私は日本で生まれ日本の小中高に通い、現在は都内の大学に通う在日外国人である。見た目は外国人だが、日本の教育を受けてきたこともあり心は日本人である。しかし普通の日本人と違うと思っていることは、外国人ということもあり外国の情報、特に自分の国(スリランカ)の情報はよく入るので、それらの情報も考慮に入れ日本における様々な問題を分析できると自負している。まだ20年しか生きてきてないが、これらの経験をもとに、今日日本を取り巻いている歴史問題、そしてこれから日本が国際社会の中であるべき姿を提言していきたいと思う。

まず歴史問題について述べておきたい。私は中学、高校ともに日本の学校に通っていたので当然のことのように日本の歴史教育を受けてきたが、そこで感じたことは、日本の歴史教育は自虐史観に満ち溢れており、またほとんどが特定の見方でしか論ぜられてないというところに違和感を覚えた。例えば韓国に対する併合化政策に関して、一般の教科書の記述、また現在の一般論としては、〈日本は韓国を植民地化し、そこでは多くの韓国人が強制労働に従事させられ、また罪のない婦女子を従軍慰安婦として徴用し多くの韓国人の自尊心を大きく傷つけてきた。そして日本はそれに対して誠実な謝罪と賠償を行わなければならないのにもかかわらず、現在に至っても誠実に行動しておらず未だに国際社会の批判を受けている。〉とする論調が多いように思われる。実際自分も中学の社会の授業ではこのようなニュアンスの事を教えられた。しかしこれをもって、このことが日本の歴史の事実であると結論付けていいのか?私はそうは思わない。では問題等を指摘しつつ、一つ一つ見てくことにしたいと思う。

最初に併合化政策について述べていきたい。私は当時を生きてきた人間ではなく当時の詳しい事実を知らないゆえ、簡単にまとめて言うならば、日本は韓国内の親日派の要請や当時の国際情勢等を考慮して韓国を支配下に置くことを決めたということである。その統治方式として併合を選択したわけだが、現在日本では植民地支配と併合支配が混同されているように思われる。そもそも植民地支配を受けた国は、大体が資源を奪われ、強制労働につかされる等、ほとんど不利益な側面しかない。アフリカ大陸の国々がいい例だろう。西洋の支配下にあったアフリカの国々は、大国の都合により勝手に国境線を引かれたり、資源を強奪させられたりと、そのような植民地支配が現在アフリカ大陸で起こっている貧困や内戦の大きな原因の一つにもなっている。一方日本の支配はというと、確かに精神的に韓国人たちの自尊心を傷つけたのかもしれないが、病院や道路などのインフラ整備、さらには教育レベルの向上といったことで韓国の国家レベルを日本並みに向上させようとした。このような支配政策にもかかわらず当時の韓国民の反発等によって併合政策自体は失敗に終わったわけだが、戦後、日本が戦前伝えた技術、教育のおかげで韓国は急速に発展しており、現在の韓国内の大企業の会長等の役職についている年齢の高い人間の出身大学に日本の大学が多いことからも分かることである。さらに台湾に至っては、戦後侵入してきた国民党の横暴な振る舞いを見て日本統治時代を評価する声も多数上がっている。このように日本の支配は、欧米の搾取的な植民地支配と違い建設的な支配体制であったことがみてとれる。したがって支配=植民地=悪という特定の型にはめて批判だけをするのでなく、上記のように好意的な側面も含め客観的な事実を伝えることが求められる。

ではこのような歴史的背景がある中で今後日本はどのような政策、特に軍事政策の方針をどうしていくのかという問題が出てくる。戦後日本においては、GHQの圧力によって再び侵略行為をしないという理念の下、憲法九条を基本とした戦力の不保持及び戦争の放棄を掲げるとともに、ODAをはじめとした貧困国への金銭支援等によって国際社会での地位を築いてきた。しかしこの方針のため今日さまざまな問題が出てきている。それらの問題のうちいくつかを取り上げてみようと思う。

まずは領土問題である。領土に関して、戦後、日本は敗戦国の立場であったので連合国の言い分に従って領土が決定されていった。その中でアメリカ、イギリス、ソ連、中国をはじめとした連合国によって日本列島を分割統治するという提案もなされていたようだが結果的にアジア諸国等の反対により廃案となった。これは日本の教育現場においてはあまり教えられてないことだが、これが実現していれば東西ドイツのような惨劇が日本でも起こっていたかもしれない。とにかくこのような過程を経て結局本州は実質アメリカの支配下に入り沖縄等の離島も長年アメリカによって統治されているわけだが、今でこそ友好、同盟関係にあるが戦後すぐのアメリカは敵国であり同盟関係も結んでいなかったということもあり日本の国益が害されていてもちゃんと対処しなかった。そのことが現在抱えている領土問題の大きな原因の一つとなっている。その領土問題の一つが竹島問題であるが、これは戦後韓国の大統領に就任した李承晩が突如として李承晩ラインなる海洋境界線を勝手に作り、武力によって日本の漁師や海上保安庁等に被害を与えつつ強奪していき、その状態を現在に至って継続しているということであるが、強奪された当時の日本は現在の自衛隊のような自衛組織を持っていなければ、米軍との安保条約も結ばれてなかったのでこのような事態はある程度予測できたことだろう。では、世界でも有数の国防力を持つ自衛隊を有している現在、どのような対応をしていくべきか。2012年現在、李明博が韓国大統領としてはじめて竹島に上陸する事件があったり、韓国軍が竹島周辺での軍事演習を計画していたりと強硬な姿勢を打ち出している。それに対して日本政府は通貨スワップの凍結を示唆したり、国際司法裁判所に提訴する意向を示したりしているものの、有効な手立てとはなってない。そもそも日本政府は竹島問題に対して、日韓関係に悪影響を与えないように両国に直接影響のある行動を避けてきたが、韓国政府は建造物を作ったり観光客を渡航させたりとまるで気を使うそぶりは見せない。それどころか大統領が上陸するといった挑発行為も行った。この韓国の一連の竹島に対する態度はもちろん許されるものではないが、これまでの日本政府の弱腰で中途半端な態度も韓国を調子づける一因となっている。確かに強硬に出て両国間で武力衝突が起きるという事態になることは周辺国の経済等に悪影響を及ぼすかもしれなく、時にはどちらかの国が一歩引くということも必要なのかもしれない。しかし常に国益が害される時に必ずしも一歩引く必要性はない。むしろ一歩前に出ることで相手に動揺をあたえることができるので、必要なことである。それが経済制裁なのか自衛隊を用いたものになるかは時と場合によって判断すべきだが、後者の場合国外からは必ず、日本が再び軍国主義の道を歩みだした、といった批判が展開される。日本の傾向としてはこういった他者の反応を気にして、それに配慮して行動することがしばしばあるが、こうした批判が特定の国からなされるという事は、国内問題から国民の目をそらす、あるいは日本がこれから行うことに対して危機感を抱いているという性質があるということが真相であると思う。これらの国々に対して特定の配慮をする必要はなく、特に竹島に関しては、瀬戸際外交ではないが、自衛隊を竹島に出すという姿勢を見せるだけで日本に比べ海軍、空軍力の劣る韓国政府は混乱するであろうし、また日韓両国に仲良くしてほしいアメリカが仲裁に乗り出す事態も想定される。このように戦後60年以上経った今、単に過去を反省するという時代はもう終わっており、各国が軍事力を後ろ盾に外交戦略を立てている今、日本も憲法改正などをはじめとした改革によって新たな外交戦略を立てていかなければならない。

そしてこれに関連して、今後日本はどのように国際社会に関与していくのかという課題がある。前に述べたように、日本は戦後急激な経済発展によりアメリカに次ぐ第二の経済大国となった。国の経済が発展していく中で国の税収も当然増えていくが、今まではそれらの資金を使ってODAといった形で海外に支援をしてきた。私の国スリランカでも、日本のODAを用いた橋や空港の建設がなされてきた。もちろん我が国の人間はそれに対して感謝をしているし、他の国々もそう思っているであろう。したがって少し前までアジアでの日本の影響力は絶大であった。しかし今日、日本にも増して世界で影響力を持つ国が現れた。中国である。それでは、どのような形で中国が各国に影響力を持つようになったか、スリランカを例にして見ていきたいと思う。

そもそもスリランカと日本は昔から関係が深く、サンフランシスコ講和会議において、スリランカは世界に先立って日本に対する賠償請求権の放棄を表明し、また前に述べた日本列島の分割統治にも反対した国である。そのようないきさつもあり、日本はスリランカに多額の援助をしてきており、それを用いて国の基礎を作る手伝いをしたおかげもあって、今日スリランカは目覚ましい経済発展を遂げている。したがって、その分スリランカに対する日本の影響力も大きかったわけだが、あることがきっかけで、その影響力が中国と逆転してしまった。その原因となったのは、スリランカの内戦終結への過程での両国の関与の仕方の相違にある。そこで、まずは内戦の概要を述べたいと思うが、詳しく述べれば非常に長くなるので、簡潔にまとめたいと思う。概要は、スリランカの北部地域の独立を求める少数派タミル人によって組織されたテログループと、多数派シンハラ人を中心とした中央政府との間で行われ、20世紀後半から始まり、2009年に終結した内戦である。この内戦が大きく動いたのが、この内戦を終結に導いた大統領の就任である。最終的に内戦を終結させた方法として、北部地域を軍隊によって制圧するという作戦を行ったわけだが、この直前に日中両国政府はそれぞれスリランカ政府と話し合い、それぞれ支援の約束をした。日本政府に関しては、支援によって直接的に内戦に関与する意図は持っていなかっただろうが、支援したタイミングが内戦終結に動き出したタイミングと重なったため、日本の支援は間接的には貢献したわけだが、その支援内容は100億円の支援であった。一方中国は、対インド包囲網を構築するためにスリランカに接近したかったわけだが、スリランカに接近したいと思っていた。そこで、当時のスリランカが、内線の影響で武器の減りが早かったのもあり、中国は武器の支援を行った。内戦で武器の減りが早かったのもあって、武器の支援を行った。結果、中国製の最新の武器を手に入れたスリランカ政府軍は一気に内戦を終結に導いた。そこからスリランカと中国の友好関係は一気に深まり、首都近郊の港湾建設への大規模投資、会議場やコンサートホールなどの建設も中国資本によって行われているものが多い。このように、その国のニーズにあった支援をすることが両国の関係の発展を促しやすいことがわかる。ただお金を渡すだけの国際貢献の時代はもう終わったのだ。そこで提案したいのが、近年中国との領土問題で劣勢に立たされているフィリピン、ベトナム等の国々に対する支援である。これらの国々はまだ発展途上国ということもあり、さまざまな技術、経験が不足している。それらの国々に対して、例えば合同軍事演習によってさまざまな事態における対処方法を指導したり、自衛隊等で使わなくなった航空機や艦船を供与したりすることによって、その国の技術力や経験値は上がっていき、同時にその国の政府の日本に対する印象は向上し、経済成長真っただ中にある両国での公共事業等で、日本企業が活躍しやすくなる一因となる。これは前に述べたスリランカと中国との関係で証明済みだ。

このように第二次世界大戦が終わって60年以上が経っている今、昔の伝統や文化等は、その国の財産でありそのまま残しておくべきだが、世界情勢は刻一刻と変わっており、その中でいつまでも固定観念に縛られては前に進むこともできない。さらに中国が少し暴走気味な今、多くのアジアの国々は、日本が政治、経済その他あらゆる場面でのアジア、ひいては世界でのリーダとなることを求めている。かつて大東亜共栄圏構想を掲げ、アジアの国々を欧米の植民地支配から解放した日本が目指した理想は、多くのアジアの国々が賛同していた。経済成長に関しては下降気味の日本だが、政治、科学技術等アジアをリードする分野はまだまだ多い。21世紀はアジアの時代と言われているが、その中で日本が果たすべき役割は、学校で例えるところの「先生」であって、多くのアジアの発展途上国である「生徒」に対して、困難な壁にぶつかった生徒がいれば、金すなわち「答え」をすぐに与えるのではなく、それに至るまでのプロセス、つまり技術を教えたり、何かに対する訓練や指導を、国家を挙げてするということである。これをすることにより相互の交流は深まるであろう。日本を含めたアジアのつながりが強くなれば、アジアの成長の流れに日本も乗ることができるかもしれない。このようなwin-winの関係がかつての大東亜共栄圏に通ずるものがあるのではないか。

過去に過ちを犯したのなら、それは不幸な歴史として認識すべきだ。再び起こさないような努力も必要であろう。しかし同時に未来に生かせる歴史もある。我々に求められているのは常に未来を見据える視点であり、これから起きるであろう困難や課題に対して過去にとらわれない発想をしていくことが必要である、これを私の日本人に対する提言としたい。