からの観光客を受け入れ始めたが、ロシア、東ヨーロッパからが多く、どの国から来る観光客に対してもPCR検査を実施している。検査で陰性であればどこでも移動することができる。ホテルや観光地の八十%以上は規制をしっかり守っており安全である。十月末時点で国民の七十%がワクチン接種を終える計画であり、十二月までに完全に海外からの観光客に開放する。」と答えられました。


元文部科学大臣・衆議院議員 馳浩様

元文部科学大臣・衆議院議員の馳浩様は、「高市早苗さんの推薦人の馳浩です。」と挨拶された後、「エジプトで日本の教育制度を取り入れる目的をお聞きしたい。」と質問され、エジプト大使のカーメル閣下は、「エジプトでは日本の価値観を高く評価している。日本の小学校や中学校での教育制度は人格形成に重きを置いている。協調し合うことを学び、自分で物事を決め、自分自身の環境を整える。初等中等教育だけでこれだけの自己鍛錬ができる。エジプトでもそうなってほしいと考えている。子供達に言語や科学を教えるだけではなく、人格者を育てることが大事である。これまで日本の教育制度を海外に輸出することは、あまりなかっただろう。日本の教育制度を応用していくことで多くの国々が良い影響を受けることができる。日本のとても成功した教育制度が世界中に広まることを願っている。」と答えられました。さらに馳様は、「日本人はエジプトから何を学べば良いと思われるか?」と質問され、カーメル閣下は、「エジプトは古くからの歴史文化を持っており、それを日本と共有することができる。多くの日本人が古代エジプトを称賛していることは、とても嬉しい。日本人は目標を達成しようとする強い精神性を持っているが、エジプト人もまた大変な達成能力を持っている。ピラミッドや寺院なども奇跡的なものであるが、科学技術や数学、天文学、医学においても七千年前から卓越した成果を出していた。こうした点から、日本とエジプトがより交流を深め、共有できるものがあると考えている。」と答えられました。


大阪市立大学名誉教授・経済学博士 山下英次様

大阪市立大学名誉教授・経済学博士の山下英次様は、「日本は独立国ではなく、半独立国、半主権国家である。自前の憲法を持っていないし、国防軍もなく、れっきとした独立国とは言えない。私は、メディアが戦後GHQの洗脳に加担させられたことを告白しろと主張してきたが、そもそも日本は独立そのものを目指していないのではないかと感じている。政治家の誰も、日本は独立国でないから独立国を目指すとは言っていない。政治家は、日本は独立国であると言ってやせ我慢するのではなく、独立国ではないことを認めて独立を目指すべきだとちゃんと言うべきであり、そのために行動すべきである。保守の人達はこの考えに反対する人はいないが、行動を起こす人がいない。特に政治家には、日本の独立に向けてできることから行動すべきと申し上げたい。」と、日本の真の独立に向けた行動の必要性を訴えられました。


東京国際大学学長・慶應義塾大学名誉教授 塩澤修平様

東京国際大学学長・慶應義塾大学名誉教授の塩澤修平様は、「両大使に要望と質問がある。まず要望として、私が学長を務める東京国際大学にはすでに両国からの留学生がいるが、是非より多くの優秀な学生を送っていただきたい。次に質問が二つある。一つは大学を中心とした学術的な交流をどのような形で新たな交流が為されるか、その可能性について。もう一つは、日本からの直接投資を考えたときに、どのような分野を必要とされているか、あるいは双方にとってメリットがあるか、である。」と質問され、エジプト大使のカーメル閣下は、「学術的な交流は二国間の関係において非常に重要なことである。現在進行形のプロジェクトとして、教育パートナーシップがあり、多くの学生や職員が日本に来ている。また、科学技術分野では研究テーマを設定して、その成果を両国が共有している。情報工学の分野では、エジプト日本科学技術大学と東京工業大学の双方で学位を取得することができる。これはアフリカ、中東で初めての情報工学の学位となる。こうした学術分野での協力が継続的にできることは素晴らしいことである。こうした取り組みはエジプトでも公的に支援されている。また投資について、スエズ運河は世界の貿易の重要な通過点であるだけではなく、スエズ運河全体を経済自由特区にしてきた。そこで製造して輸出すれば免税になる。すでに日本企業も進出しており、一つの例としてサラヤがある。同社は大阪の会社で衛生用品などを製造している。五千万ドルを投資して四つの工場を建設している。その他にもインフラや電化製品、食品の安全性に対する投資も期待できる。」と答えられました。スリランカ大使のグナセーカラ閣下は「日本に住んでいるスリランカ人の数千人の学生のうち、三十%以上が奨学金プログラムに基づいて大学院レベルの教育を受けている。大学院で学んだ学生は帰国後、教師になっている。学部生の多くは私的な奨学金を受けて来ており、技術や語学の専門学校で学ぶ人達もいる。小さな国であることを考えると、すごい規模の交流が行われている。これから日本の高校生を受け入れたいと考えている。また投資については、スリランカはインド、パキスタンとそれぞれ自由貿易協定を結んでおり、もし日本企業がスリランカに工場を造れば、15億人のマーケットにアクセスできる。国内には多くの免税の自由貿易特区がある。スリランカは民主主義国家であり、中小企業に対しても門戸を開いている。南アジアの中で最も水道光熱費が安い。太陽光、風力、LNGガスが有望な投資分野であり、大成建設は空港の拡張工事をやっており、三菱が水質浄化プロジェクトをやっている。このようにPPP、すなわち公民連携が行われている。スリランカは二〇三〇年までに七〇%を再生可能エネルギーにしたいと考えている。日本の企業にとっても大きな投資機会である。」と答えられました。


参議院議員 石井苗子様

参議院議員の石井苗子様は、「維新の会に所属する参議院議員であるが、維新という名前であるが、思想は保守である。私はエジプトとスリランカの両方に訪れたことがある。日本では女性の社会的地位が変わってきたが、両国では若い女性は結婚するのか? さらに、女性の政治家の割合はどれくらいか?」と質問され、エジプト大使のカーメル閣下は、「エジプトにおける女性の地位向上運動には長い歴史があり、古くはクレオパトラなど、女王が君臨していた時代もあった。女性の権利が守られていたことはパピルスにも書かれている。一九四七年からエジプトの女性解放運動が起こり、女性の政治的権利が強化された。二〇一四年の新憲法では性の平等が明記されている。現在四百名中九十名の女性国会議員がいて、六十名の女性判事、九名の女性閣僚がいる。外交官の三五%が女性で、中東及びアフリカ諸国で最も高い割合である。かつては十六歳という若さで結婚する女性も少なくなかったが、現在は女性の多くが大学に進学し、高いキャリアを築き、独立性が強まったので結婚年齢は二十五歳から三十歳が多い。」と答えられました。スリランカ大使のグナセーカラ閣下は「スリランカでは世界で初めて女性の首相が誕生し、彼女は二回首相をやった。また大統領になった女性もいた。独立以後の七十三年間のうち、十八年間は女性が統治していたと言える。社会的な風土はインドと比べるとかなりリベラルである。女性の政治家は約二十%であり、四十%まで増やすことが約束されている。官僚は男女同数で、外交官は七十%が女性であり、大使レベルまで出世している。高いキャリアの女性のほとんどは結婚していて、共稼ぎである。結婚年齢はエジプトと同じように二十代後半で段々遅くなっている。」と答えられました。

最後に塾長は、「本日も大変盛り上がった月例会になった。勝兵塾も十年となり、『本当はどうなのかを知れば皆保守になる』という考えでやってきた。勝兵塾は、様々な講師の話を聴きながら、自分の頭で考えて真実を理解することを目的としている。勝兵塾を、ディベートを通じて真実を見付け出す会にしていきたい。」と述べて会を締め括りました。